人工呼吸
Online ISSN : 2436-3103
Print ISSN : 0910-9927
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COVID-19重症呼吸不全患者における膵障害の発生頻度に関する検討:後方視研究
小松 聖史矢田部 智昭栗山 直英中村 智之幸村 英文西田 修
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2022 年 39 巻 1 号 p. 58-62

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抄録

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の他臓器合併症の1つに、膵臓への直接的な臓器障害が疑われる急性膵炎の報告がある。今回、ICUに入室したCOVID-19患者における膵障害発生頻度および因子を検討するために後方視研究を実施した。2020年3月から2021年6月にICUに入室した30症例を対象とした。膵障害は、アミラーゼまたはリパーゼの正常上限値の3倍以上または、CT上膵臓に急性膵炎に伴う異常所見を認める場合とし、両者を満たしたものを急性膵炎と定義した。膵障害を22例(73%)で認め、このうち3例は急性膵炎を発症した。APACHE(acute physiology and chronic health evaluation)Ⅱスコア、入室時のP/F比に膵障害群と非膵障害群の両群間で有意差はなかった。SOFA(sequential organ failure assessment)、人工呼吸管理患者の割合、ステロイド使用患者の割合は膵障害群で有意に高かった(8[5,10]vs. 5[1,6],p=0.04;95 vs. 50%,p=0.01;100 vs. 50%,p=0.003)。腹臥位の実施、入室から腹臥位開始までの日数、および施行期間に両群で有意差はなかった。本研究から、集中治療を要するCOVID-19患者の73%で膵障害を有することが明らかになった。

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© 2022 一般社団法人 日本呼吸療法医学会
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