日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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31 巻, 1 号
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学会賞受賞報告
  • 南方 良章
    原稿種別: 学会賞受賞報告
    2022 年 31 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)の身体活動性維持・向上は,重要な管理目標のひとつである.我々は,日本人COPD患者の身体活動性に対する3軸加速度計を用いた評価体制の構築をおこなってきた.海外使用機種の日本人への適用是非の検証,国内販売機種の日本人COPD患者に対する妥当性検証を行い,本邦におけるCOPD活動性測定体制が確立できた.

    日本人COPD患者では,歩数の低下,強度別活動時間の短縮がみられ,呼吸機能,呼吸困難感,運動耐容能,就業状態などが身体活動性に関連することが確認できた.気管支拡張薬の追加投与あるいは単剤に比べた配合剤投与は,身体活動時間を有意に延長させ,近年注目されているセデンタリー時間も有意に短縮することが確認できた.

    今後とも引き続き,身体活動時間の延長とセデンタリー時間の短縮を目指し,臨床研究を継続してまいりたいと考えている.

学会奨励賞受賞報告
  • ―メタ解析を用いた検討―
    今村 創
    原稿種別: 学会奨励賞受賞報告
    2022 年 31 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    COPD患者における呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の効果を維持するために継続したフォローアップ(メンテナンス)は重要とされているが,その長期効果に関しては明らかになっていない.我々は,メンテナンスを含む呼吸リハがCOPD患者の運動耐容能,健康関連Quality of Life(HRQOL)に及ぼす影響を,メタ解析を用いて検討した.メンテナンスの有無で呼吸リハの長期効果を検討している無作為比較試験を検索し,7本の論文が採用され,492名のCOPD患者が取り込まれた.介入群はメンテナンスを含む呼吸リハを実施している患者,対照群は呼吸リハの有無に関わらずメンテナンスを実施していない患者とした.メンテナンスを含む呼吸リハにより,運動耐容能は有意な長期効果を認めた.しかしながら,HRQOLについては長期効果が確認されなかった.運動耐容能とHRQOLの改善効果を長期的に維持するためには,メンテナンスの内容や頻度を再考する必要性が示唆された.

  • 白石 匡
    原稿種別: 学会奨励賞受賞報告
    2022 年 31 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    近年,非侵襲的に横隔膜機能を評価する方法として,超音波診断装置(ultrasonography: US)を用いた評価の有用性が報告されている.しかし,USを用いてCOPD患者の横隔膜移動距離(maximum level of diaphragm excursion; DEmax)や胸鎖乳突筋(Sternocleidomastoid muscle: SCM)と運動耐容能の関係については明らかになっていない.そこで,COPD患者のDEmax,SCM評価の有用性の検討を行なった.結果,COPD群のDEmaxは,コントロール群よりも有意に低かった(p<0.01).COPD群のDEmaxは運動耐容能と相関があり(p<0.01),動的過膨張の指標とされているΔIC(最大吸気量の変化量)と相関(p<0.01)を認めた.SCM筋厚はコントロール群に比して,COPD群で低値であった(p<0.01).COPD群では運動耐容能と呼気時のSCM筋厚(p<0.01),呼気~最大吸気時のSCM筋厚変化率(p<0.01)と相関を認めた.動的肺過膨張は呼気時のSCM筋厚(p<0.01),呼気~最大吸気時のSCM筋厚変化率(p<0.01)とも相関を認めた.以上のように,我々はUSを使用した呼吸筋の評価が有用であることを明らかにした.

  • ―早期からの栄養療法と呼吸リハビリテーションの重要性―
    村川 勇一
    原稿種別: 学会奨励賞受賞報告
    2022 年 31 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    近年,本邦において急速に高齢化が進行しており,高齢肺炎患者も増加している.高齢者における肺炎の多くは誤嚥性肺炎であり,誤嚥性肺炎は死亡率や身体機能低下と関連し,在宅復帰や機能回復に難渋することが諸家の報告で示されている.地域包括ケアシステムの導入により,高齢肺炎患者の入院に伴う日常生活動作(activities of daily living,ADL)能力の低下を抑制し,如何に高い水準に保つかは重要な課題である.我々は,高齢肺炎患者の退院時ADL能力にどのような因子が影響するのかに着目し,検討してきた.

    本研究の結果,高齢肺炎患者の退院時ADL能力には経口・経腸栄養開始日数や歩行開始日数,呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)開始時のBarthel indexが関連することが明らかとなり,入院後早期から栄養療法や離床を含めた呼吸リハによる非薬物療法を積極的に推進していく必要性が示唆された.

教育講演
  • ―採択率を上げるこつ―
    東本 有司
    原稿種別: 教育講演
    2022 年 31 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌(以下呼吸ケアリハ誌)に採択されやすい論文の書き方について解説する.呼吸ケアリハ誌はオープンアクセスジャーナルで,多職種が関わっているため,他の学会誌に比較しても高いアクセス数を誇っている.したがって,一旦論文が採択され,掲載されればインパクトが高くなるものと考えられる.本学会の学会員であればどのような医療職種であっても投稿可能である.しかし,残念ながら,ここ数年は,投稿数が減少傾向にある.原著論文の採択率は昨年1年間でみると44%と,和文誌にしては,やや厳しいと思われるが,編集委員会の方針としては,論文の主旨がはっきりしないものや,倫理的に問題がある場合を除いて,積極的に採択することとしている.本学会誌に採択されるための“こつ”を伝授する.

  • 柴田 重信
    原稿種別: 教育講演
    2022 年 31 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    まず呼吸ケアリハビリテーションと体内時計の関連性があるか否かについて考えてみよう.時計遺伝子は呼吸器にも発現していることから,呼吸機能に日内リズムが見られることになる.実際,安静時の呼吸数には日内リズムが存在し,気管支喘息の発症は明け方に多いという日内リズムがあり,時差ボケの状態では喘息発作が悪化することが知られている.したがって,健全な生活リズムの維持の下で呼吸ケアリハビリテーションを行うことが重要であろう.ところで体内時計は視交叉上核に主時計があり,それ以外の脳には脳時計が,末梢臓器である肺,肝臓,骨格筋・骨には末梢時計がある.体内時計と運動(時間運動学)や体内時計と食・栄養(時間栄養学)の関係について知り,これらの学問が作業療法などを含む呼吸ケアリハビリテーションの実施に如何に役立てるかについて考えることにする.以下に時間栄養や時間運動に関する総説1,2,3,4,5)や著書6)を挙げておく.

特別シンポジウム
  • 井上 順一朗, 酒井 良忠
    原稿種別: 特別シンポジウム
    2022 年 31 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    がん患者では,がんそのものやがん治療に伴う有害事象や合併症により,体力低下や身体的・精神的な機能障害が生じ,日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下してしまうリスクが高い.そのため,がん種や病巣部位,進行度を考慮したリハビリテーション治療や,がん治療後に生じることが予測される合併症や機能障害を治療開始前から予防するリハビリテーション治療を行うことが重要となる.また,がんの進行に伴い機能障害の増悪や二次障害が生じるため,それらへの適切な対応も必要となる.近年,がん領域のリハビリテーション医療においては,身体的・精神的な機能障害の改善だけでなく自宅療養や社会復帰支援,治療と就労の両立支援などの社会的な側面をも考慮したがん患者のライフステージに応じたサポートを行うことが求められている.これらのリハビリテーション治療やケアを行う際には医学的エビデンスに基づいたアプローチが必要である.

特別ワークショップ
  • 高橋 順美, 佐藤 晋, 平井 豊博, 陳 和夫
    原稿種別: 特別ワークショップ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    高度な呼吸管理・リハビリテーション技術の必要性が高まった現在,職場での呼吸器関連資格がどのように評価されているか把握する必要があると考えられた.第29回本学会学術集会参加者2,498人を対象に,3学会合同呼吸療法認定士(呼吸療法認定士)・呼吸ケア指導士資格・認定看護師の職場での評価状況を自記式アンケートにて調査した.有効回答は1,141人(45.7%)で,呼吸療法認定士の資格取得者は全体の44.0%(502人),理学療法士の64.7%,看護師の50.4%,臨床工学技士の64.0%であった.初級呼吸ケア指導士の取得者は全体の14.7%(168人),医師の32.7%,理学療法士の17.4%,看護師の7.1%,臨床工学技士の20.0%で,上級呼吸ケア指導士は2人であった.呼吸療法認定士の37.3%,呼吸ケア指導士の11.8%がそれぞれ資格保有を職場配属決定に際し評価されていた.取得した資格を職場に活かすことが可能な制度・体制を作る継続性をもった努力が資格認定側にも必要である.

シンポジウム
  • 井上 純人
    原稿種別: シンポジウム
    2022 年 31 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主症状である咳嗽や喀痰,息切れといった症状が非特異的であり,かつ緩徐な進行を示すことから,症状が加齢や疲労,感冒症状の遷延と誤認されやすい.さらに一般社会における認知度が低いため,鑑別診断として想起されにくいことから早期に診断されていない患者が多いことが推定されている.しかしCOPDが適切な管理をされずにいると,呼吸機能の低下,身体活動性の低下,さらには増悪による呼吸不全や全身性の合併症の併発といった様々な問題を生じることとなる.急速な高齢化が進む我が国において,COPDを早期に発見し,適切な治療につなげていくかは重要であり,更には呼吸機能だけではなく全身性の併存症にも着目して治療を検討していくことが求められる.COPD診断と治療のためのガイドラインの管理目標にある,運動耐容能と身体活動性の向上および維持を達成することは,高齢者が元気で長生きしていくために重要な要素である.

  • 川山 智隆, 西山 守, 木下 隆
    原稿種別: シンポジウム
    2022 年 31 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    COPDの治療薬は吸入薬が中心的な役割を演じる.吸入薬は,内服薬あるいは貼付薬と異なり,吸入ディバイスを必要とする.したがって服薬にはアドヒアランスと吸入手技の2点において指導あるいは教育が必要になる.COPDは加齢が疾患進行の因子であるため,自ずと高齢者の方がより重篤になり,積極的な治療介入の機会が増加する.さらに高齢化によって認知機能低下に伴うリテラシー不足や操作ミスの増大あるいは回数増加は避けられない.高齢者は若年者に比較して吸入アドヒアランスは高いとされる一方で吸入手技の誤操作率も高いとされる.吸入指導や教育が困難な高齢患者に遭遇することも少なくない中で,超高齢化が深刻化する日本で吸入薬を中心としたCOPD治療をいつまで継続できるかは今後の残された課題と言えよう.

  • 玉木 彰, 沖 侑大郎
    原稿種別: シンポジウム
    2022 年 31 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    COPD患者に対する呼吸リハビリテーションは,入院期間の短縮や退院後の外来リハビリテーションを行っている施設が少ないことから,在宅における継続的な実施が重要な役割を担っている.しかし在宅では病院のリハビリテーション施設とは設備や環境が異なることや,フレイルやサルコペニアを合併している高齢COPD患者が多い本邦の現状を考慮すると,在宅呼吸リハビリテーションの効果を出すためには施設における監視型リハビリテーションとは異なった工夫が必要となる.

  • 山本 佳史, 吉川 雅則, 室 繁郎
    原稿種別: シンポジウム
    2022 年 31 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では,高齢者ほどサルコペニア併存頻度が高く,COPDに合併したサルコペニアに対する栄養治療は重要である.

    COPDに合併したサルコペニアに対する栄養治療は確立されていないが、①蛋白合成促進を促す,ア)必須アミノ酸の投与 イ)β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(3-Hydroxy 3-Methylbutyrate: HMB)の投与 ② 蛋白分解抑制を促す,ア)ホエイ蛋白の投与 イ)ω-3脂肪酸の投与 ③蛋白合成促進と蛋白分解抑制を促す,ア)グレリン投与のトライアルなどが既存の報告から,期待される治療と考える.

    COPDに合併したサルコペニアでは,筋肉量の減少に加えて骨量低下の合併や,嚥下障害の併発による栄養摂取困難にも留意する必要がある.

    COPDに合併したサルコペニアに対する栄養治療のエビデンスは少なく,予後・QOLの改善のため今後の更なる研究が望まれる.

ワークショップ
  • 江田 清一郎, 梨木 恵実子
    原稿種別: ワークショップ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 64-65
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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  • 加藤 傑
    原稿種別: ワークショップ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患においては吸入療法が中心となっているが,内服薬とは異なり,薬物が呼吸器系へと送達されるためには適切な操作を必要とする.しかし,吸入薬の種類は多く,それぞれ使用方法が異なるため,高齢者ではとくに誤使用やアドヒアランス低下が報告されている.高齢者の指導においては,認知症をはじめとする併存疾患の存在や筋力,視力,聴力の低下などの特徴を理解しながら吸入指導をすることが重要であるが,薬局内の関わりのみでは指導の間隔が空いてしまい,誤った手技に陥り治療効果が低減してしまうケースがある.そのため,電話,来局,訪問,可能であればコミュニケーションツール等を利用し服薬状況を継続的にフォローする体制を構築することが必要である.

  • 田中 真理子, 須賀 達夫, 山口 真理, 青木 康弘
    原稿種別: ワークショップ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    慢性呼吸器疾患患者には高齢者が多く,原疾患の悪化に加齢による身体機能低下が加わり徐々に活動性が低下する.医療依存度が高くなるにもかかわらず在宅で過ごす時間が増えるため,慢性呼吸器疾患患者がその人らしく過ごすためには在宅での呼吸ケア・リハビリテーションの継続が重要となってくる.訪問リハビリテーションは患者の生活を把握し個別に対応することが可能であるため,進行性に身体機能が低下する高齢の慢性呼吸器疾患患者にこそ必要である.しかし実際に訪問リハビリテーションに関わってみると,在宅での呼吸リハビリテーションは十分に普及しているとはいえない.患者だけでなく多職種の医療介護従事者に対しても在宅での呼吸リハビリテーションの認知度を高め,関与する職種ごとに充分な知識や技術の底上げを行い,相互に連携をとることが重要である.

  • 梨木 恵実子, 山路 聡子, 中野 かおり
    原稿種別: ワークショップ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー HTML

    訪問看護を利用する慢性呼吸器疾患の療養者は,高齢者が多い.さらに数年~10年以上の期間で訪問看護を利用する療養者もおり,そのプロセスの中で療養者は疾患進行以外にも加齢に伴う心身機能や在宅環境に変化が生じている.例えば,認知機能の低下,家族の介護負担,自身の状態変化を他者に発信できない自己管理能力の衰えなどである.訪問看護では,このような療養者の多様な変化に伴走しながら,療養者が望む在宅生活の継続を支援している.そのためには,多施設多職種と協働する必要があり,さらには必ずおとずれる終末期及び最期に関する支援も欠かせない.今回は,訪問看護における療養者への実際の支援を紹介する.

Pros and Cons
  • 田平 一行
    原稿種別: Pros and Cons
    2022 年 31 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    運動(療法)は,身体に適度な負荷を与えることで身体機能の維持・向上を図るもので,主に骨格筋や心循環機能を向上させ,運動耐容能を改善する.アスリートは運動パフォーマンスの向上,一般健常者は生活習慣病の予防や健康増進が主な目的となり,その効果と方法については確立されている.呼吸器疾患患者でも同様に運動耐容能の向上や息切れの軽減,ADL,QOL等の改善などが得られることは多くの文献で証明されている.呼吸器疾患では,低酸素血症や換気不全,低栄養状態など特有のリスクが存在するが,運動療法は身体に負荷をかけるため,健常者でもリスク管理は必須である.従って,疾患特有のリスクを管理した上での運動療法の実施は,十分にエビデンスのある有効な治療法であり,強く推奨すべきである.

  • 玉木 彰, 元山 美緒, 佐藤 晋
    原稿種別: Pros and Cons
    2022 年 31 巻 1 号 p. 86-88
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    呼吸リハビリテーションの中心は運動療法であり,その効果は多くの研究によって明らかにされており,COPD診断と治療のためのガイドラインにおいても非薬物療法の1つとして確立されている.しかし運動療法の実施にあたっては,適切な運動強度の設定,介入の時期と方法の吟味,適切な対象者の選定などが重要であり,実施前にこれらについて十分に検討しなければ,運動療法の効果が認められないばかりか,かえって逆効果(有害)となる可能性も否定はできない.したがって運動療法は有効な治療法であるが,慎重に実施すべきである.

  • 有薗 信一, 俵 祐一, 金原 一宏
    原稿種別: Pros and Cons
    2022 年 31 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー HTML

    特発性肺線維症(IPF)の治療ガイドラインやレビューでは,慢性安定期のIPF患者に呼吸リハビリテーション(PRP)を行うことを推奨している.IPFを含めた間質性肺疾患に対するPRPの効果をPros&Consのシンポジウムにおいて議論した.Pros&Consの議論するテーマを3つのquestionを中心に,Prosの立場で,Q1.ILDとIPFの呼吸リハビリテーションの効果は十分か?Q2.呼吸リハビリテーションの内容はCOPDと同様で良いのか?Q3.長期効果は得られるか?について肯定的でポジティブなエビデンスを紹介した.

  • 花田 匡利, 及川 真人, 名倉 弘樹, 竹内 里奈, 石松 祐二, 城戸 貴志, 石本 裕士, 坂本 憲穂, 迎 寛, 神津 玲
    原稿種別: Pros and Cons
    2022 年 31 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー HTML

    近年,間質性肺疾患に対する呼吸リハビリテーションに関する報告が集積され,診療ガイドラインにおいても弱いながら推奨されるレベルに位置付けられている.しかし,不均質な病態かつ,難治性疾患という本疾患の基本的特徴は呼吸リハビリテーションに様々な影響を及ぼし,COPDを対象として確立されたエビデンスの高いプログラムを適用できないことも少なくない.そのため今後,従来の呼吸リハビリテーションとは異なる疾患特異的な方法論の確立,さらには維持プログラムのあり方が重要な課題となる.

  • 宮崎 慎二郎
    原稿種別: Pros and Cons
    2022 年 31 巻 1 号 p. 99-101
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    COPD患者において身体活動性の低下は,生活の質の低下,入院率および死亡率の増加を招く.身体活動性と様々な因子の関連や改善に向けた取り組みが報告されているが,結論から言えば,現在のところ身体活動性に強く影響する因子は明らかになっておらず,運動療法,薬物療法,カウンセリングなどを含め身体活動性を改善させるための手段についても一定の見解は得られていない.さらに,身体活動性が低下している原因を評価する方法も確立されておらず,介入をより困難にさせている.身体活動性に対しては,多職種による視点とアプローチが必要であり,まさに患者を中心としたチーム医療による呼吸ケア・リハビリテーションによって取り組んでいくべき課題といえる.

共同企画
  • 倉橋 清泰
    原稿種別: 共同企画
    2022 年 31 巻 1 号 p. 102-104
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対して一回換気量を制限することが推奨されているが,同時に呼気終末陽圧(PEEP)が必要であることも知られている.重症ARDSでは高いPEEPが必要であると考えられ複数のRCTが行われたが,高いPEEPによる有意な死亡率の改善効果はみられなかった.一方で,高いPEEPと肺リクルート手技を行うと気胸や圧損傷の頻度が増し,死亡率を上げるという臨床研究も出された.CT画像やElectrical impedance tomography(EIT)で確認すると,高いPEEPにより新たに過膨張する領域が大きく,一方で再開通される領域はさほど大きくなかった.

    以上のことから,重症ARDS患者においては比較的高いPEEPが必要ではあるが,PEEPによる負の側面もあることから一律に高いPEEPを用いるべきではない.

総説
  • 山口 卓巳, 沖 侑大郎, 山本 暁生, 酒井 英樹, 三栖 翔吾, 岩田 優助, 金子 正博, 澤田 格, 小野 くみ子, 石川 朗
    原稿種別: 総説
    2022 年 31 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    これまで慢性呼吸器疾患(CRD)患者のADL評価は重要とされ,様々な疾患特異的尺度が開発されてきた.国内ではNagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL),Pulmonary emphysema ADL(P-ADL)の使用が主流である.近年,Barthel Indexの呼吸器版であるBarthel Index dyspnea(BI-d)が国外で開発された.我々はその日本語版開発を実施した.その過程および内容を紹介する.BI-dの翻訳手順は尺度翻訳の基本指針に準じて実施し,パイロットテストはCRD患者10名に対し行い,その回答時間は平均196.7秒(SD=88.0秒)であった.その後,日本語版BI-dは原著者から正式に承諾を受け,日本語版BI-dの信頼性・妥当性の検証を行った.結果,日本語版BI-dの信頼性・妥当性が立証された.

原著
  • 瀬川 凌介, 及川 真人, 花田 匡利, 名倉 弘樹, 新貝 和也, 佐藤 俊太朗, 澤井 照光, 永安 武, 神津 玲
    原稿種別: 原著
    2022 年 31 巻 1 号 p. 110-116
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】肺癌の外科治療では,術後に遷延する呼吸不全によって酸素療法の継続を余儀なくされる患者も存在する.本研究は,退院時に酸素療法を必要とした患者の割合と,その臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.

    【対象と方法】本研究は単施設の後方視観察研究であり,2009年から2018年に長崎大学病院にて肺切除術を施行された肺癌患者を対象とした.診療録より,対象者背景,術前の呼吸機能および身体機能,手術関連項目,術後経過,退(転)院時転帰を調査した.

    【結果】解析対象者は1,256件で,そのうち46件(3.7%)が酸素療法継続となった.酸素療法継続に対して重要度が高い評価項目を推定するランダムフォレスト解析において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下が抽出された.

    【結語】肺切除術後患者において,術前の肺拡散能や6分間歩行試験中の酸素飽和度低下は,術後の酸素療法の必要性を予測する指標となる可能性が示唆された.

  • 倉田 和範, 沖 圭祐, 馬井 孝徳, 継田 晃平, 松田 雄介, 永田 幸生
    原稿種別: 原著
    2022 年 31 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    【背景と目的】COVID-19患者を対象に,隔離解除時および退院後の酸素療法必要性の有無を調査することを本研究の目的とした.

    【対象と方法】2020年12月~2021年6月にCOVID-19陽性となり,当院専用病棟に入院した中等症IIおよび重症患者98名を調査対象とした.隔離解除時の酸素療法有無と,発症から酸素療法終了までの日数を重症度別に集計した.

    【結果】平均年齢68.3歳,男性が66名(67.3%),隔離解除時に50名(51.0%)の患者が酸素療法を必要としていた.20日目の時点で酸素療法を必要としていたのは,中等症IIが20%であったのに対し重症は60%であった.しかし,100日目には差を認めず,それぞれ10%弱が在宅酸素療法を含め酸素療法を必要としていた.

    【結語】COVID-19陽性患者のうち中等症IIは比較的早期から酸素療法を離脱できるが,重症は離脱までにより時間を要していた.しかし,発症から100日程度で重症度に関係なく多くの患者が酸素療法を離脱できることが分かった.

  • 佐藤 央基, 中村 孝人, 堀 竜次, 島路 香帆, 山口 卓巳, 山本 暁生, 石川 朗
    原稿種別: 原著
    2022 年 31 巻 1 号 p. 122-128
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    【目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の併存症に高次脳機能障害があり,前頭葉機能低下が指摘されているが,その患者特性は明らかになっていない.そこで本研究では,COPD患者の前頭葉機能と運動耐容能の関連について検討を行った.

    【方法】6分間歩行距離(以下6MWD)により,COPD患者を運動耐容能維持群と運動耐容能低下群の2群に分け,Mann-Whitney U検定で前頭葉機能検査(以下FAB)合計点を比較した.二次解析として重回帰分析とROC解析を行い,交絡因子の調整と前頭葉機能低下に対する6MWDのカットオフ値を算出した.

    【結果】FAB合計点は,運動耐容能低下群で有意に低値を示した(p=.009).また年齢と%FEV1を共変量に加えても,FAB合計点に対し,6MWDの有意な正の回帰係数が認められた(β=0.42, p=.028).加えてROC解析から6MWD:284mが前頭葉機能低下のカットオフ値として算出された.

    【結語】COPDにおいて運動耐容能低下は前頭葉機能低下と関連することが示唆された.

  • 杉谷 竜司, 有薗 信一, 白石 匡, 水澤 裕貴, 俵 祐一, 木村 保, 西山 理, 東本 有司, 東田 有智, 松本 久子
    原稿種別: 原著
    2022 年 31 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    【目的】本研究は,超音波画像診断装置(エコー)による胸鎖乳突筋(SCM)評価の信頼性および関連する指標を調査する.

    【方法】対象は,健常成人男性30名(31.6±7.5歳).背臥位での左側SCMの筋厚,筋輝度を評価した.鎖骨内側~側頭骨乳様突起の中点にて短軸像でのSCMを描出し,繰り返しの測定による信頼性と,枕の有無による差異を検証した.また体組成,吸気筋力との関連を調査した.

    【結果】Bland-Altman解析より,1回目・3回目での測定,枕の有無について,両者ともに信頼性は高く,系統誤差も認めなかった.筋厚は骨格筋量(r=0.453,p=0.012),除脂肪量(r=0.392,p=0.032)と正の相関関係,筋輝度は年齢との負の相関関係(r=0.467,p=0.009)を認めた.いずれの指標も,吸気筋力と相関を認めなかった.

    【考察】SCMのエコー評価は,信頼性が高く,臨床応用可能な指標といえる.

  • 村川 勇一, 南木 伸基, 宮崎 慎二郎, 大原 靖弘, 堀 竜馬, 名出 美紀, 金地 伸拓
    原稿種別: 原著
    2022 年 31 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
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    高齢者肺炎患者において入院中の体重減少と臨床的アウトカムの関連性は明らかにされていない.当院へ入院となった高齢者肺炎患者100名を対象に入院中の体重減少と日常生活動作(ADL)能力及び肺炎再入院の関連性を検討した.入院中の体重減少が10%以上の体重減少群では,Functional independence measure(FIM)効率・FIM effectivenessといったADL改善を示す指標が有意に低く,また肺炎再入院までの日数が有意に短かった.さらに,体重減少率とFIM効率・FIM effectivenessといったADL改善を示す指標には有意な負の相関関係を認めた.高齢者肺炎患者において入院中の体重変化を細かくモニタリングすること,また体重減少を抑制する為に薬物療法だけでなく栄養療法を含む呼吸リハビリテーションといった包括的治療戦略が重要である.

症例報告
研究報告
  • 阿部 由子, 福井 伸
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 31 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2022/12/26
    [早期公開] 公開日: 2022/04/22
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    慢性閉塞性肺疾患で呼吸リハビリテーションを処方され,吸入療法がすでに行われていた,または導入された患者に対して,吸入療法が適切に実施されているかを調査した.対象患者18例中7例の約4割に吸入エラーを確認した.そのうちの5例は指導・練習を繰り返し,また,多職種と連携した結果,吸入手技を習得するに至った.理学療法士は呼吸リハビリテーションにおいて,他の職種より患者とかかわる時間が長く,訓練・指導も繰り返し行い,経時的に患者を観察する.そのため個々の患者における障害の把握や病態の変化をいち早く発見でき,その患者の問題点が運動機能・認知機能的に解決可能か否かの判断ができる特性を持っている.理学療法士から呼吸リハビリテーションと吸入指導を受ける慢性閉塞性肺疾患患者は,吸入技術の習熟度が増すことによって吸入エラーが少なくなり,身体活動性も向上していくことが期待される.

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