日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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ワークショップ
スペシャリストNsが行う看護の技
竹川 幸恵今戸 美奈子
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2020 年 29 巻 1 号 p. 23

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急速に進行する高齢化や患者・家族のニーズの多様化,治療ケアの選択に関する議論の高まりなど,医療を取り巻く環境は日々複雑化している.慢性呼吸器疾患患者の医療ケアの場面においても,病気の進行に伴う息切れを主とする症状のマネジメント,呼吸リハビリテーションや治療のアドヒアランス,在宅酸素療法・人工呼吸療法の選択,エンド・オブ・ライフケアなど,臨床上多様な課題に直面することが多い.これらの多様な課題に対応し,目の前にいる患者・家族がその人らしく生き,生活していくことを支えるためには,的確に患者の状況を捉え判断しケアを創造していくことが必要となるが,実際にはなかなか難しく悩むことが多いのが現実であろう.

本邦では,1995年に複雑で解決困難な看護問題を持つ個人,家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するため,大学院修士課程を修了し特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師(Certified Nurse Specialist: CNS)制度が導入され,現在13専門分野1883名(2016年12月時点)のCNSが登録されている.本ワークショップでは,慢性呼吸器疾患患者のケアで悩むことが多いであろう4つの状況を取り上げ,それぞれの専門分野のCNSより看護のエッセンスを発表していただいた.

慢性疾患看護CNSの今戸美奈子さんからは,慢性期のセルフマネジメントを維持するための支援として,患者の体験を聴きながらその人のセルフマネジメントスキルを高める教育と支援について,急性・重症患者看護CNSの松井憲子さんからは急性増悪時の慢性呼吸不全患者の回復を支えるケアについてケアリングを基盤とした関わりをお話いただいた.また,がん看護CNSの伊藤奈央さんからは高齢肺がん患者の治療や療養場所等の意思決定支援において,患者を理解し患者にとっての最善の医療・ケアをうけることができる支援の在り方を,老人看護CNSの桑田美代子さんからは認知症の人々の支援について,認知症とともに生きる高齢者の理解と看護の本質である患者の思い,辛さ,痛みなど“察する”“汲み取る”ことの重要性など看護におけるエビデンスや臨床知,ケアの技を論じて頂いた.

本ワークショップは,看護師をはじめ多くの医療者の方に参加していただき,スペシャリストが行う慢性呼吸器疾患患者への看護の技を共有できたと考える.また,参加した多くの看護師の皆様にとって,質の高いケアの実践につながる機会になれば幸いである.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

 
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