日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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ワークショップ
呼吸リハビリテーションの動向
神津 玲及川 真人花田 匡利名倉 弘樹坂本 憲穂迎 寛
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2020 年 29 巻 1 号 p. 42

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間質性肺炎に対する呼吸リハビリテーション(リハ)の効果,特に運動療法による短期効果は,ほぼ確立された状況にある.しかし,臨床現場では,進行例や難治性の基礎疾患患者も少なくなく,未だ難渋する.間質性肺炎には多種多様な疾患が含まれており,それぞれの基礎疾患によって経過や治療反応性が異なる.そのため,呼吸リハはその経過や管理に依存する部分も多く,診断および合併症,経過と予後予測,治療反応性や薬剤の副作用なども考慮しながら,治療方針に基づいたリハ・プログラムの実施と管理が不可欠である.治療と管理には薬物療法,酸素療法,緩和ケア,場合によっては肺移植も含まれる.呼吸リハの位置づけと役割は,それぞれの基礎疾患や重症度,病期によって異なり,上記の方針や関連する治療・管理の手段との関係性を常に把握しながら柔軟に対応することが求められる.上記を背景に間質性肺炎に対する呼吸リハの成績は基礎疾患,重症度または病期ごとに検討すべきである.そのような意味で基礎疾患および重症度別にその成績を検討した報告(Dowman et al. Thorax, 2016)の臨床的意義は大きい.特に基礎疾患に関しては,間質性肺炎の中でも難治性である特発性肺線維症(IPF)に対する抗線維化薬の適用によって,呼吸リハのあり方にも影響を及ぼすことが予想される.IPFの臨床経過においてどの程度呼吸リハが有益性を示し得るかは重要な課題であり,これらの薬剤との併用による効果の増強や長期維持などの検討が必要であろう.現在,ニンテダニブ併用下で短期間の呼吸リハに加えて,長期維持リハの有効性と安全性の評価を目的とした本邦での多施設臨床研究が間もなく開始予定であり,その成果が期待されている.本ワークショップでは呼吸リハの最近の動向を踏まえ,その役割と意義を再考した.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

神津 玲;講演料(帝人在宅医療)

 
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