日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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ワークショップ
慢性呼吸器疾患患者セルフマネジメント向上に向けた看護活動の実際と今後の期待
南雲 秀子淺川 久美子
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2019 年 28 巻 2 号 p. 242-243

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平成17年度からの10年間で,在宅医療を受けた患者数は倍以上の増加となっている1.平成26年9月の調査によると,1日の推計患者数(入院)1318.8千人のうち,呼吸器系疾患患者合計の患者数は90.7千人であり,そのうち慢性閉塞性肺疾患は7.9千人と少ない2.しかし,同月退院した患者の平均在院日数を比較すると,精神科疾患による入院を含む全体の平均が31.9日,呼吸器系疾患合計では27.3日であるのに対して,慢性閉塞性肺疾患患者の平均在院日数は68.1日と高く3急性増悪等により症状が重症化して入院に至った場合,退院できるまでの回復には相当の時間を要すことがわかる.

慢性呼吸器疾患患者が急性増悪を起こさず安定した療養を続けるためには患者の自宅もしくは生活の場におけるセルフマネジメントの向上が求められている.特に重要なのは医療者から受ける教育指導の充実であり,そのために慢性呼吸器疾患看護認定看護師には患者のニーズをとらえセルフマネジメントにつなげる力,多職種のチームをマネジメントする力,実践する力が求められている.

まず重要なのは患者のニーズを評価する事である.個々の患者の医療ニーズを的確にとらえ,本人及び家族の「思い」を引き出しつつ,精神的・経済的側面を合わせて評価し,将来的な療養生活の見通しの下にセルフマネジメントを組み立てる必要がある.今回の発表にある,急性期を脱したばかりの早い時期に患者自身が自分の症状を振り返ることを通じて自己コントロール感を取り戻す取り組み(シンプトム・サイン・マネジメント)は,急性期における慢性呼吸器疾患患者へのアプローチとして非常に有用なツールとなると期待したい.

さらに,短い入院期間もしくは短時間の外来でのかかわりの中で,高齢化・重症化・複雑化する慢性呼吸器疾患患者への教育を行うために各種リソースの活用が重要である.教育指導には,医師・看護師・薬剤師・リハビリ関連職種・管理栄養士・MSWなど多くの専門職がかかわる.発表の中でRST(呼吸サポート・チーム)へのかかわり方や,院内教育における指導者としての活動,退院後の患者宅訪問などを通じ,慢性呼吸器疾患看護認定看護師としてそれぞれの所属する組織における専門職種の連携をどのように組み立てているか,いくつかの施設での実際が発表された.

加えて,認定看護師には実践家として計画した教育指導を患者や家族へ提供することが求められている.患者の置かれている状況によっては,入院病棟や外来の看護師,または専門職から指導を受ける機会が限定される場合もある.急性期から回復期,そして退院へ向けてのプロセスの中で患者へかかわる時間を見つけ出し実際の指導を行うこと,そしてそれが患者自身の行動変容につながっているかどうかの評価も重要と言える.

今回ワークショップという場を設け,各地で活躍する慢性呼吸器疾患看護認定看護師がそれぞれの活躍の場で行っている患者評価の実際とセルフマネジメント計画,および実際の教育活動について学ぶ機会を得た.それぞれの演者の今後の活動に期待するとともに,このワークショップで得た知識やアイディアが多くの臨床の場で生かされることを期待したい.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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© 2019 一般社団法人日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
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