2022 年 31 巻 1 号 p. 89-92
特発性肺線維症(IPF)の治療ガイドラインやレビューでは,慢性安定期のIPF患者に呼吸リハビリテーション(PRP)を行うことを推奨している.IPFを含めた間質性肺疾患に対するPRPの効果をPros&Consのシンポジウムにおいて議論した.Pros&Consの議論するテーマを3つのquestionを中心に,Prosの立場で,Q1.ILDとIPFの呼吸リハビリテーションの効果は十分か?Q2.呼吸リハビリテーションの内容はCOPDと同様で良いのか?Q3.長期効果は得られるか?について肯定的でポジティブなエビデンスを紹介した.
2017年に発表された本邦の特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis: IPF)の治療ガイドライン2017では,慢性安定期のIPF患者に呼吸リハビリテーションプログラム(Pulmonary rehabilitation program: PRP)を行うことを推奨している1).これは,運動療法を中心としたPRPによりIPF患者の運動耐容能や呼吸困難,健康関連QOLが改善すると多数報告2,3,4,5,6,7,8)され,エビデンスが蓄積された結果である.Hollandらの報告5)では,間質性肺疾患(interstitial lung diseases: ILD)患者に対するPRPの効果を阻害する因子について検討され,ILD患者の中でもIPF患者の場合は効果が乏しいと報告された.そのためIPFを含めたILD患者に対して,PRPは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と同様な内容で十分な効果が得られるのか,また短期効果や長期効果は同様に得られるのか,などILDとIPFに対するPRPは一定の知見は得られていない.そこで,間質性肺疾患に対するPRPの効果を3つのquestionに絞って展開していく.QuestionはQ1.ILDとIPFの呼吸リハビリテーションの効果は十分か?Q2.呼吸リハビリテーションの内容はCOPDと同様で良いのか?Q3.長期効果は得られるか?である.間質性肺疾患に対する呼吸リハビリテーションのPros&Consのシンポジウムにおいて,これらのQuestion内容をProsの立場から論述していく.
2014年に報告されたCochrane reviewでは,IPFを含めたILD患者に対する呼吸リハビリテーションをレビューした7).2013年までのランダム化比較試験(randomized controlled trial: RCT)で検討された論文を中心に主に8-12週間の運動療法中心のプログラムの効果を検討し,運動耐容能と呼吸困難,健康関連QOLの改善に対してポジティブな効果を得ている7).そのレビュー7)では6MWDの改善は168例5論文の検討で,Moderateのエビデンスのグレードを,peak

IPF患者の運動療法の効果を検討した論文の6分間歩行距離の改善量
MCID: Minimal clinical important difference; Δ6MWD: Pre- to postdifference of 6-min walking distance. ▲ Randomized controlled trials with mean difference of improvement between the exercise and the control groups. ● Retrospective study. ■ Prospective noncontrolled study. 文献9より引用
本邦のデータでは,2008年にNishiyamaらが28例のIPF患者に対して10週間のPRPをRCTにより効果を検討した2).介入群であるIPF患者13例に6MWDとSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)の改善を認め,本邦のIPF患者において初めてRCTでPRPのポジティブな効果を証明した.それ以降にも本邦のデータでエビデンスがいくつか報告されている.Kozuらは,8週間のPRPをIPF患者65例に介入した結果,MRCが軽度の方は運動耐容能や呼吸困難の改善が大きいとしている4).我々は10週間のPRPをIPF患者24例に実施し10),コントロール群24例に対して運動耐容能の各指標や骨格筋機能の改善を認め,運動持続時間の改善が非常に大きいことを示した(図2).我々はさらに追跡調査11)により,IPF患者22例の運動耐容能の他にbaseline dyspnea index(BDI)による呼吸困難,SGRQによる健康関連QOLの改善を認めた.宮本らは,6MWDが平均 247 mと運動耐容能が低いILD患者54例に対して入院でのPRPを実施し,運動耐容能と呼吸困難,ADLの改善を認めたと報告している12).宮本らの報告12)では,入院での手厚い内容のPRPを実施することで運動耐容能が低いILD患者においても,運動耐容能とADLの改善が十分に得られている.

IPF患者に対する10週間前後の5種類の運動耐容能指標の指標変化
PR group:呼吸リハビリテーション介入,Contorol:介入無しの観察群,文献10より引用
いくつかのレビューと本邦の報告を踏まえて,IPF患者やILD患者に対するPRPは,12週間の介入では,運動耐容能や呼吸困難,健康関連QOLを改善させるエビデンスは十分あると考えられる.
PRPの運動療法の内容は持久力トレーニング,骨格筋トレーニング,呼吸筋トレーニング,呼吸練習などが挙げられる8,13).我々は上記の内容を含めたCOPDと同様なPRPをIPF患者に実施し,良好な結果が得られた11).IPF患者22例とCOPD患者27例に対して,10週間週2回のPRPを実施し,IPF患者の運動耐容能や骨格筋力,呼吸困難,健康関連QOLがCOPD患者と同様な改善を認めた.表1に示すようにIPF患者とCOPD患者のPRP後のEndurance timeや6MWD,換気性作業閾値などの各指標の改善量やEffect sizeが同等な値であった.さらに,呼吸困難であるBDIや健康関連QOLであるSGRQもCOPD患者と同等な改善量とEffect sizeであった.IPF患者に対してCOPD患者と同様なPRPの内容で十分な効果が得られた.宮本らも入院でのPRPでCOPD患者と同様なプログラムでILD患者54例に対して,持久力や骨格筋のトレーニング,ADLトレーニング,コンディショニングを実施している12).COPD患者と効果を比較してはいないが,6MWDや呼吸困難,ADLの改善を認めており,COPD患者と同様な入院プログラムで効果を得ている.また,Kozuらは,8週間のPRPをCOPD患者とIPF患者に同様な内容で実施し,効果の違いを検討している4).IPF患者では運動耐容能や筋力に改善を認めたが,COPD患者より改善量は少なかったとしている.彼らの報告のPRP内容は,持久力トレーニングと骨格筋トレーニングが中心であり,呼吸筋トレーニングなどは実施されていない.我々のPRPでは呼吸筋トレーニングも実施しており,効果はIPF患者とCOPD患者ともに同様な効果を得ている.HanadaらはIPFのPRPに呼吸筋トレーニングの上乗せ効果を検討しており,その重要性を述べている14).
| IPF group (n=22) | COPD group (n=27) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Baseline | 10-weeks | change | effect size | Baseline | 10-weeks | change | effect size | |
| 6MWD (m) | 476.5±93.6 | 503.5±100.3‡ | 26.9±28.0 | 0.29 | 499.4±105.3 | 526.9±96.9‡ | 27.4±30.3 | 0.26 |
| ISWD (m) | 359.1±120.7 | 388.6±141.5‡ | 29.5±15.5 | 0.24 | 390.7±113.6 | 437.6±128.7‡ | 46.9±47.7 | 0.41 |
| peak | 11.0±3.2 | 11.6±3.3 | 0.6±1.8 | 0.19 | 13.1±2.7 | 13.4±2.9 | 0.3±1.5 | 0.11 |
| peak WR (w) | 61.8±25.3 | 67.2±26.8‡ | 5.4±9.1 | 0.21 | 60.2±17.8 | 65.4±19.5‡ | 5.2±7.3 | 0.29 |
| AT (ml/kg/min) | 8.1±2.0# | 9.9±2.5‡ | 1.7±1.2 | 0.85 | 9.7±1.7 | 11.4±2.2‡ | 1.9±1.8 | 1.12 |
| Endurance time (s) | 342.9±195.0 | 847.9±637.6‡ | 505.0±579.3 | 2.59 | 424.6±267.7 | 1020.5±545.0‡ | 595.0±482.0 | 2.22 |
| Grip power (kg) | 26.8±9.4 | 29.1±10.2‡ | 2.2±3.4 | 0.23 | 32.9±7.3 | 34.2±7.6‡ | 1.2±2.3 | 0.16 |
| Quadriceps force (Nm) | 82.4±31.5 | 90.3±34.1‡ | 7.9±9.2 | 0.25 | 91.0±24.8 | 98.9±22.5‡ | 7.9±10.9 | 0.32 |
| MEP (cmH2O) | 138.0±53.9# | 152.0±55.6‡ | 14.1±21.9 | 0.26 | 191.1±48.7 | 192.1±46.1‡ | 13.5±26.1 | 0.28 |
| MIP (cmH2O) | 106.6±33.9 | 122.0±40.7‡ | 15.4±22.4 | 0.45 | 100.7±33.0 | 120.6±31.3‡ | 19.9±24.6 | 0.60 |
| BDI total (score) | 6.8±2.0 | 7.3±2.0‡ | 0.5±0.9 | 0.25 | 6.9±1.8 | 7.6±1.8‡ | 0.7±0.9 | 0.39 |
| SGRQ total (score) | 49.0±17.0 | 45.2±17.7‡ | -3.8±7.4 | -0.22 | 43.3±12.6 | 39.3±10.9‡ | -4.0±7.8 | -0.32 |
Data are presented as mean±SD. #: p<0.05, compared with COPD group at baseline. ‡: p<0.05, compared with Baseline, 6MWD, six minutes walking distance; ISWD, incremental shuttle walking distance; peak WR, peak work rate; peak
IPF患者のPRPの内容は,COPD患者でエビデンスが得られている持久力トレーニング,骨格筋トレーニング,呼吸筋トレーニング,呼吸練習などを実施することで十分な効果が得られる.
2014年にCochrane reviewの報告7),2015年にVainshelboimがエキスパートレビュー9),2018年にChengらがメタ分析15)などを行い,ILD患者とIPF患者のPRPの短期効果と長期効果を検討している.これらのレビューではPRPの短期効果は得られるが,長期効果を支持するエビデンスは無いとしている.2008年にHollandらが,ILD患者54例(IPF患者34例)に対して8週間のPRPを実施し,8週間では効果が得られたが,6か月間では運動耐容能などの効果がベースラインに戻ると報告している3).これまでの報告ではILD患者とIPF患者に対して,8-12週間のPRPの介入では,6か月間まで効果は持続しないと考えられた.しかし,2018年にPerez-BogerdらがILD患者60例に6か月間のPRPの介入を行い,開始から1年間までの効果は持続したと報告している16).彼らのPRPは最初の3か月間は3回/週,次の3か月間は2回/週で実施しており,6か月間はしっかりとPRPを監視下で実施することで,運動耐容能や健康関連QOLの改善は維持できたとしている.恐らく,ILD患者とIPF患者はCOPD患者で実施されている8-12週間の短期間の介入では,長期効果を得られるのには不十分であり,1年間の効果が得られる為には,維持プログラムを含めた6か月間のPRPが必要と考えられた.多くのIPF患者のPRPの報告をしているVainshelboimは,PRPの中で,改善を目的としたプログラム(Improvement phase)は6週間から6か月間は必要であると述べ,6か月以降の維持プログラムも必要であると結論付けている17).
長期効果は得られるか?には,6か月間のPRPを行えばIPF患者の運動耐容能や健康関連QOLの改善が期待できると考えられる.
間質性肺疾患に対するPRPの効果をPros & Consのシンポジウムにおいて,3つのquestionを中心に,Prosの立場から論述した.Prosの立場で,Q1.ILDとIPFの呼吸リハビリテーションの効果は十分か?Q2.呼吸リハビリテーションの内容はCOPDと同様で良いのか?Q3.長期効果は得られるか?について肯定的でポジティブなエビデンスを紹介した.
有薗信一;研究費(特定非営利活動法人 中日本呼吸器臨床研究機構)