抄録
高エネルギー陽電子を水,トルエン,ポリエチレンなど液体や高分子に打ち込むと,一部の陽電子は水素原子類似の束縛状態であるポジトロニウム(Ps)を形成する。Psは,質量が小さく,電荷を持たない中性粒子とみなせ,放射線化学の研究対象として興味深い。凝縮相でのPsの生成や反応を研究する学問分野を「ポジトロニウム化学」と呼んでいる。本稿では,筆者の行ってきたポジトロニウム化学に関する研究を紹介する。液相中のPsの化学反応及び高分子中のPs形成過程の特異性を説明した後,Psのユニークな特性を利用した高分子の分析について述べる。