論文ID: 23-004
本研究の目的は、成人期の自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: ASD)者の被害妄想的観念に対する影響要因を検討することである。本調査には、ASD者50名と一般集団51名が参加し、被害妄想的観念に影響を与える要因として、心配、ネガティブなスキーマ、解離、回避行動、いじめ被害経験を想定した。その結果、仮説どおり、ASD者は一般集団よりも被害妄想的観念を有していた。さらに、ASD者と一般集団の被害妄想的観念に影響を与える要因は異なり、また、ASD者の被害妄想的観念の頻度には解離と他者へのネガティブなスキーマが、確信度には解離が、苦痛度には解離と心配が影響を与えていた。本研究の結果から、ASD者の被害妄想的観念に介入をする場合、一般集団と異なり、解離などの異常体験への介入がより効果的である可能性が示された。