日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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シンポジウム
ネーザルハイフロー(HFNC)の課題と今後の方向性
富井 啓介
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2025 年 35 巻 1 号 p. 15-20

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要旨

HFNC(high flow nasal cannula)はまず急性1型呼吸不全に対する挿管回避のための非侵襲的呼吸管理法として急速に普及してきた.現在ではCOPDのような2型呼吸不全に対しても,NPPVの前段階としての使用法が急性増悪期,慢性期ともにエビデンスを蓄積しつつある.一方で簡単に実施できて患者の受容も比較的良好なために過剰で不適切な使用も懸念される.具体的には通常の酸素療法からどの時点でHFNCを開始すると費用対効果が高いのか,個別性のある適切な流量設定ないし生体モニタリングはどうあるべきか,NPPVとの併用や移行の適切な基準やタイミングはどうすべきか,などの問題点が残されている.また慢性期における気管支拡張症やその他呼吸不全への適応拡大,終末期呼吸不全に対する緩和ケアとしての使用法,リハビリテーションの補助手段としての応用など新しい展開もこころみられている.

はじめに

ネーザルハイフロー(高流量鼻カニュラ):HFNC(high flow nasal cannula)は2015年に発表されたFratらによるFLORALI研究1以後急速に広まり,コロナ禍を経て現在急性呼吸不全のファーストチョイスとして院内で日常的に使用されている.また2022年に発表されたNagataらによるFLOCOP研究2後はCOPDに対する在宅ハイフローセラピーが我が国で保険承認され,在宅呼吸管理法としても一定の地位を築きつつある.このようにHFNCは非侵襲的呼吸サポート(NIRS: Noninvasive respiratory support)の一手段として今やNPPVと比肩する存在であるが,簡便性がもたらすコストや適応の問題,新たな発展の可能性などに関する議論も多く残されている.本稿ではこれらの課題と今後検討すべき方向性について考察していきたい.

1) 急性期HFNCの課題

① 費用対効果

急性呼吸不全に対してHFNCは通常の酸素療法と比較して挿管回避の優位性を有し各種ガイドラインで推奨されている.わが国の3学会合同ARDS診療ガイドライン20213では「初期の呼吸管理として,NIRSの禁忌や呼吸不全以外の臓器不全がなければ,酸素療法と比較してNIRS(HFNCもしくはNPPV)を条件付き推奨」している.ESCIMガイドライン(2023)4では,「心不全やCOPD急性増悪でない急性呼吸不全に対して,挿管リスク減少のために酸素療法と比較してHFNCを推奨(死亡率減少は不明)」となっている.

現在日本におけるHFNCのコストは診療報酬上表1の通りである.挿管回避できれば挿管に伴うICU使用や合併症の費用が不要となり,HFNC実施に必要なコストを上回る経済効果が期待できるはずである.挿管リスクが高ければ高いほど費用対効果が高くなるが,一方でリスクが低ければ過剰な医療となりうる.残念ながら現時点でその境界レベルがどこなのかは定かではない.HFNCとNIVの費用対効果の比較については,最近ブラジルから発表されたRENOVATE研究の経済的解析5によると,非免疫不全の低酸素血症,COPD,心原性肺水腫ではHFNCが優れるとされている.

表1 入院中のHFNCに係る診療報酬

・J026-4 ハイフローセラピー(1日につき)
 15歳未満 282点,15歳以上 192点
 (PaO2 60 mmHg以下またはSpO2 90%以下の急性呼吸不全の患者に限る)
・酸素算定:1分間 10 L相当の24時間で 14,400 Lを上限として酸素の薬価で算定(人工呼吸器と同じ)
・DPCコードの枝番:手術処置等2-2(図1

図1 HFNCに係るDPCコード 手術処置等2-2

例として間質性肺炎の入院期間と点数をHFNCあり,なしで示す.

② 至適総流量の決定

HFNCの効果と流量の関係を示すMauriらの研究6によると,肺胞リクルートメントやPaO2/FIO2改善が目的なら総流量は多い方が良く,その関係はある程度正比例している.Parkeらの実験的研究7によると総流量を通常の 50 L/min程度から 100 L/minまで上げるとPEEPは 4 cmH2Oレベルから直線的に 10 cmH2O程度まで上昇する.一方死腔の洗い出し効果による呼吸仕事量や分時換気量の減少については,総流量を上げても 30-45 L/min程度以上で頭打ちとなる6

したがって総流量の決定はHFNCのもたらす生理学的効果のどの部分を目的とするのかを考慮しつつ,患者の許容可能な範囲の適切な流量に設定していく必要がある.また原疾患の経過によって患者の状態も変動するため,それに応じて調整できることも望まれる.そのためには適切な総流量をリアルタイムに決定できる簡便な方法が求められる.

③ モニタリング

HFNC機における最大の欠点はモニタリング機能がない点である.一定の流量を出力するのみで,それがどれだけ患者に到達したか,患者の状態がどうなったかを知る術がなく,仮に患者から装置が外れていてもそれを感知できない.したがってHFNC実施中の患者の状態を把握するには各種生体モニターや診察所見,画像検査などの情報(表2)が欠かせないが,日常臨床でどこまで行うかの判断は難しい.ただしSpO2と呼吸数は1型呼吸不全における挿管回避の目安「ROX index=(SpO2/FIO2)/呼吸数」算出のために特に重要である.Rocaら8によるとHFNC開始2時間後および6時間後のROX比が4.88を超えるかどうかで,その後の挿管率に有意差が認められる.呼吸数測定のルーチン化は容易でないが,脈波測定時のフォトプレチスモグラム(PPG)による呼吸数を連続的に表示できるパルスオキシメーターもある.

表2 HFNC実施中に把握したい患者情報

・SpO2:酸素化(ROX indexに必要)
・呼吸数:自発呼吸努力(ROX indexに必要)
・Tc(経皮)CO2:換気量
・呼吸補助筋緊張:呼吸努力
・呼吸音:気道衛生,含気
・胸部XP,CT:含気
・EIT(Electrical impedance tomography):含気状態の変化

④ CPAP(NIV)との使い分け

NIRSの方法としてHFNCとCPAPもしくはNIVをどのように使い分けるかについては多くの議論がなされてきた.1型呼吸不全に関して見ると,当初のFLORALI研究1ではHFNCがNPPVよりも優れるとされたが,その後NPPVの設定が圧補助による一回換気量や経肺圧の増加を伴う不利益なものであったことが影響した可能性が論議された.その後圧補助のないCPAPやリークのないヘルメットNIVのHFNCに対する優位性を示すデータ9,10も提示された.ESCIMガイドライン(2023)4では「HFNC vs CPAPについてはどちらが良いとも推奨できず」「COVIDの場合は挿管リスク減少のためにHFNCよりCPAPを提案」とされている.

一方急性2型呼吸不全ではNPPVの有効性が極めて高く,当初HFNCは適応にならないとも考えられたが,実施が簡便であることからNPPV実施前のファーストラインとしての使用成績が報告されるようになった.また心原性肺水腫でも同様の状況である.これらを踏まえて1型2型を問わず急性呼吸不全全般に対してHFNCをNPPVと比較した1,800例におよぶブラジルの大規模RENOVATE研究11が行われ,挿管や7日死亡の回避において,免疫抑制のない急性低酸素血症群,呼吸性アシドーシスを伴うCOPD増悪群,急性心原性肺水腫群,低酸素血症伴うCOVID-19群ではHFNCの非劣性が示された.ファーストラインとしてのHFNCは今後さらに一般的となる可能性が高いが,CPAPないしNPPVが優先されるべき病態,これらに切り替えるべきタイミングなどについて更なる検討が待たれる.

⑤ 救急集中治療後の緩和ケア

急性1型呼吸不全で挿管リスクのある場合まずHFNCを実施するが,その後改善しない場合NPPVもしくは挿管人工呼吸へと進むのか,HFNCまでに止めるのかの判断が必要となる.いわゆる挿管拒否(DNI)でNIRSまでに止める際は,呼吸困難などの症状緩和目的でHFNCを看取りまで継続する場合が多い.実際ILD急性増悪に伴う死亡時の遺族調査12によると,HFNCは通常の酸素療法と比較してQODD(Quolity of Dying & Death)が有意に高く,その寄与因子としてはオピオイドや鎮静剤の使用よりも大きい.ただしHFNC使用による局所の苦痛,運動や行動の制限,カニュラのずれによる急変リスクなどのマイナス要素にも十分配慮する必要があり,HFNCを継続するために鎮静するのは緩和目的とすると本末転倒である.HFNC継続による苦痛が強くQOLの低下する場合は中止して他の手段による緩和を図るべきである13

2) 慢性期在宅HFNCの課題

① 費用対効果

令和4年度診療報酬改定にて慢性期のHOT施行中COPD患者に対し,1)PaCO2 45 mmHg以上 55 mmHg未満,2)PaCO2 55 mmHg以上で在宅人工呼吸が不適,3)夜間の低換気による低酸素血症(SpO2が90%以下となる時間が5分以上持続または全体の10%以上),のいずれかを認める場合に在宅ハイフローセラピーが保険承認されるようになった.現時点で実施に係る費用は表3の通りである.

表3 在宅HFNCに係る診療報酬

・C107-3在宅ハイフローセラピー指導管理料2,400点
・C171-3在宅ハイフローセラピー材料加算100点
・C174在宅ハイフローセラピー装置加算
1自動給水加湿チャンバーを用いる場合3,500点
21以外の場合2,500点

承認のきっかけとなったFLOCOP研究2では詳細な経済的効果は示されていないが,上記適応基準を満たす過去の増悪歴がある患者については中等症以上のCOPD年間増悪を65%減少させるアウトカムが得られている.増悪回避に伴う医療費の減少,すなわち入院費用やADL低下,NPPVへの移行などに関わる間接的な介護,医療費なども考慮すると,増悪リスクの高いこれらの症例では上記実施費用を考慮しても費用対効果は高いと考えられる.日本と同様に保険償還されているデンマークのQALY(Quality-adjusted life-year)に基づく研究14でも高い確率で費用対効果があると結論されている.

② NPPVとの使い分け

急性期同様に慢性期HFNCにおいてもNPPVとの使い分けが問題となる.在宅HFNCの適応基準は上記の通り基本的にはNPPVの前段階であり,いったん開始しても有効でなく呼吸不全が進行する場合はNPPVへの移行を考えざるを得ない.しかしNPPV不適でHFNCまでの使用とする場合は,終末期の緩和ケアとして(下記④)日中も含めた継続使用となる.NPPVの終日使用と比べるとQOLは維持されるが,通常の酸素療法より移動やリハビリに制限がある点は考慮しておくべきである.

③ COPD以外への適応拡大

COPD以外の病態においても在宅HFNCが有効の可能性がある.とくに喀痰の多い気管支拡張症においては,COPD同様の呼吸仕事量軽減のみならず,十分な加湿に伴う粘液線毛輸送機能の改善による気道クリアランス,感染予防効果なども期待される.実際に1日の痰量が 5 ml以上で年間2回以上の増悪歴のあるCOPDと気管支拡張症に対する1年に及ぶ長期HFNCのランダム化比較試験の結果15では,総流量 20-25 L/minの1日2時間以上の使用で,年間増悪の頻度:2.97 vs 3.63 P=0.067,増悪日数:18.2日 vs 33.5日 P=0.045,最初の増悪までの日数中間値:52日 vs 27日 P=0.0495 のアウトカムが得られ,1年を通じてQOLの有意な改善も認めている.また国内においてもQOLを評価項目とする気管支拡張症に対する在宅HFNCのランダム化比較試験がすでに実施されており,これらの結果をもって今後の保険承認が望まれる.

それ以外では各種拘束性換気障害等による慢性2型呼吸不全が候補となるが,今のところPPFEでの症例報告16などが散見されるのみである.個々の疾患別で比較試験を行うのは症例集積が容易ではなく,慢性2型呼吸不全全体を一括した臨床試験を検討すべきかもしれない.

④ 緩和目的での使用(ILDやCOPDも含めた呼吸不全終末期)

2024呼吸不全に関する在宅ケア白書17によると,在宅HFNCの適応として考えるものは呼吸器学会認定施設,一般病院いずれにおいても肺線維症/間質性肺炎が84%でもっとも多かった.これは間質性肺炎急性増悪やARDSなどの急性1型呼吸不全でHFNCを行ったのち離脱退院できない患者への在宅HFNCの期待が大きいことを反映している.このような終末期1型呼吸不全の在宅緩和ケアとしてのHFNCについては,国外からのまとまった成績18や国内の症例報告19がすでに認められている.実施にあたっては現在使用されている在宅HFNC機と比較的高流量を供給可能な酸素濃縮器があれば,FIO2 50%程度までは可能である.例えば総流量 30 L/minで酸素流量を 10 L/minとすると(10×1.0+20×0.21)/30=約50%となる.さらにHFNCは通常の酸素マスクやリザーバー付きマスクと比べてQOLを維持しやすく,呼吸困難の緩和にも有効である可能性がある.適応拡大のための臨床試験は実施困難な対象であり,入院中のHFNCの継続として在宅使用が認められることが望まれる.またCOPDなどの2型呼吸不全終末期においてもNPPVを望まない場合,②で触れた通りHFNCを緩和ケアの一環として用いることができる.

3) 新しい取り組み

これまでにないHFNCに関する新しい取り組みをいくつか紹介する.

① 高性能のHFNCカニュラ(非対称性カニュラ)(図2

HFNCに用いられる鼻カニュラの口径を左右非対称にすると,太い側からの鼻腔内流入が増え,細い側からの鼻腔外への流出が増加する.それに伴って通常の左右対称のカニュラと比較して死腔のウオッシュアウトとPEEP効果が高くなる20.つまりHFNCの生理学的有効性がより強調された形となる.現在のところ臨床的有用性は十分確認されていないが,すでに製品は市販されているためHFNCの効果が不十分と感じる場合に試してみる価値がある.

図2 非対称鼻カニュラによるネーザルハイフローの効果20

非対称鼻カニュラでは吸気流量,呼気流量とも増加し,PEEPおよび洗い出し効果が高まる

② HFNC+NIV併用

通常のNIV機はHFNCを実施できるスペックを備えており,設定次第で両者を実施可能である.臨床的有効性については抜管失敗リスクのある患者に対する抜管後のHFNCとHFNC+NIV併用の比較試験21で,PaCO2>45 mmHgの炭酸ガス貯留のある場合,併用群で有意に再挿管率が減ることが示されている.実臨床でも増悪後入院中の慢性2型呼吸不全で,夜間睡眠中など十分な換気補助が必要な場合はNIVとし,覚醒時などQOLを優先する場合はHFNCに切り替えるような症例はときに認められる.在宅機でも一台で同様の切り替えが可能な機種もあるが,適応条件,切り替え方法の教育,保険算定などの問題が残っている.

③ HFNC使用下のリハビリテーション

HFNCには酸素化や換気効率の改善,呼吸仕事量の低下などの効果があるため,COPDやILDなどで労作時に呼吸困難や低酸素血症を伴う場合に使用すると運動耐容能を改善させる可能性がある.COPDに対して通常の酸素療法と比較したランダム化比較試験がいくつかあり,HFNC下では定常負荷時の運動持続時間の延長22や6分間歩行距離の改善23を認めている.ILDにおいては労作時低酸素血症がより顕著で運動制限因子となりやすいが,高濃度酸素を通常の酸素療法以上に高流量で提供できるHFNCを用いれば,呼吸数や換気量が増えても周囲の空気で希釈されにくくかつ死腔洗い出しによる換気効率も維持され,運動中のSpO2低下を防ぎやすい.そのため同じFIO2のベンチュリマスクとHFNCを比較した場合でも,HFNC下では定常負荷の運動持続時間延長やSpO2の改善を認めることが,複数のランダム化比較試験24,25で示されている.このようにCOPDやILDのリハビリテーション中にHFNCを実施すれば,その運動負荷量や持続時間を増やしやすく,持久力や筋力の増加,ADL改善に貢献することが期待される.

最後に

HFNCが本格的に臨床応用されるようになってまだ10年余りであるが,その簡便さと快適性によって急速にさまざまな臨床現場で広く応用されるようになってきた.今後も新たな領域へのチャレンジが続くと推測されるが,一方で対費用効果や適切な適応基準,アルゴリズムの確立など,一度振り返って足下をしっかり硬め直す必要もある.本稿がこの治療法のさらなる発展に少しでも参考になれば幸いである.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

富井啓介;講演料(帝人ファーマ,帝人ヘルスケア)

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