日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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原著
慢性呼吸器疾患看護認定看護師の認知度と活動課題
三重県のアンケート調査による現状
澤村 千佳子畑地 治田口 修
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2019 年 28 巻 1 号 p. 135-139

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要旨

認定看護師は,2017年8月に18,728人が認定されている.慢性呼吸器疾患看護認定看護師(以下CNCR)は,20番目に認定された専門分野であり2018年2月現在271名が活躍している.CNCRの役割は慢性呼吸器疾患を抱える患者とその家族に,呼吸機能の評価や呼吸管理を行うと共に,病状の悪化予防,社会復帰に向けたリハビリテーション等の支援をする事である.今回,病院に勤務するCNCRが在宅医療・福祉分野との連携や拡大に向けて課題を見出す為に,三重県医師会に所属する医師を対象にアンケート調査を行った.調査内容は,CN制度の認知,CNCRの認知と期待する役割である.三重県におけるCN制度の認知度は40%,CNCRの認知度は6%,期待する役割は予防活動(29%),薬物療法の指導(24%),日常生活動作の指導(20%),酸素療法(19%),呼吸リハビリの実施(18%),アクションプラン(15%),疾患指導(14%),喘息管理(11%),精神的な介入(9%),コメディカルへの指導(8%),栄養管理(6%),災害時の対処(4%)であった.

緒言

認定看護師制度は,日本看護協会が特定の看護分野において,熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより,看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としている.認定看護師には3つの役割「実践・指導・相談」があり,専門性を発揮しながら患者や家族に,より良い看護が提供できるよう看護の質向上に努めなければならない.慢性呼吸器疾患看護認定看護師(以下CNCR)は,2012年より日本看護協会が20番目に認定した認定看護師分野(以下CN分野)である.CNCRの役割には慢性呼吸器疾患を抱える患者とその家族に対し,呼吸機能の評価や呼吸管理を行うとともに病状の悪化予防,社会復帰に向けた呼吸リハビリテーションなどの支援を行う事である1.CNCRの登録者数は,2018年2月現在271名であるが,うち三重県においては1名のみであり2,今後の対応策が求められている.そこで今回,病院に勤務するCNCRが在宅医療・福祉分野との連携や拡大に向けての課題3,4,5,6を見出すために,三重県医師会に所属する医師を対象にCN制度の認知とCNCRの認知,CNCRに期待する役割についてアンケート調査を行った.

対象と方法

1. 研究目的

病院に勤務するCNCRが,在宅医療・福祉分野との連携や拡大に向けての課題を見出す.

2. 調査対象

2013年5月に三重県医師会に登録している医師2707名である.

3. 調査期間

2014年9月23日~同年10月6日.

4. 調査方法

研究者が独自で作成した質問用紙を使用した.調査項目は,医師の属性(専門領域・年代),CN制度の認知,認知しているCN分野,CNCRに期待する役割の項目として①薬物療法の指導,②酸素療法,③疾患指導,④日常生活動作の指導,⑤アクションプラン,⑥栄養管理,⑦予防活動,⑧喘息管理,⑨呼吸リハビリの実施,⑩精神的な介入,⑪災害時の対処,⑫コメディカルへの指導で,選択回答と更に自由記載を設けた.

5. 倫理的配慮について

三重県医師会と所属施設の臨床研究倫理審査委員会の承認を受け,文書にて研究の趣旨や参加は自由意思であること,質問用紙は無記名とし得られたデータは統計的に処理を行い個人が特定されないこと,研究以外の目的で利用しないこと,研究結果は学会などで公表することを説明し質問用紙の回収をもって研究の同意が得られることを記載した.また,本調査に協力を頂けない場合でも不利益を被ることはない事を明記した.

6. 分析方法

医師の属性(専門領域・年代),CN制度の認知の有無,認知しているCN分野,CNCRに期待する項目については単純集計を行った.自由記載では,解釈の隔たりを避けるため研究者にて内容の統一化を行った.

結果

配布数2,707名,回収数1,217名(回収率45%),有効回答数1,217名(有効回答率100%)であった(図1).対象者の年齢は20~29歳11名(1%),30~39歳85名(7%),40~49歳220名(18%),50~59歳376名(31%),60~69歳317名(26%),70歳以上207名(17%),無回答1名(0%)であり平均年齢56.98±4歳であった(図2).

図1

三重県医師会員に対するアンケート調査の回収結果.

図2

医師の年代別によりCN制度の認知度に大きな差がみられた.

「CN制度を認知している」は489名(40%),「CN制度を認知していない」は711名(59%)無回答17名(1%)であった(図3).

図3

認定看護師の認知度は40% であった.

認知している医師の専門領域は「一般内科医」21名(28%),「外科医」16名(21%),「小児科医」9名(12%),「整形外科医」5名(7%),「産婦人科医」4名(6%),「皮膚科医」3名(4%),「麻酔科医」3名(4%),「泌尿器科医」2名(3%),放射線科医」1名(1%),「精神科医」1名(1%),「耳鼻咽喉科医」1名(1%),眼科医」0名(0%),「リウマチ科医」0名(0%),「その他」2名(3%),無回答7名(9%)であった(図4).

図4

医師の専門領域により認定看護師の認知度の程度に大きな差がみられた.

認知しているCN分野では複数回答の結果,「緩和ケアCN」319名(26%),「感染管理CN」243名(20%),「皮膚排泄ケアCN」242名(20%),「がん化学療法看護CN」242名(20%),「救急看護CN」224名(18%),「糖尿病看護CN」208名(17%),「がん性疼痛看護CN」189名(16%),「訪問看護CN」170名(14%),「透析看護CN」125名(10%),「集中ケアCN」100名(8%),「手術看護CN」99名(8%),「摂食嚥下障害看護CN」98名(8%),「脳卒中リハビリテーション看護CN」76名(6%),「認知症看護CN」75名(6%),「慢性呼吸器疾患看護CN」75名(6%),「新生児集中ケアCN」63名(5%),「乳がん看護CN」57名(5%),「小児救急看護CN」46名(4%),「慢性心不全看護CN」41名(3%),「がん放射線療法看護CN」36名(3%),「不妊症看護CN」35名(3%)であった(図5).

図5

認定看護師の21分野の認知度は緩和ケアを最高に低下し,慢性呼吸器疾患看護は低かった.

CNCRに期待する役割では複数回答の結果,「予防活動」352名(29%),「薬物療法の指導」286名(24%),「日常生活動作の指導」245名(20%),「酸素療法」227名(19%),「呼吸リハビリの実施」224名(18%),「アクションプラン」179名(15%),「疾患指導」174名(14%),「喘息管理」133名(11%),「精神的な介入」105名(9%),コメディカルへの指導」97名(8%),「栄養管理」76名(6%),「災害時の対処」47名(4%),無回答は5名(0%)であった(図6).

図6

慢性呼吸器疾患看護認定看護師に期待する活動項目では予防活動が高く,薬物療法,日常生活動作と続いた.

自由記載では,「呼吸器センターの活動が地区に広まり,連携が強くなることを望む」「病院と地域連携を望む」「CNCRの訪問看護を希望する」「在宅ケアを担うスタッフや患者指導を率先して欲しい」「end stageを在宅で過ごす患者や家族の介入を希望する」「医師と患者の橋渡しをして欲しい」「禁煙活動に取り組むべき」「重症度判定が確実に行えて,トリアージができる事が必須と考える」「24時間対応の病院には認定看護師を置くべき」「CN分野に関係なくCNのコンセプトが社会に定着していないと感じる」という意見が記載された.

考察

1. CN制度とCNCRの認知について

CN制度は1995年から日本看護協会により発足され,今年で23年目である.看護師の立場ではCN制度の事は認知されていると考えていたが,三重県の医師からみた認知度は40%であることがわかった.しかし,日本全国の医師におけるCN制度の認知度を調べた文献はないため,三重県の現状を比較検討する事はできなかった.更に年代別でみると20歳代と30歳代の医師による認知度は10%未満であり,これはCN制度の歴史が約20年である事と関連しているのかもしれない.また,自由記載に「CN制度のコンセプトが社会に広まっていないと感じる」と記載された通りに,CNの活動や活用方法を分からないと感じている医師が多い事も要因の一つであると考えられる.

また,CNCRの認知度は6%であり殆ど知られていないことがわかった.これは21分野中20番目に認定された看護専門分野であること,三重県には1名しかいないこと,地域病院へ広報活動が不足していること,CNCR分野が2010年からであることが認知度に影響していると考えられる.しかし6%の医師は,一般内科医だけではなくほぼ全領域の専門科の医師が含まれていた.そのため,CNCRの認知を上げる必要があり自施設だけの活動にとどまらずに,院外研修を行う事も重要な役割であると考える.

2. CNCRに期待する活動項目について

CNCRの役割に「予防活動」への期待が一番多く,超高齢社会を目前にして疾患を持っていても在宅での安定した療養生活を送る事の重要性を期待した内容であると考える.次いで「薬物療法の指導」,「日常生活動作の指導」,「酸素療法」,「呼吸リハビリの実施」であった.これは医師が診療時間内に吸入指導や在宅酸素の使用方法や注意点などを確認する事や,患者の日常生活管理に沿った指導を行うことは困難であり,医師の治療方針に基づいた看護の提供と,患者の生活に直面した関りの必要性があると考える.「アクションプラン」,「疾患指導」,「喘息管理」,「精神的な介入」は,同様に医師が診療時に行う患者への情報提供にも時間的な制約があるため十分に行われていないことが考えられるが,患者が在宅にて安定した生活が得られること,また,増悪による入院回数を減らすことなどを目的としたCNCRによる患者教育が必要と考えられた.「コメディカルへの指導」については医師から見た必要性は少なかったが,在宅療養をしている患者へ作業・理学療法士,臨床工学士らと共に同行訪問などを行い医療チームの質を向上するために,在宅と地域への活動を拡大していくことは重要であると考えているためコメディカルへの指導は必要である.「栄養管理」については,予防活動や薬物療法などの治療が優先されているため,栄養管理は後回しにされている状況であると考えられた.「災害時の対処」が一番少なかったのは,現在の状況で災害による身近な被害が実感されていないことが考えられたが,今後の災害が起こりうる状況を考えて専門職の協力を得ながら情報提供や体制を整える必要がある.また,自由記載から得られた意見には,「病院と地域連携を望む」や「CNCRの訪問看護を希望する」「在宅ケアを担うスタッフや患者指導を率先して欲しい」「end stageを在宅で過ごす患者や家族の介入を希望する」など,これらは病院だけではなく地域での活動を期待する内容であると感じている.「医師と患者の橋渡しをして欲しい」では,CNCRの専門的な視点から医師と情報共有を行うことが期待されていると考える.三重県医師会に所属する医師の多くが開業医であることを考えると,これらの内容は病院勤務医よりも在宅療養を中心とする開業医がCNCRへ期待する活動内容を反映していると考えられた.

結論

1.三重県医師会に所属する医師2,707名にCNCRに対するアンケート調査を行い回収率45%であった.

2.CN制度,CNCRへの認知度はそれぞれ40%,6%であった.

3.CNCRに期待する役割は「予防活動」が一番多く,ついで「薬物療法の指導」,「日常生活動作の指導」の順であった.

おわりに

急性期病院で行われた治療や看護が,在宅に戻っても生活の一部として継続できるための自己管理が重要になる5,6.そのためには,患者と家族が医療者から必要な看護や指導を受けることが出来るように,病院と地域がシームレスな関係の構築が必要である.そして在宅療養をより安定的に発展させるためには,CNCRを地域で活用できるような地域連携を目指して,多職種と情報交換を行いながら活動の場を広げていくことが今後のCNCRの活動課題であると考えられた.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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© 2019 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
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