2018 年 27 巻 3 号 p. 259-264
緩和ケアの対象が多様化していく中で,緩和ケアは単にがんの苦痛をとる医療やケアの一領域ではなく,あらゆる人と場所に届けられる基本的ケアへと変化してきた.近年呼吸器領域においても,COPDなどの非悪性呼吸器疾患への緩和ケアは呼吸器学においても不可欠な部分であると認識され始めている.
非悪性呼吸器疾患の緩和ケアの特徴は,疾患の治療と緩和ケアが対立しないことであり,薬剤や包括的呼吸リハビリテーションなどの治療的手技は,終末期の緩和ケアにおいても重要な要素である.
最大の苦痛である呼吸困難に対しては,標準的な治療とコンディショニングを中心とした包括的呼吸リハビリテーションの要素を可能なかぎり継続しながら,モルヒネなどの緩和ケア的な治療とケアを加えていくというのが基本的考え方である.
また,近年早期からの緩和ケアの重要性が認識されており,呼吸器疾患においても慢性期からAdvanced care planning(ACP)を推進していくことが重要である.