2023 年 32 巻 1 号 p. 1-7
間質性肺疾患の治療に関しては,特発性間質性肺炎の中でも最も難治性で予後不良な特発性肺線維症(IPF)に対する治療の変遷を理解することが重要である.はじめてのIPF国際診療指針である2000年のガイドラインでは,経験的に行われてきたステロイドと免疫抑制剤の併用療法が暫定的に推奨されていたが,その後,その有効性は否定され,安定期にはむしろ有害であるとされ,2015年のガイドラインでは,「使用しないことを強く推奨」となった.代わりに2つの抗線維化薬(ピルフェニドン,ニンテダニブ)が推奨となり,呼吸機能の低下抑制効果から,IPFの予後改善が報告されている.さらに,IPF以外の間質性肺疾患の中にも,IPFと同様に進行性の線維化をきたすフェノタイプがあり,抗線維化薬の有効性が報告された.今後,細胞性/炎症性病態と線維化性病態に応じた治療戦略について,エビデンスの蓄積が望まれる.