嚥下障害に対する外科的治療である誤嚥防止術の概要,目的,適応を総説した.誤嚥防止術は発声機能が犠牲となるが,気道と食道を分離することにより誤嚥性肺炎を完全になくすことを目的とする術式である.成人に対する「誤嚥防止術」は,その目的に経口摂取の獲得は条件とされてこなかったが,近年の高齢化の時代の中で手術の目的や役割が大きく変わってきた.
誤嚥防止術は,1)経口摂取を可能にし,食べる喜びを取り戻すこと,2)在宅介護の負担を軽減し,在宅介護への移行・継続を可能にすること,3)介護施設入所のハードルをさげること,これら3つの目的に応えられる治療法として,高齢者医療の現場では十分に周知されるに至ってはいないが,そのポテンシャルへの期待や役割は大きくなっている.