2003 年 13 巻 2 号 p. 315-319
低流量酸素吸入において,欧米では酸素を加湿していない.一方,わが国では多くの施設で流量に関係なく常に酸素を加湿している.そこで,入院患者を対象に酸素加湿の有無が自覚症状(鼻の乾燥感,鼻の痛み,鼻水の量,喉や口の渇き,頭痛,痰の硬さの6項目)に及ぼす影響を検討した.対象は臨床的に安定している呼吸器疾患患者10名,酸素流量は鼻カニュラで0.5~3 L/分,平均 1.8±0.3 (SE) L/分であった.酸素加湿の有無が患者にわからないようにした加湿装置を作製し,1週間を加湿ありと加湿なしの期間に分け,その間の自覚症状を比較した.酸素加湿ありとなしの期間,病室の温度と湿度に差はなく,また,6項目の自覚症状で有意差を認めなかった.以上より,低流量酸素吸入(2 ないし 3 L/分以下)において,鼻の悪い人や自覚症状の強い患者を除いて,あえて酸素を加湿する根拠はない.