日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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原著
当院における慢性閉塞性肺疾患患者の筋肉量低下関連因子の検討
野田 直孝 出水 みいる若松 謙太郎川崎 雅之
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2024 年 32 巻 2 号 p. 225-231

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要旨

【背景】慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における経時的な筋肉量低下は身体活動性低下や生命予後悪化に繋がる可能性がある.

【目的】COPD患者の筋肉量関連因子を解析し,筋肉量の経時的な変化を評価する.

【方法】当院に通院したCOPD患者の総筋肉量を登録時,6ヶ月後,12ヶ月後に体成分分析装置を用いて測定し,血液検査(アルブミン,中性脂肪,総コレステロール,クレアチンキナーゼ),COPD Assessment Test(CAT),Baseline Dyspnea Index(BDI),TDI(Transition Dyspnea Index),%1秒量,食事摂取量を評価した.

【結果】26例中,登録時の筋肉量低下は14例あり,増悪歴とBDIが関連していた.登録後に増悪があった症例は観察期間内で呼吸困難症状の悪化と経時的な筋肉量低下がみられたが,登録後に増悪がなかった症例は観察期間内で経時的に筋肉量が増加した.

【結論】COPD患者の観察開始時における筋肉量低下を予測する際に増悪歴とBDIが有用であり,増悪を抑制しながら自覚症状をコントロールすると経時的な筋肉量増加が期待される.

緒言

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は外来通院中の安定期であっても体重減少や筋肉量低下を来していることが稀ではない.体重は浮腫や飲食などの影響によって変動が大きく,やせが生じていても体重減少として捉えられない場合がある.一方,筋肉量は体重に比して簡便に測定できないものの,測定値の変動が少なく病態を評価する際に有用である.COPD患者における筋肉量低下は,身体活動性の低下や生命予後の悪化につながることが報告されており1,2,身体活動性が低下すると筋肉量は更に低下し,臨床経過は負のスパイラルを辿ってしまうことになる3,4.これまでに,呼吸機能障害と筋肉量低下との関連が報告されているが5,呼吸機能障害の程度が同等であっても疾患コントロールに個人差が生じることは稀ではなく,調査対象によっては呼吸機能検査だけではなく,症状や増悪歴なども筋肉量低下に寄与していると推察される.COPD患者の筋肉量低下に関連する因子を同定することは,筋肉量を測定することが望ましいCOPD患者を選択する際に参考になるため有意義である.また,COPD患者の筋肉量変化を経時的に観察することは,筋肉量低下に対する治療介入開始時期を判断する際や,治療介入内容を立案する際に参考となり得るが,筋肉量低下に影響し得る因子の有無によって筋肉量の変化にどのような差が生じるかを縦断的に観察した報告は少ない.そこで,検査・症状・増悪歴の中から筋肉量低下関連因子を同定し,筋肉量低下関連因子による経時的な筋肉量変化に対する影響を観察する目的にて,当院に通院しているCOPD患者を対象として筋肉量を測定し,臨床症状や検査結果と筋肉量低下との関連について解析を行った.また,観察期間内で出現したCOPD増悪の有無で経時的な筋肉量変化を比較検討したため報告する.

対象と方法

1. 対象

2018年12月から2021年12月までの期間で1ヶ月以上病状が安定して継続的に当院へ通院しているCOPD患者を対象とした.除外基準としてペースメーカーが挿入されている患者,COPD増悪などで1ヶ月以内に入院治療を行った患者とし,COPD増悪に関しては,主治医が抗菌薬あるいは全身性ステロイド薬の投与が必要であると判断した場合,あるいは入院の必要があると判断された呼吸器症状の悪化と定義した6.増悪歴のある症例の登録条件について,増悪が軽快してから長期経過後であると,病状が安定した状態で観察可能となる反面,頻回に増悪する症例の観察機会を失う可能性があり,既報の研究で増悪から1ヶ月以内は除外基準として設定されていたことも参考にして7,増悪が軽快して1ヶ月以上経過している場合は登録可能とした.

2. 方法

栄養状態,筋肉量,自覚症状に関して以下の項目を登録時,6ヶ月後,12ヶ月後に評価した.筋肉量については体成分分析装置(InBody S10®)を用いて測定した.体成分分析測定に際しては,食後3時間の条件で安静臥床の体位にて実施した.食事摂取量はbrief-type self-administered diet history questionnaire(BDHQ)を用いて聞き取りし,推定総エネルギー必要量に対する総エネルギー摂取量の割合を栄養充足率として定義した8

評価項目:①総筋肉量 ②%1秒量(%FEV1) ③血液検査(アルブミン,中性脂肪,総コレステロール,クレアチンキナーゼ) ④COPD Assessment Test(CAT),Baseline Dyspnea Index(BDI),Transition Dyspnea Index(TDI) ⑤栄養充足率

総筋肉量についてはInBody S10®にて算出される標準値および,既報の報告を基に90%未満を低下ありとした9,10.サルコペニアの診断はAsian Working Group for Sarcopenia 2019の診断基準(握力<28 kg(男性)<18 kg(女性),歩行速度<1.0 m/sec,骨格筋量指数(生体電気インピーダンス法):<7.0 kg/m2(男性),<5.7 kg/m2(女性)を参考にして行った11.アルブミンは3.5 g/dL未満を低アルブミン血症とした.中性脂肪,総コレステロール,クレアチンキナーゼは施設基準値未満を低下ありとした.倫理的配慮として,同意説明文書を用いて本研究の目的や方法を説明し同意取得を行った.本研究は,国立病院機構大牟田病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号30-20).

3. 統計解析

名義変数,順序変数の単変量解析については,フィッシャーの正確確率検定を行った.栄養充足率,総筋肉量およびFEV1を比較する際は,t検定を行った.多変量解析については,重回帰分析を行った.JMPバージョン15.0(SAS Institute, Cary, NC)を使用して統計分析を実行し,p<.05は統計学的に有意であるとみなした.

結果

評価対象となったCOPD患者は26例であった.Body Mass Index(BMI)の中央値は22.4であり,18.5未満の低体重を呈している症例は認められなかったが,総筋肉量低下が14例,サルコペニアは8例に認められた.登録前1年以内の増悪歴を有する症例は10例であり,増悪歴の有無で登録時の%FEV1に有意差はみられなかった.薬物治療において使用する薬剤の選択および治療の変更については主治医判断としており,全例で吸入治療が行われ観察期間内に治療内容の変更はみられなかった.また,COPD増悪のため入院した症例は主治医判断により入院期間中にリハビリテーションが行われたが,外来リハビリテーションは実施しなかった(表1).

表1 患者背景

症例(人)26
 男性/女性(人)19/7
 年齢 中央値(範囲)72(61-86)
 BMI(kg/m2)中央値(範囲)22.4(19.3-30.1)
 喫煙歴 非喫煙/現喫煙/既喫煙(人)0/3/23
登録前1年以内の増悪回数0回(人)16
1回(人)10
2回以上(人)0
登録前増悪時期1-3ヶ月前(人)3
4-6ヶ月前(人)7
 GOLD病期 I/II/III/IV(人)6/12/6/2
 %FEV1(%)(平均値±SD)全体集団58.6±20.1
増悪歴有50.9±20.0
増悪歴無64.8±20.9
 CAT(点)(平均値±SD)12.8±7.2
 BDI(点)(平均値±SD)9.0±2.4
治療内容(人)LAMA6
LABA/LAMA11
ICS/LABA3
ICS/LABA/LAMA6
在宅酸素療法0
外来リハビリテーション0
総筋肉量低下(人)14
サルコペニア(人)8

BMI: Body Mass Index

GOLD: Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease

LAMA:長時間作用性抗コリン薬,LABA:長時間作用性β2刺激薬,ICS:吸入ステロイド

登録時点の栄養充足率は総筋肉量正常群88.3±6.6%(平均値±標準偏差(SD)),総筋肉量低下群87.3%±13.5%(平均値±SD)であり,二群間に差はみられなかった.Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)病期別の登録時総筋肉量低下割合はI期33%(2/6),II期67%(8/12),III期33%(2/6),IV期100%(2/2)であった.登録時総筋肉量低下群の%FEV1は56.5±21.0%(平均値±SD)に対し,総筋肉量正常群の%FEV1は62.8±23.0%(平均値±SD)であり差はみられなかった(p=0.26).登録時のCATについても総筋肉量低下群は14.9±8.5点(平均値±SD),総筋肉量正常群は10.5±5.0点(平均値±SD)であり差はなく(p=0.05),登録時の総筋肉量低下と血液検査値異常との間にも有意な関連はみられなかったが,過去1年以内に増悪歴があると総筋肉量は有意に低下していた.また,登録時のBDIは総筋肉量低下群で8.0±2.6点(平均値±SD),総筋肉量正常群では10.2±1.8点(平均値±SD)であり(p=0.01),基準値を11点未満にすると総筋肉量低下の感度85.7%,特異度66.7%であり総筋肉量低下が75%(12/16)に認められた.中性脂肪,総コレステロールについては基準値未満の症例がなく,基準値以上と基準値未満の群間比較ができなかった(図1表2).登録後の経過中に6例でCOPD増悪が出現しており,全例登録前の増悪歴を有していた.登録時に増悪歴を有していた10例を抽出して,登録後にもCOPD増悪が出現した6例(A群)と登録後には増悪が認められなかった4例(B群)とで登録時の項目を比較すると,A群はB群よりも%FEV1が低値であり(A群:35.0±6.9%,B群:51.4±12.5% 平均値±SD,p=0.04),CATは高値(A群:17.0±7.6点,B群:8.5±1.9点 平均値±SD,p=0.03)でBDIは低値(A群:6.3±2.7点,B群:9.0±1.4点 平均値±SD,p=0.04)であった.登録1年後の評価では,登録後の観察期間中にCOPD増悪がみられた症例における呼吸困難症状の悪化,総筋肉量の低下,%FEV1の低下が認められた.一方で,観察期間中にCOPD増悪がみられなかった症例では,呼吸困難症状のコントロールが良好であり,総筋肉量が増加していた(表3).また,登録前に増悪歴を有していた症例であっても観察期間中に増悪がなかった場合,登録1年後には総筋肉量が全例増加していた(+5.4±5.1% 平均値±SD).栄養充足率について,観察期間中にCOPD増悪を来しても,増悪の無い症例と同等であった(表3).また,登録時に総筋肉量が正常であった群の1年後評価では,栄養充足率が88.0±15.8%(平均値±SD)であったのに対し,登録時に総筋肉量が低下していた群における1年後の栄養充足率は80.5±6.6%(平均値±SD)であったが,二群間に差はみられなかった(p=0.15).

図1 項目別筋肉量低下の割合

項目毎の群間比較はフィッシャーの正確確率検定を使用.*: p<0.05

表2 登録時総筋肉量低下と各項目との関連

項目係数t下限95%上限95%p
病期-0.33-0.59-1.530.860.57
%FEV1-2.02-0.91-6.702.660.38
増悪歴-0.48-2.52-0.88-0.080.02
アルブミン0.080.28-0.530.690.79
クレアチンキナーゼ0.231.25-0.160.630.23
CAT-0.20-0.81-0.710.320.43
BDI0.553.000.170.940.01

多変量解析として重回帰分析を使用.

表3 登録後のCOPD増悪と各項目の変化量

増悪有り(N=6)無し(N=20)
登録後の増悪回数1回(人)6
2回以上(人)0
登録後の増悪時期0-3ヶ月(人)3
4-6ヶ月(人)3
7-12ヶ月(人)0
Δ総筋肉量(%)(平均値±SD)-1.9±1.6+3.5±4.8*
Δ%FEV1(%)(平均値±SD)-1.5±0.9+1.8±4.9*
アルブミン(人)≧3.5 g/dL620
<3.5 g/dL00
中性脂肪(人)≧40 mg/dL620
<40 mg/dL00
総コレステロール(人)≧142 mg/dL620
<142 mg/dL00
クレアチンキナーゼ(人)≧59 U/L(男性),≧41 U/L(女性)618
<59 U/L(男性),<41 U/L(女性)02
CAT(点)(平均値±SD)14.7±2.310.3±6.5
ΔCAT(点)(平均値±SD)-2.3±8.6-1.7±9.4
BDI(点)(平均値±SD)6.3±2.910.7±1.4*
TDI(点)(平均値±SD)-1.3±1.0+0.6±1.1*
栄養充足率(%)(平均値±SD)88.7±17.982.9±10.0

Δ:(1年後の測定値)-(登録時の測定値)

群間比較はt検定を使用.*:増悪有りと無しの比較,p<0.05

考察

本研究では,安定期COPD症例の筋肉量を体成分分析装置によって計測し,臨床症状,血液検査,呼吸機能検査との関連を解析し経時的な観察を行った.体成分分析は,生体電気インピーダンス法(Bioelectrical impedance analysis;以下,BIA法と略),二重エネルギーX線吸収測定法,CTやMRIを用いて横断面の筋肉量を測定する方法などがある.BIA法は非侵襲的でかつベッドサイドで簡便に測定可能であり,ペースメーカーを装着されている場合を除いて,身体機能が低下した症例であっても実施可能であるという利点を有することからBIA法によって測定するInBody S10®を使用して筋肉量を評価した.

COPD症例では,安静時エネルギー消費量(Resting energy expenriture: REE)が増大している12.REEの増大は肺過膨張や呼吸筋力の低下と相関しており,換気障害に基づく呼吸筋酸素消費量の増大が主因とされている13.増大した呼吸仕事量にみあう栄養摂取が困難な場合もあり,安定期のCOPD症例において体重減少や筋肉量低下を呈することは稀ではない.本研究では観察開始時の総筋肉量低下が過去1年以内の増悪歴および呼吸困難症状と有意に関連していた.

COPD増悪と筋肉量低下との関連について,年1回の増悪を来すと6ヶ月分の加齢変化に相当する筋肉量低下が余分に起こり得ると報告されている14.本研究において,登録時に増悪歴を有する症例の一部では観察期間内にも増悪が認められた.これらの症例は登録後6ヶ月以内に増悪が出現しており,その後最終評価の登録1年後までは増悪が出現しなかったが,登録1年後の総筋肉量は登録時よりも低下していた.このように増悪から軽快しても6ヶ月の経過では総筋肉量の回復は困難であることが示唆され,本研究の登録時の評価において過去の増悪歴が総筋肉量低下と関連していたのは,増悪歴を有する症例の増悪軽快から登録までの期間が6ヶ月以内であったため,COPD増悪の筋肉量低下に対する影響が残存した状態での評価になったことを反映したものと思われる.

一方で,登録時に増悪歴がある症例において観察期間内に増悪が出現せず1年経過した場合に総筋肉量が増加していたことから,COPD増悪が軽快した後に総筋肉量が回復するためには1年程度必要である可能性がある.

自覚症状と筋肉量低下との関連については,安定期COPD症例での検討において,呼吸困難症状が強い場合に筋肉量が有意に低下することが報告されている7,15.一方で,重症のCOPDであっても呼吸困難症状が軽い場合には,呼吸困難症状が強い場合よりも身体活動に対する意欲が高く,身体活動性も保たれていることが示されており16,廃用性筋萎縮に伴う筋肉量低下が起こりにくいと考えられる.本研究においても,BDIが低値で呼吸困難症状が強い患者群では,呼吸困難症状が軽い患者群よりも総筋肉量低下の割合が有意に高かった.また,経時的な評価を行ったところ,登録後にCOPD増悪を生じることなく,自覚症状をコントロールしてCOPDの治療が継続できていると総筋肉量が増加する結果が得られた.

次に,栄養障害と筋肉量との関連であるが,安定期COPD症例では除脂肪体重が減少していても,血清アルブミン値は維持されていることが報告されている17.本研究においても,血清アルブミン値が基準値以上である症例の半数以上で総筋肉量が低下しており,筋肉量低下のスクリーニングとして血清アルブミン値を参考にすると,筋肉量低下を見落とす可能性があると思われる.栄養摂取に関して,本研究の結果では登録時に総筋肉量が低下していた群の栄養充足率は総筋肉量正常群と同等であったが,登録後の経過において,有意差はないものの栄養充足率が低下する傾向にあった.COPD症例における筋肉量低下は,身体活動性の低下と関連することが報告されており1,外出頻度の低下は栄養状態の悪化および食事摂取量低下と有意に関連した報告も考慮すると18,筋肉量が低下したCOPD症例においては,身体活動性低下や食事摂取量低下に対して定期的な観察や治療介入が必要であると思われる.

この研究の限界として,第一に単施設の少数例を対象とした検討である点が挙げられる.当院は呼吸器疾患に対応する地域の基幹病院であり,中等症~重症COPD症例を紹介していただき,軽症COPDは逆紹介する機会が多いことから,本研究の登録患者の背景として%FEV1の平均値は58.6%であり,増悪歴を有する症例が26例中10例と比較的多く認められていた.一方で在宅酸素療法を行っているCOPD症例が登録されておらず,患者背景に偏りのある結果が反映されている.また,呼吸困難の指標であるBDIに関して,今回の検討では登録症例の総筋肉量低下に対する感度,特異度を参考にカットオフ値を設定しており,一般化されない基準値となっていることに加え,BDIは研究目的で使用されるため,日常診療での使用には限界があるといった問題点もある.しかしながら,筋肉量低下に関連する因子として抽出された呼吸困難症状や増悪歴については,過去の多施設あるいは単施設の観察研究でも同様に報告されている7,14,15.このように地域や症例数によらず,再現性をもって筋肉量低下に対する影響が示された呼吸困難症状や増悪歴については,GOLDの管理指針においても重要な因子として取り入れられており,COPDの病態へ及ぼす影響が大きいと思われる.次に,筋肉量の検査結果の情報は良悪にかかわらず患者の活動意欲に影響を及ぼし,経時的な筋肉量変化に対してバイアスを生じる可能性がある.検査結果についてはできる限り客観的な数値を説明する程度に留めて,検査結果に基づく指導や介入は控えて経時的な筋肉量の観察を行った.また,当院は外来リハビリテーションを実施しておらず,リハビリテーション介入による筋肉量への影響を観察することはできなかった.本研究は筋肉量低下に対して介入を行っていないが,筋肉量が低下している症例に対して,栄養指導およびリハビリテーションを行うと,本研究で認められた結果よりも多くの筋肉量増加が得られると期待されるため19,20,今後の展望としては,筋肉量低下に関連する1年以内の増悪歴とコントロール不良な呼吸困難症状を有する際に筋肉量を評価し,その結果を栄養療法,リハビリテーションといった治療介入の計画に活用することが考えられる.

BIA法による体成分分析は身体への侵襲が少なく短時間で実施可能な検査であることから実用的であり,高齢で身体機能が低下していることが多いCOPD患者の筋肉量を評価するうえで有用である.体成分分析によって筋肉量低下と判定されるCOPD患者を予測する指標として,呼吸機能検査や血液検査よりもこれまでの増悪歴や呼吸困難症状に焦点を置いたBDIが有用であり,同一患者における経時的な変化として,自覚症状の改善と増悪抑制が達成されていると筋肉量の増加が期待され,治療意欲の面でも好影響になり得ると思われる.

備考

本論文の要旨は,第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(2022年11月,千葉)で発表し,座長推薦を受けた.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

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