日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
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ISSN-L : 1881-7319
29 巻, 2 号
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2019年度 学会賞受賞報告
  • 宮崎 慎二郎, 山本 晃市, 橘 修司, 広瀬 絵美子, 松田 由美香, 市川 裕久, 荒川 裕佳子, 森 由弘
    原稿種別: 2019年度 学会賞受賞報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    KKR高松病院呼吸ケア・サポートチームの母体である呼吸療法委員会は2001年に設立し活動を開始した.院内の呼吸療法,呼吸ケアの統一や適正化に向けて,これまで各種クリニカルパス,スタッフ向けマニュアル,患者用パンフレットの作成,院内勉強会の開催,入院・外来患者へのチームアプローチや呼吸リハビリテーションなど多くの活動を行ってきた.人工呼吸管理や睡眠時呼吸障害においてもチームメンバーが中心となり,多職種がそれぞれの専門性を生かしつつ関わる体制を整えた.近隣の医療・介護従事者との勉強会や市民公開講座など,地域への啓発活動や連携体制の構築も推進している.今後も,チーム医療によって最良の医療とサポートを提供するために尽力するとともに,本学会の発展に寄与できるよう活動を継続していきたい.

2019年度 学会奨励賞受賞報告
  • 照井 佳乃
    原稿種別: 2019年度 学会奨励賞受賞報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の身体活動量の維持・向上は重要であるといわれている.また,COPD患者は健常者よりもバランス能力が低下しているといわれていることから,身体活動量の向上において歩行の安定性の評価が有用であると考えられる.そこで,我々は安定期COPD患者を対象とし,3軸加速度計を用いた歩行時体幹運動左右非対称性の評価,および歩行時重心変位とバランス能力を検討し,呼吸リハにおける新しい運動機能評価の臨床的な有用性を検討した.本研究の結果,COPD患者における歩行時体幹運動左右非対称性や左右重心変位は健常者よりも拡大し,かつ立位バランス能力と関連がみられた.そのため,歩行時体幹運動左右非対称性や左右重心変位の測定が転倒予防のための評価指標になると考えられた.

  • 上川 紀道
    原稿種別: 2019年度 学会奨励賞受賞報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 183-185
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    随意的な咳嗽力の指標には,咳のピークフロー(CPF)がある.CPFは,肺気量,呼吸筋力に影響を受け,臥位で低値を示す.一方,症状悪化により長期的に背臥位を強いられると,褥瘡予防目的でエアマットレス導入が推奨される.よって,背臥位におけるエアマットレスの硬さがCPFに与える影響を検討することは重要である.以上のことから,健常若年男性を対象として検討した結果,硬さが「ソフト」の場合,CPF,努力性肺活量(FVC),最大吸気口腔内圧(PImax),最大呼気口腔内圧(PEmax)が有意に低下した.さらに,嚥下障害を有する高齢者を対象として検討した結果,硬さが「ソフト」の場合,CPF,FVC,PImaxが有意に低下した.姿勢に関しては上前腸骨棘の沈み込みが大きく,骨盤が後傾し,腰部接触面積が増加した.本研究の結果は,骨盤後傾を伴う腰部の沈み込み,脊柱の弯曲による姿勢の変化が,嚥下障害を有する高齢者のCPFなど咳に関連した因子に影響することを示唆している.

  • 岩井 宏治
    原稿種別: 2019年度 学会奨励賞受賞報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    慢性呼吸器疾患患者における身体活動は予後に影響するため,いかにして身体活動を維持・改善させるかは重要な臨床課題である.我々は,身体活動量と運動耐容能,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)には相互的な関係性が成立すると考え,運動耐容能に見合った身体活動量推定の可能性について検討した.結果,3つの因子にはそれぞれ関連があり,椅子1つあれば簡便に評価可能なCS-30テストから身体活動量が推定できる重回帰式(2.760-1.387×mMRC息切れスケール+288×CS-30テスト)が得られた.次に心機能に着目し,慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)患者の運動耐容能と左室拡張障害,右室収縮期圧との関連性を検討した.結果,左室拡張障害の有無で運動耐容能に有意差は認めなかったが,心負荷を示唆する所見とは有意差を認めた.また,右室収縮期圧の上昇は,労作時酸素飽和度の減少,心拍数の上昇を惹起し,運動耐容能に関連する可能性が示唆された.

教育講演
  • 長尾 大志
    原稿種別: 教育講演
    2020 年 29 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    メディカルスタッフが胸部X線写真を見る機会はそれほど多くないかもしれないが,救急の現場など急を要する場面などで読影をすることができれば,現場での診療に役立つと考えられる.X線写真を「ぱっと見てわかる」重要な所見は,肺の大きさの変化,構造物の移動や左右の対称性,気胸や縦隔気腫の存在などである.それ以外に胸部X線写真が有用なものとしては,肺炎をはじめとする感染症,そして肺癌などがあるが,肺野に明らかな陰影があれば異常に気づくことはそれほど困難ではない.一方で心陰影や横隔膜裏などの物陰・死角にある陰影はしばしば見逃されることがある.そのような陰影に気づくためのポイントとして,シルエットサインが有用である.シルエットサインは陰影の存在する場所を推定するために使われているが,シルエットサインが陽性である場合,その構造物に隣接して病変が存在するということが示唆される.

シンポジウム
  • 森 由弘, 田山 二朗
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 195
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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  • ―誤嚥防止術の役割―
    鹿野 真人
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    嚥下障害に対する外科的治療である誤嚥防止術の概要,目的,適応を総説した.誤嚥防止術は発声機能が犠牲となるが,気道と食道を分離することにより誤嚥性肺炎を完全になくすことを目的とする術式である.成人に対する「誤嚥防止術」は,その目的に経口摂取の獲得は条件とされてこなかったが,近年の高齢化の時代の中で手術の目的や役割が大きく変わってきた.

    誤嚥防止術は,1)経口摂取を可能にし,食べる喜びを取り戻すこと,2)在宅介護の負担を軽減し,在宅介護への移行・継続を可能にすること,3)介護施設入所のハードルをさげること,これら3つの目的に応えられる治療法として,高齢者医療の現場では十分に周知されるに至ってはいないが,そのポテンシャルへの期待や役割は大きくなっている.

  • ―誤嚥性肺炎看護プログラムの作成―
    藤川 啓子
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    誤嚥性肺炎の看護は多様なケアの集約である.看護師は交替制勤務をしながら看護を展開し,継続看護をしていく中で,誤嚥性肺炎に関する知識の習得やケアのスキルアップは重要である.そして,多様なケアであるからこそ各専門性を持った多職種で構成するチームとしての関わりも重要である.看護ケアの質向上とチーム医療の強化を目的とし,誤嚥性肺炎看護を標準化した誤嚥性肺炎看護プログラムを作成した.今回,誤嚥性肺炎看護プログラム運用の成果の検証により,プログラム導入によって他科紹介率の向上,退院支援の早期介入及び他職種との協働に効果をもたらし,平均在院日数短縮につながるという結果が得られた.

  • ―耳鼻咽喉科医師によるアプローチ―
    西山 耕一郎
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 206-209
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    団塊の世代が75歳以上となる2025年を目前に,嚥下障害がCommon Diseaseとなった.医療者は,嚥下障害の対応から避けて通れない状況にある.

    嚥下機能が低下すると,液体や食物を誤嚥して肺に入り,嚥下性肺炎を発症する.唾液を誤嚥する場合や,胃の内容物が逆流しても肺炎を発症する.呼吸機能と体力が,嚥下機能に相関することも報告されている.高齢者の肺炎の特徴は,症状が乏しいので発見が遅れ気味となり,また繰り返しやすく,完治は難しい.しかしながら嚥下機能を正しく評価し,嚥下訓練と食事形態の変更を行えば,経口摂取を続けられる症例を経験する.嚥下機能低下例において,嚥下機能を正しく評価しないまま経口摂取を続ければ,誤嚥性肺炎を発症する.

    日本耳鼻咽喉科学会ガイドラインにて,嚥下内視鏡(VE)による兵頭スコアが提示された.兵頭スコアを使用すれば,嚥下機能に対応した食形態を指導することができる.

シンポジウム
  • 石川 悠加, 黒岩 靖
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 210-211
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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  • 阿部 聖司
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 212-217
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    神経筋疾患と重症心身障害児(者)においては,睡眠呼吸障害が高率に起こる.特にREM(Rapid eye Movement)期に低換気が顕著に表れる.このCAH(chronic alveolar hypoventilation:慢性肺胞低換気)の診断には,換気の指標であるPtcCO2(Partial pressure of transcutaneous carbon dioxide:経皮二酸化炭素分圧)が必須である.睡眠呼吸障害に対してNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation :非侵襲的陽圧換気)のモードや設定条件を適切に調整することは睡眠の質を向上させ,CAH症状を軽減し,生命やQOLの改善につながると考えられる.そのためには睡眠時PtcCO2に加え,ログ解析機能を用いて肺胞低換気の評価を補完する.データの経時的変化を,PtcCO2の変化と関連づけて解析することで原因を特定しNPPVの設定条件変更を行うことが重要である.一方,神経筋疾患では,NPPVにより二酸化炭素が過剰に低下すると,上気道閉塞や無呼吸を惹起し,SpO2低下を認めることがあり注意が必要である.

    このように,必要なデータを定期的に評価し,NPPV条件を適正化する人的,物的資源が求められる.

  • 竹内 伸太郎, 石川 悠加
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 218-221
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy; DMD)などの神経筋疾患患者の慢性呼吸不全の治療は,非侵襲的陽圧人工呼吸(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)が第一選択である1,2,3,4,5,6).神経筋疾患は呼吸不全の進行に伴い,NPPV使用時間を睡眠時に加えて昼間の覚醒時に延長することもある7,8,9).終日までのNPPVにより,気管切開を回避してDMD患者の延命が可能となってきており7,10,11,12,13),そのノウハウは他の神経筋疾患にも応用が可能とされる.神経筋疾患の経験は,重症心身障害児(者)に対する呼吸ケアにも役立てられる14).これらの小児期発症のNPPVの効果では,インターフェイスと人工呼吸器条件を適切にする工夫と技術が求められる15).インターフェイスは,快適性とエアリークコントロールを要する.呼吸筋力が低下した神経筋疾患患者において,現状の携帯型人工呼吸器では,睡眠時のトリガの設定が困難なことがあり,REM期に上気道の狭窄を伴い易いことが知られている16).これらに対して,睡眠時に呼気弁を用いた閉鎖回路でのターゲットボリューム活用の効果が検討されている16).また,終日NPPV例に睡眠時と覚醒時の複数の条件設定を使い分ける方法がある.

  • ―地域の拠点病院として―
    片山 望
    原稿種別: シンポジウム
    2020 年 29 巻 2 号 p. 222-226
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    機械による咳介助(Mechanical Insufflation-Exsufflation; MI-E)は,咳の代償または咳を増強させる気道クリアランス法である.近年,国内外のガイドラインで,神経筋疾患において非侵襲的陽圧換気療法(Noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)とMI-Eを併用した肺・胸郭のコンプライアンスや気道クリアランスの維持など肺の状態を良好に保つ為の呼吸リハビリテーションが推奨されている.当院でも,排痰困難のエピソードや咳機能評価における咳嗽力の著明な低下のあった在宅神経筋疾患・重症心身障害児者に対してMI-Eを積極的に導入しており,それぞれのライフステージにおける生活の質を考慮しながら地域の拠点病院として在宅支援を担っている.ケアを要する患者を取り巻く現場は年齢や地域により様々であり,患者本人のコミュニケーション能力やケアを実際に行う家族の状況,関わる多施設・多職種の専門性を念頭に置きながら連携を図れるようネットワークを広げ,生活する地域の実情に合った医療やケアを考慮することが欠かせない.

ワークショップ
ワークショップ
  • 津田 徹, 石川 朗
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 2 号 p. 238
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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  • 末松 利加, 金田 瑠美, 池内 智之, 進藤 崇史, 大場 健一郎, 中山 初美, 一木 克之, 自見 勇郎, 津田 徹
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    住まい,医療,介護,予防,生活支援を一体的に提供できる支援体制の構築が目指されているが,呼吸ケアの地域における連携は地域によってキーパーソンが異なり多様である.また,COPDの地域連携においては診断や治療方針の決定を行う医療機関や急性増悪時入院対応ができる医療機関が多くを占めており,呼吸リハビリテーションを継続して行うことのできる医療機関や通所・入所施設が少ないことがうかがえる.そこで当院では地域包括ケアチームを組み,多職種で急性期から在宅までを支えているが,当院のみの完結だけではなく,地域における呼吸ケアの啓蒙と質の向上を目指し,医師,看護師,理学療法士,事務職,医療ソーシャルワーカー,ケアマネジャー,訪問看護師などの多職種がそれぞれの役割を発揮し,地域に向け実践している.地域包括ケアにおける呼吸ケアでは,医師主導ではなく呼吸ケアチームが主導となることが重要と考える.

  • 大平 峰子, 石川 朗
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    高齢化率が高く,地理的条件から通院リハビリテーションが困難な長野県北部(北信地方)において,2006年より北信ながいき呼吸体操研究会は,「訪問看護を導入した多施設間包括的呼吸リハビリテーションプログラム」を開始し,慢性呼吸不全患者の呼吸リハビリテーションに取り組んできた.訪問看護を中心としたネットワークの構築により,患者のADL維持と医療費節減への効果を認めた.

  • 沖 侑大郎, 玉木 彰, 藤本 由香里, 山口 卓巳, 長田 敏子, 酒井 英樹, 近藤 敬介, 田村 宏, 石川 朗
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 2 号 p. 250-255
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    本邦の訪問看護サービス利用者は年々増加傾向にある.在宅呼吸ケアの必要性は更に高まると予想され,ネットワークおよびフォローアップ体制の構築・充実化が急務である.そこで,兵庫県で実施している呼吸ケアの地域連携実現に向けた取り組みを紹介する.

    在宅医療従事者の呼吸ケアの知識・技術の向上およびネットワーク構築を目的に,2012年に“神戸在宅呼吸ケア勉強会”を発足した.定期的な勉強会や研修会の開催に加え,パンフレットや地域連携MAPを作成し,情報を発信している.

    さらに,急性期から在宅までのシームレスな呼吸ケアの提供に向けたフォローアップ体制構築および地域ネットワーク充実化を目的に,2017年に“ひょうご呼吸ケアネットワーク”を発足した.フォローアップツールとして呼吸ケア情報提供書を作成し,地域への周知活動を行っている.

    このような地域連携実現に向けた活動が,今後日本の呼吸ケアのエビデンス確立の一助となることを期待する.

  • 中田 隆文, 平林 大輔
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    呼吸ケア・リハは,地域医療連携に基づいた実践が求められている.地域医療連携は地域ごとに特性があるが,盛岡市では2004年から他職種,他事業所間の連携システム,「チームもりおか」を構築し,実践してきた.盛岡市における在宅呼吸ケア・リハの特徴は,重症の慢性呼吸器疾患,在宅呼吸管理を必要とする神経筋疾患と医療的ケア児,呼吸器症状を有する末期がん,NHCAPの在宅での治療,および摂食嚥下リハの適応者である.いずれの疾患においても重症例が多く,在宅看取りまで関わることもある.課題として医療的ケア児と難病患者への支援,COPDの介護予防の取り組み,介護支援専門員の呼吸ケア・リハに関する教育や支援,NHCAPやCOPDの終末期ケアにおける呼吸リハの実践の不足,高齢者の「住まい」による制度上の理由で在宅呼吸ケア・リハの関わりが困難,医療機関における意識と能力の格差,在宅での人材教育に時間がかかること,があげられる.

共同企画
  • 大坂 巌
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 2 号 p. 260-263
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー HTML

    わが国における緩和ケアは,がんを中心に発展してきた.しかし,緩和ケアの対象は生命を脅かすあらゆる疾患であり,非がん疾患に対する緩和ケアの提供という点で日本は発展途上にあると言わざるを得ない.わが国の緩和医療従事者は,必ずしも非がん患者への緩和ケアに精通しているわけではない.呼吸器疾患患者においても,緩和ケアおよびエンド・オブ・ライフケアは重要な課題である.これまで,がん診療の中で醸成されてきた緩和ケアのエッセンス(全人的ケア,疾患の見通し,症状緩和,開始時期,アドバンス・ケア・プランニングなど)を呼吸器と緩和ケアの専門家が共有し,診療・教育・研究での協働により呼吸器疾患患者に対する理想的なエンド・オブ・ライフケアの提供が期待される.

  • 上田 章人
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 2 号 p. 264-269
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    誤嚥に引き続いて起こる肺の障害には,

    ・「口腔内や上気道に定着している微生物の誤嚥によって生じる細菌性肺炎」である誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)

    ・「逆流した胃内容物の誤嚥によって生じる化学性肺臓炎」である誤嚥性肺臓炎(aspiration pneumonitis)

    ・「異物を繰り返し誤嚥することにより引き起こされた細気管支の慢性炎症性反応」であるびまん性嚥下性細気管支炎(diffuse aspiration bronchiolitis: DAB)

    がある.

    これらはオーバーラップすることもあるが異なるものであり,経過や治療方針,再発予防に大きな違いがある.しかし,これらはしばしば混同される.

    誤嚥性肺炎,摂食嚥下障害を正しく学んだ多職種による連携が,さらなる治療・予防の質向上に寄与するであろう.

ランチョンセミナー
  • ―新たな視点とアプローチ―
    南方 良章
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2020 年 29 巻 2 号 p. 270-275
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)では,労作時呼吸困難,運動耐容能低下,身体活動性低下の悪循環が予後の悪化をもたらすため,それぞれの評価・管理が重要である.なかでも身体活動性は最も重要で,これまで主に中等度以上の活動時間の延長が目標とされ,医療介入による延長効果の可能性も一部報告されている.これに対し近年,座位相当行動(sedentary behavior)の時間が中等度以上の活動時間とは独立したCOPD死亡の危険因子であることが報告され,その重要性が注目されており,気管支拡張薬によるsedentary時間の短縮の可能性も報告されている.したがって,これからのCOPD管理においては,中等後以上の活動時間延長に加え,sedentary時間短縮にも着目し,薬剤,呼吸リハビリテーション,モチベーション向上などを組み合わせた複合的介入により改善を目指すことが重要になると考えられる.

総説
  • 個別指導と訪問指導の比較
    波止 千惠, 前田 ひとみ
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 2 号 p. 276-281
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    本研究は,在宅酸素療法を行っている65歳以上のCOPD患者について,急性増悪の要因及びセルフマネジメントに関する情報量が,外来のみでの看護介入(外来個別指導群)と外来と訪問による看護介入(訪問指導群)で違いがあるのかを検討した.対象者は,外来個別指導群が9名,訪問指導群が18名であった.外来カルテより在宅酸素開始から急性増悪までの経過に関する情報を収集した.COPD患者の療養状況による自己管理情報ニーズの違いについては,LINQを用いた質問紙調査を行った.COPD患者の急性増悪については2群間で有意差はみられなかった.しかしLINQについては,外来個別指導群の方が「薬」の管理や「自己管理」「運動」など日常生活に関する情報について訪問指導群よりも情報が不足していることが示された(p<0.001).訪問指導により,それぞれの状況に見合った生活の仕方を指導できていることが示唆された.

  • 三木 啓資
    原稿種別: 総説
    2020 年 29 巻 2 号 p. 282-286
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,病期が進行するにつれ増強する息切れのため運動耐容能は低下し,身体活動性は制限され予後悪化に至る疾患である.息切れを良くするには,COPDが種々の併存症を伴う全身性疾患であることを踏まえ,多様性ある息切れのメカニズムを把握した上で,病態に適した対策を講じることが必要である.1回換気量の吸気と呼気との差や吸気と呼気との時間比(Ti/Ttot)などの動的呼吸パターンに着目した治療は,肺過膨張,呼吸性・代謝性アシドーシス,延いては息切れの改善に繋がる可能性がある.心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test: CPX)は,呼吸-循環さらには筋肉とのクロストークにおける,時に難解な病態生理の把握を可能とし,COPD治療戦略に関わる情報を提供してくれる.呼吸器科スタッフにとってCPXの果たす役割は大きい.

原著
  • 佐々木 篤志, 清水 秀文, 伊藤 幸祐, 川目 千晶, 小島 弘, 堀江 美正, 溝尾 朗
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    成人肺炎診療ガイドライン2017における医療・介護関連肺炎(NHCAP)への対応は,初めに患者背景のアセスメントを行い,治療を行わないことも含めて検討することが提唱されている.JCHO東京新宿メディカルセンターに入院となった超高齢者のNHCAPに対し個人の意思やQOLを尊重した患者中心の医療・ケアが実践されていたか後ろ向きに検討した.2016年4月から2018年3月にかけて入院した90歳以上のNHCAP171例を対象とした.2例を除いたほぼ全例に抗菌薬治療が行われていた.治療の意志に関しては患者及び家族の意志が確認できたのは148例であったが,うち99%は人工呼吸器装着や心肺蘇生の差し控えのみの記載に留まっていた.また,患者本人からの意志が確認できたものはわずか4例のみであった.施設から搬送入院となった状況で病院側が治療を差し控えるのは難しく,日頃から患者,家族と接する医療従事者がアドバンス・ケア・プランニングに取り組むことが重要である.

  • 窪田 美香, 佐竹 將宏, 岩倉 正浩, 古川 大, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 292-298
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【目的】吸気筋トレーニングとして,2種類のインターバルトレーニング(IT)と従来法を比較し有用性を明らかにすること.

    【方法】健常大学生29名を吸気筋トレーニングの方法によって無作為に3群に分けた.全群とも負荷強度は最大吸気筋力の60%,頻度は2回/日を毎日とし4週間実施した.開始前と4週後に呼吸機能,呼吸筋力・耐久力を測定した.トレーニング(Tr)継続性の指標としてTr実施前後の呼吸困難と,終了時点でのTr継続の可否を調査した.群間差を連続変数では分散分析と多重比較,名義尺度ではカイ二乗検定を用いて検討した.

    【結果】呼吸筋力は全群で,筋耐久力はITにおいて有意に向上した.回数群では従来群と比較してTr実施に伴う呼吸困難が有意に低く,継続可能と答えた者が多かった.

    【結論】吸気筋ITは従来法と同程度の効果が得られ,特に回数指定のITでは実施者の負担軽減によりアドヒアランス向上に寄与する可能性が示唆された.

  • 日髙 晴菜, 白仁田 秀一, 上村 育久, 猿渡 聡, 林 真一郎, 渡辺 尚
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【背景】慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する軽度認知障害(MCI)の有病率や諸項目との関連については不明な点が多い.

    【対象と方法】外来COPD 82例を対象とし,軽度認知障害スクリーニング検査(MoCA-J)を用いてMCIの判定を行った.

    【結果】COPDのMCI有病率は65.8%であった.MoCA-Jと年齢,mMRC,MNA,TUG,ISWT,NRADL,LSAにr=0.4以上の有意な相関が認められた.MoCA-Jの影響因子を抽出した結果,ISWT,年齢,LSA(R=0.67)に強い関連がみられた.また,MoCA-Jと患者教育情報ツール(LINQ)にr=0.54の有意な相関が認められた.

    【考察】COPDにMCIは多数併存者が存在した.MCIの要因として,特に運動耐容能や生活範囲が影響していることが示唆された.さらにMCIは患者教育に悪影響を与えることが示唆された.

  • 三川 浩太郎, 秋山 歩夢, 辻村 康彦, 平山 晃介, 小森 瑛太, 山内 義貴, 安藤 守秀, 平松 哲夫
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 304-310
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    本研究の目的は,多施設における慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者80名を対象とし,サルコペニアの有病率や臨床的特徴を調査することである.調査項目は,年齢,%1秒量,体格指数(BMI),脂肪量指数(FMI),膝伸展筋力,6分間歩行距離(6MWD),1日あたりの歩数,運動量,CAT(COPD Assessment Test),MNA(Mini Nutritional Assessment),10食品群チェックシートとした.結果,本研究のサルコペニアの有病率は30.0%であり,サルコペニア群は非サルコペニア群と比較し,%1秒量,mMRC息切れスケール,BMI,FMI,膝伸展筋力,1日あたりの歩数,運動量,MNA,10食品群チェックシートの得点には有意差を認めた.以上より,本研究のCOPDのサルコペニア患者は,疾患重症度,身体不活動,低栄養の要素すべての影響を受けていた.

  • 山川 貴久, 景山 剛
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 311-316
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【目的】本研究では,簡便に行える吸気筋トレーニングの指標獲得を目的とし,従来の提唱されてきた指標と主観的運動強度の指標を用いたトレーニングの効果比較を行った.

    【対象と方法】健常成人40名を,修正Borg scale 2群,修正Borg scale 4群,初回測定30%固定群,対照群の計4群へ無作為に振り分け,トレーニング前,4週間後に呼吸機能,呼吸筋力を測定した.吸気筋トレーニングにはThreshold IMTを用いた.

    【結果】最大吸気圧の変化量は,トレーニングを実施した3群は対照群に比べ,有意に高値であった.また,トレーニング群間では有意差を認めなかった.呼吸機能の変化量は,全ての群間で有意差を認めなかった.

    【結語】吸気筋トレーニングの負荷設定は,主観的運動強度「修正Borg scale」を指標とした方法でも代用が可能となり,呼吸筋力の測定をせずとも介入できる可能性が示唆された.

  • 森下 辰也, 陶山 和晃, 板木 雅俊, 宮城 昭仁, 阿南 裕樹, 大曲 正樹, 禹 炫在, 田中 貴子, 俵 祐一, 神津 玲
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【目的】後期高齢者の肺炎再発症による入院の割合,およびそれに関連する身体機能をはじめとする要因を明確にすることである.

    【方法】肺炎にて入院治療とともに,リハビリテーションを行った75歳以上の高齢者を対象に,対象者背景,肺炎重症度,認知機能,栄養状態,摂食嚥下関連機能,身体機能,呼吸機能を評価した.また,過去1年間の肺炎による入院既往の有無から再入院群と初回入院群に分類し,評価項目を比較検討するとともに,再入院に関連する要因を分析した.

    【結果】解析対象者は118例であり,再入院率は24.6%であった.再入院群,初回入院群間で性別,呼吸器疾患の併存,栄養状態(GNRI)に有意差を認め,呼吸器疾患の併存とGNRIが再入院の有意な要因として抽出された.

    【結語】後期高齢者における肺炎による1年間の再入院率は24.6%であり,呼吸器疾患の併存と低栄養状態が再入院に関連する要因であることが示された.

  • 中島 活弥, 古家 正, 西川 正憲
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 323-326
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    2017年4月からかかりつけ医機能を実践する内科診療所において,非常勤職員の呼吸ケア指導士/理学療法士が看護師と協働して,診療報酬にとらわれない「呼吸ケア」外来を実践した.呼吸リハビリテーションや運動療法,リハビリテーション栄養に関して担当医師の指示の下,患者の食生活や日常生活などの情報収集と評価および患者指導を行った.医師,看護師,薬剤師を含めた多医療職種間と情報を共有した.非結核性抗酸菌症5名(全員女性,平均年齢72.8歳)では,介入期間(平均5.2ヶ月)前後で比較すると,体重42.1 vs 43.3 kg,握力18.3 vs 18.6 kg,大腿周囲径36.8 vs 38.0 cm,下腿周囲径30.2 vs 30.5 cmと増加傾向を認めた.かかりつけ医機能を実践する内科診療所での呼吸ケア指導士/理学療法士の介入は,呼吸器疾患に続発する二次性サルコペニアの予防を含めた包括的管理に有用であることが示唆された.

  • 天白 陽介, 守川 恵助, 今岡 泰憲, 武村 裕之, 稲葉 匠吾, 楠木 晴香, 橋爪 裕, 廣瀬 桃子, 鈴木 優太, 畑地 治
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 327-333
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    近年,サルコペニアと摂食嚥下機能障害の関連性について注目されており,骨格筋量の減少は摂食嚥下機能障害の要因となると報告されている.本研究は骨格筋量の指標である骨格筋量指数(以下 SMI)が高齢肺炎症例の退院時普通食経口摂取可否を予測する因子となるかを検討することとした.

    対象は肺炎の診断名で当院に入院した101名(84.3±9.5歳 男性/女性:63/38)とした.普通食経口摂取の基準は退院時Functional-oral-intake-scale(以下 FOIS)6以上とした.評価項目は言語聴覚士介入時に合わせて評価した.対象を退院時FOISの値で2群に分類し,検討した.

    群間比較の結果では体重,Body mass index,Mini-Mental State Examination,除脂肪量,SMIにおいてFOIS6以上群が有意に高い結果であった.ロジスティック回帰分析ではSMIが独立した因子として抽出された. Receiver Operatorating Characterristic curveでは男性 5.8 kg/m2,女性 4.3 kg/m2がカットオフ値として算出された.

    SMIは高齢肺炎症例の退院時普通食経口摂取可否を予測する因子である可能性が示唆された.

  • 辻村 康彦, 秋山 歩夢, 平松 哲夫, 三川 浩太郎, 田平 一行
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 334-340
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【目的】歩数フィードバック(歩数FB)を併用した呼吸リハビリテーション(PR)が,重症COPD患者の身体活動量(PA)を向上させるか検討した.

    【対象】PR未経験でかつ日常生活において強い呼吸困難と活動制限があるGOLD の病気分類III~IVの男性14例を対象とした.

    【方法】本研究は介入前調査2週間の後,PRのみ,PR+歩数FBを各々8週間行い,セッション毎に評価した.主要評価は加速度センサー付歩数計による歩数と運動量で,副次評価は息切れ,運動耐容能,日常生活における役割の有無,生活範囲とした.

    【結果】PRにてPA,息切れ,運動耐容能等が有意に改善した.これらは歩数FBをさらに追加することで向上した.

    【考察】PRは身体機能の改善を介してPAを向上させ,歩数FBによる活動目標の設定はPAをさらに向上させたものと考えられた.

  • 千葉 佐保子, 小磯 秀夫, 三ツ村 隆弘, 石渡 庸夫
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 2 号 p. 341-345
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    【目的】高齢者における肺炎治療後の自宅退院と非自宅退院に関与する因子を明らかにする.

    【方法】対象は急性期病院から当院へ転院してリハビリテーションを行った肺炎治療後の70歳以上の症例で,前医で非誤嚥性肺炎あるいは誤嚥性肺炎として治療された患者をそれぞれ誤嚥リスクなしあるいは誤嚥リスクあり群とした.転帰を誤嚥リスクの有無および誤嚥性肺炎生存例を自宅退院と非自宅退院群に分けて,患者背景,検査所見,入院期間,Barthel Index(BI),栄養投与方法,肺炎再燃の有無を後方視的に調査した.

    【結果】対象症例は25例.誤嚥リスクなし群の5例は全例生存退院したが,誤嚥リスクあり群の20例は4例が死亡退院し,死亡例は生存例に比べて肺炎再燃率が有意に高かった.誤嚥リスクあり群の生存例16例のうち自宅退院した9例では非自宅退院の7例に比べ有意にBIが高値で経腸栄養実施率が低く入院期間が短かった.

    【結論】誤嚥性肺炎治療後の患者ではBI,経腸栄養の有無,入院期間が自宅退院の可否に関与する可能性が示唆された.

症例報告
  • ―症例報告―
    渡邊 寿彦, 古田 哲朗, 根橋 浩司, 岡山 大, 田中 宏和, 弓野 大
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 346-349
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    気管支喘息の重症者はリモデリングを来し運動耐容能の低下を招く可能性がある.重症持続型の場合,治療下でも増悪を認め,在宅の現場におけるリハビリテーション(以下,リハ)内容に難渋することが多い.訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の提供において,対応できない疾患の上位に呼吸器疾患(重度)が挙げられており,在宅における呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を浸透させていく事は急務である.本症例は難治性気管支喘息と診断された50歳代女性で,20年間,喘息発作等により入退院を頻回に繰り返していた.訪問診療が開始された後も頻回な往診が必要であり,訪問リハも導入された.リスク管理,運動負荷量の判断のために,フィジカル・アセスメント,ピークフローメーター,喘息日誌を活用,導入した.その結果,リハ中やリハ後の急性増悪や再入院がなく基本動作・ADL能力の向上や身体活動量の拡大がみられた.

  • 垣内 優芳, 加藤 博史, 岸本 和昌, 田中 利明, 桜井 稔泰
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 2 号 p. 350-353
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
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    早期離床に伴う端座位時の挿管・気管チューブのカフ圧変動は明らかでない.離床時における小型かつ軽量の自動カフ圧コントローラの使用有無によるカフ圧変動差を1症例で検討した.症例は肺炎,急性心不全により人工呼吸器管理が必要であった68歳男性.カフ圧測定は同じ換気条件で第2~4病日に行った.測定姿勢はベッドアップ30,45,60度,端座位とした.ベッドアップ中では圧補正ありは25~30cmH2Oで推移,圧補正なしは30cmH2O前後に上昇した.端座位では圧補正ありは圧力最下点の中央値24.8cmH2O,最小値20.3cmH2O,圧補正なしは中央値21.6cmH2O,最小値18.0cmH2Oであった.端座位時のカフ圧は瞬間的に低下する可能性があり,自動カフ圧コントローラの使用はベッドアップや端座位時のカフ圧変動が少なく,小型かつ軽量のため早期離床の妨げにならずにVAPリスクを軽減できる可能性が示唆された.

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