日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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ワークショップ
高齢肺がん患者の意思決定支援
伊藤 奈央
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2020 年 29 巻 1 号 p. 33

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国立がん研究センターのがん統計によると,肺がんの罹患数は男性3位,女性4位(2012年),死亡数は男性1位,女性2位(2014年)とワースト上位を占めており,70歳以上では男女共に肺がんによる死亡割合が増加することが示されています.高齢肺がん患者は,複数の疾患を持っていることもあり,がん以外の疾患の影響も考慮した治療や療養場所の選択が必要となります.しかし,年々治療は複雑化し,高齢肺がん患者の治療選択が難しい場合や,家族の希望を聞き入れて治療選択をする場合もあります.また,独居や高齢世帯,ADLが低下している場合など,社会資源を活用しながら治療に臨めるような支援体制を整えることも重要です.

肺がん治療は手術,化学療法,放射線治療を中心としてきましたが,2015年12月に切除不能進行・再発の非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブが保険承認されて以降,メディア等で取り上げられたこともあり,免疫療法に対する肺がん患者の期待が多く聞かれています.なかには,80歳代の終末期肺がん患者が,ニボルマブを使用したいと他院緩和ケア病棟入院中に当院呼吸器内科の外来診察を受けたケースもありました.免疫療法という言葉を耳にすると,化学療法でイメージされるような副作用は生じないと誤解されている場合もあります.しかし免疫チェックポイント阻害剤に関しては,これまで用いられてきた化学療法の毒性とは異なる有害事象を引き起こすため,看護師は薬剤の特徴を理解し,患者が治療について納得して選択できるよう適切な情報提供が求められています.治療の場が入院から外来へ移行している現在,高齢肺がん患者の価値観や人生経験を尊重しながら,意思決定支援に関わる看護師の役割を考えていきたいと思います.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

 
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