日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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ワークショップ
茨城東病院感染対策チームにおける結核対策の取り組みと課題
~感染管理認定看護師の立場から~
佐藤 利香
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2020 年 29 巻 2 号 p. 237

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医療施設における感染対策は,手指衛生をはじめとする標準予防策を適切に実施することが最も有効な対策である.抗酸菌症においても例外ではなく,特に人から人へ広範囲に感染伝播が起こる結核は,標準予防策に加え空気感染対策を確実に実施することが重要である.当院は,結核治療の専門病院であり結核曝露のリスクが高い.職員及び患者が「結核にかからない,うつさない」ためには,施設の管理体制,感染予防対策,職員の健康管理を感染対策チームが主導していく必要がある.本セッションでは,当院における具体的な取り組みを述べたい.まず,施設の管理体制では,組織体制作りや患者発生時の報告体制の整備,マニュアルの作成を行っている.これらは運用後に効果的に機能しているか,点検評価をすることが大切である.次に感染予防対策では,個人防護具(N95マスク)の適正使用とその教育,結核と空気感染対策の理解を深める全職員対象の研修会や部署学習会を実施している.特にN95マスクの着用はトレーニングが重要であり,フィットテストを実施する必要がある.最後に職員の健康管理では,インターフェロンγ遊離試験(IGRA)の実施,定期健康診断での胸部X線検査の受診徹底,個人の健康管理を指導している.IGRAは,採用時(雇入れ時)と曝露時に実施しているが,濃厚に結核患者と接触する部門の職員には定期的にIGRAを行い,フォローアップするのが望ましいと考える.結核の治療は専門病院が行うが,急性期の病院から介護福祉施設に至るまで結核発生という事態に関係のない施設はない.結核はひとりの発症者からの接触者が多いため,発症者が出現した際に迅速に行動できる体制作りと日頃からの職員教育が大切であると感じている.当院の取り組みと課題から,感染対策チームが推進すべき結核の感染対策について考える機会としたい.

著者の COI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

 
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