2025 年 35 巻 1 号 p. 33-38
COPDをはじめとした呼吸器疾患に対する非薬物療法として,呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)が推奨されている.呼吸リハの実施状況を明らかにするために,2014年と2022年にアンケート調査を実施した.わが国の呼吸リハは2001年の「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」発刊以降,呼吸器関連学会の努力によりその構造は大きく変化し,欧米型の包括的な内容の呼吸リハが急速に普及した.その後,2018年の「新ステートメント」の発刊により更なる呼吸リハの普及に努めたが,その実施率には変化がなく,マニュアルやステートメントの活用状況は十分ではないことが明らかになった.呼吸リハをより普及していくためには,ミニマルリソースでの呼吸リハや地域連携を充実していくこと,呼吸リハが有効な治療であることを患者,医療者に啓蒙していく必要がある.
呼吸器疾患の管理において呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は有効であり,特に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)患者に対しては非薬物療法の標準的治療としてその実施が強く推奨されている1,2).近年では,間質性肺炎においてもエビデンスが蓄積されてきている3).わが国における呼吸リハの普及状況に関する歴史を顧みると,1998年に北米,ヨーロッパ,東京での呼吸リハ実施率を比較検討したKidaらの報告では4),北米が56%,ヨーロッパが74%であったのに対し東京では20%と低値であったこと,欧米と比較すると内容も包括的ではなかったことが報告されている.その後,日本呼吸器学会および日本呼吸ケア・リハビリテーション学会などにより呼吸リハビリテーションに関するステートメント(2001年)5),呼吸リハビリテーションマニュアル―運動療法―(2003年)6),呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方と実践―(2009年)7)が発刊され,呼吸リハ普及のための活動が進んできた.その結果,2012年の調査では,COPD患者に対する呼吸リハ実施率は55.1%まで向上していた8).我々が2014年に日本呼吸器学会の教育病院に対して実施したアンケート調査では,呼吸リハ実施率は87.9%と大きく向上していたが,維持プログラムの実施施設は25%と低く,呼吸リハビリテーションマニュアルを活用していると回答した施設は半数程度であった9).2018年には呼吸リハビリテーションのさらなる普及を目指して呼吸リハビリテーションに関するステートメントが新しく発刊された1).今回,ステートメント発刊後の呼吸リハ普及状況を明らかにするため,再度アンケート調査を実施した10).本稿ではこれらの結果を踏まえ,わが国で呼吸リハをいかにして普及していくかについて報告する.
2014年に日本呼吸器学会の教育病院(872施設)に対し,郵送法にてアンケート調査を実施した9).アンケート内容は呼吸リハ実施の有無,実施形態,呼吸リハを実施する上での問題点,実施していない施設における問題点,マニュアルやステートメントの普及状況であった.
346施設(39.7%)から回答を得られ,回答施設は47施設(13.6%)が大学病院,239施設(69.1%)が急性期一般病院であった.呼吸リハは87.9%の施設で実施されていた.実施方法に関しては,入院が最も多く(66.0%),ついで外来(35.5%),在宅(5.2%)であった.実施プログラム内容は,コンディショニング(92.1%),持久力トレーニング(89.0%),筋力トレーニング(81.2%),患者教育(65.4%)ADLトレーニング(63.5%)と包括的な内容で実施されていた.維持プログラムは25%の施設のみで実施されていた.呼吸リハの実施上の問題点は,人員不足,呼吸リハに割く時間がない点が挙げられた.
以上の結果から,呼吸リハは日本呼吸器学会の多くの教育病院で実施されており,実施プログラムは従来実施されていた呼吸練習から,欧米型のより包括的な内容になっていると推定された.呼吸リハ実施上の問題点としては,スタッフ不足,呼吸リハに割く時間がない点が挙げられ,呼吸リハ普及に向け解決すべき問題点と考えられた.
2. 2022年のアンケート結果の概要と2014年の比較9,10)その後の呼吸リハの実施状況を検討するため,2022年に日本呼吸器学会の専門医認定施設(基幹病院・連携病院,1,194施設)に対して2014年と同様のアンケートを実施した10).
304施設(25.5%)から回答を得られ,回答施設は47施設(15.5%)が大学病院,239施設(78.6%)が急性期一般病院であった.呼吸リハは85.4%の施設で実施されており,2014年とほぼ同様の実施率であった.実施方法に関しては,入院が最も多く(97.7%),ついで外来(44.1%),在宅(8.4%)であった.維持プログラムは18.4%と,2014年に比較して有意な低下(p<0.05)を認めた.
表1に2014年と2022年での呼吸リハプログラムの比較を示す.入院,外来,在宅すべてにおいて患者教育は半数程度の実施率であった.コンディショニングは,入院において80%以上実施されており,外来,在宅でも半数以上は実施されていた.運動療法は,「歩行練習」や「下肢筋力トレーニング」,「ADLトレーニング」がいずれの形態でも多く実施されていた.2014年と比較すると,患者教育に関しては入院での「酸素療法に関する指導」が99.5%から78.0%,外来での「薬物療法教育」が51.5%から34.5%,「禁煙指導」が42.6%から28.3%へと有意に減少していた.一方,入院での「心理的サポート」が26.7%から35.3%,「動作の工夫」が67.1%から95.7%,外来での「心理的サポート」が24.9%から37.9%へと有意に増加していた.運動療法では,入院および外来での「歩行練習」が95.6%から91.0%,86.4%から71.0%,「エルゴメータ」が56.9%から44.7%,61.0%から44.8%,「下肢筋力トレーニング」が82.5%から71.8%,77.5%から62.1%へと有意に減少していた.入院および外来において,運動療法の実施率が向上した項目は認めなかったが,在宅では「上肢持久力トレーニング」が25.0%から53.3%,「ADLトレーニング」が41.7%から66.7%へと有意に増加していた.
| 入院 | 外来 | 在宅 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2014 (n=292) | 2022 (n=255) | 2014 (n=156) | 2022 (n=145) | 2014 (n=48) | 2022 (n=45) | |
| 患者教育 | ||||||
| 疾患教育 | 185(63.4%) | 156(61.2%) | 107(63.3%) | 78(53.8%) | 17(35.4%) | 25(55.6%) |
| 薬物療法教育 | 159(54.5%) | 121(47.5%) | 87(51.5%) | 50(34.5%)※ | 17(35.4%) | 16(35.6%) |
| 栄養指導 | 134(45.9%) | 135(52.9%) | 70(41.4%) | 51(35.2%) | 10(20.8%) | 16(35.6%) |
| 酸素療法に関する指導 | 211(99.5%) | 199(78.0%)※ | 100(59.2%) | 83(57.2%) | 22(45.8%) | 28(62.2%) |
| 禁煙指導 | 98(33.6%) | 73(28.6%) | 72(42.6%) | 41(28.3%)※ | 11(22.9%) | 10(22.2%) |
| 心理的サポート | 78(26.7%) | 90(35.3%)※※ | 42(24.9%) | 55(37.9%)※ | 17(35.4%) | 25(55.6%) |
| 自己管理教育 | 136(46.6%) | 128(50.2%) | 79(46.8%) | 68(46.9%) | 20(41.7%) | 22(48.9%) |
| 日常生活の指導 | 210(71.9%) | 194(76.1%) | 119(70.4%) | 95(65.5%) | 27(56.3%) | 31(68.9%) |
| 動作の工夫 | 196(67.1%) | 244(95.7%)※ | 108(63.9%) | 96(66.2%) | 26(54.2%) | 30(66.7%) |
| コンディショニング | ||||||
| 呼吸練習 | 282(96.6%) | 244(95.7%) | 157(92.9%) | 126(86.9%) | 31(64.6%) | 29(64.4%) |
| リラクセーション | 256(87.7%) | 255(100%)※ | 139(82.3%) | 100(69.0%)※ | 28(58.3%) | 30(66.7%) |
| ストレッチ | 254(87.0%) | 210(82.4%) | 147(87.0%) | 99(68.3%)※ | 30(62.5%) | 26(57.8%) |
| 排痰法指導 | 254(87.0%) | 213(83.5%) | 131(77.5%) | 101(69.7%) | 26(54.2%) | 26(57.8%) |
| 運動療法 | ||||||
| 歩行練習 | 279(95.6%) | 232(91.0%)※※ | 146(86.4%) | 103(71.0%)※ | 28(58.3%) | 25(55.6%) |
| トレッドミル | 64(21.9%) | 48(18.8%) | 41(24.3%) | 30(20.7%) | 2( 4.2%) | 3(6.7%) |
| エルゴメータ | 166(56.9%) | 114(44.7%)※ | 103(61.0%) | 65(44.8%)※ | 5(10.4%) | 6(13.3%) |
| 階段昇降 | 186(63.7%) | 138(54.1%)※※ | 84(49.7%) | 58(40.0%) | 8(16.7%) | 11(24.4%) |
| 上肢持久力トレーニング | 121(41.4%) | 115(45.1%) | 68(40.2%) | 55(37.9%) | 12(25.0%) | 24(53.3%)※ |
| 上肢筋力トレーニング | 176(60.3%) | 143(56.1%) | 97(57.4%) | 72(49.7%) | 19(39.6%) | 23(51.1%) |
| 下肢筋力トレーニング | 241(82.5%) | 183(71.8%)※ | 131(77.5%) | 90(62.1%)※ | 26(54.2%) | 26(57.8%) |
| ADLトレーニング | 241(82.5%) | 180(70.6%)※ | 87(51.5%) | 74(51.0%) | 20(41.7%) | 30(66.7%)※※ |
*p<0.01, **p<0.05
ADL: activities of daily living
呼吸リハにおける問題点を図1および2に示した.2022年における呼吸リハ実施施設の問題点では(図1),「人員不足」が最も多い問題点として挙げられており(74.9%),次いで「診療報酬が低すぎる(40.2%)」,「呼吸リハに割く時間がない(29.9%)」,「設備不足(29.1%)」,「継続ができない(23.9%)」であった.2014年と比較すると,「人員不足」と回答した施設が62.8%から74.9%へと有意に増加していた.


また,2022年における呼吸リハ非実施施設の問題点でも,「人員不足」が81.4%と最も多い回答であった(図2).次いで「呼吸リハに割く時間がない(27.9%)」,「指導の技術不足(27.9%)」,「スタッフ教育が困難(25.6%)」,「設備不足(18.6%)」となった.2014年との比較では,「継続できない」と回答した施設が0%から9.3%と有意に増加していた.
マニュアルやステートメントの普及状況は,2014年と比較して,運動療法マニュアルの普及率は「知っている」が86.1%から77.2%,「読んだことがある」が77.2%から63.9%,「活用している」が59.2%から55.8%といずれも有意に低下していた(p<0.01).患者教育マニュアルの普及率は「知っている」が70.8%から55.4%,「読んだことがある」が54.3%から47.3%,「活用している」が43.6%から35.0%と,運動療法マニュアル同様有意に低下していた(p<0.01).呼吸リハビリテーションに関するステートメントは,「知っている」が52.7%,「読んだことがある」が43.6%,「活用している」が34.4%と,マニュアル以上に普及率が低値であった.
呼吸リハの実施状況を明らかにするために,2014年と2022年にアンケート調査を実施した.1998年の Kidaらの報告4)では,東京地区での呼吸リハの実施率は低く,その内容も呼吸練習が中心で,欧米型の包括的な呼吸リハとは大きく異なっていた.我々が実施した2014年の調査結果では,日本呼吸器学会の教育施設のほとんどで呼吸リハが実施されており,また内容もより包括的になったことが明らかになった.このようにわが国の呼吸リハの構造が大きく変化したことは,その間に日本呼吸器学会および日本呼吸ケア・リハビリテーション学会などにより呼吸リハビリテーションに関するステートメント(2001年)5)の発刊以降,種々のマニュアルが発刊され,呼吸リハ普及のための活動が進んできたことが大きく寄与していると推察された.
一方,今回実施した2022年の調査では,呼吸リハ実施率や形態は2014年から大きく変化していなかった.プログラムの内容では,患者教育,運動療法ともに多くの項目で2014年よりも実施率が低下しており,包括的に実施されていない可能性が示唆された.呼吸リハプログラムの患者教育,運動療法の実施率が減少している理由として,新型コロナウイルスの流行が一因として考えられる.感染対策のために外来や入院の受け入れが困難で,実施内容が最小限となっていた可能性が示唆された.
実施施設,非実施施設における問題点は2014年と変わらず人員不足が最も多かった.人員不足の原因としては,2番目に多い問題点として挙げられている「診療報酬が低すぎる」が一因と考えられる.疾患別リハビリテーション料の中で,呼吸リハは標準的算定日数が90日,点数が175点(施設基準I)であり,他の脳血管疾患,運動器,廃用症候群,心大血管と比較して算定日数,点数が最も低い.診療報酬の低さがゆえに,他疾患に比較して呼吸リハに十分な人員を割くことが困難であると推定された.この点を改善するためには,呼吸リハに関連する学会が中心となって診療報酬改善への取り組みをしていくことが重要と考えられる.また,マニュアルやステートメントの普及では「知っている」「読んだことがある」「活用している」すべての項目で2014年より低値となった.この原因は不明であるが,標準的な呼吸リハを提供するためにマニュアルやステートメントを周知する取り組みを再考することが早急の課題であると思われた.
呼吸リハを普及するためには,①医療者,患者,行政に呼吸リハの有用性を啓蒙する,②患者がアクセスしやすい呼吸リハプログラムを確立する,③より質の高い呼吸リハプログラムを提供する,④コミュニティベースの呼吸リハの普及,⑤呼吸リハスタッフの質の底上げなどが必要である1).
アンケート結果を踏まえて,筆者が考える呼吸リハを普及していくために重要な点は,ミニマルリソースでの実施,教材の充実,地域連携である.Hollandら11)は,COPD患者を対象に標準的な外来呼吸リハ(週2回の監視下運動療法+週3回の在宅トレーニング)を8週間実施した群と,初回のみ自宅訪問にて運動指導をし,その後理学療法士による電話を週1回×7回実施した群を比較したところ,6分間歩行距離は両群ともに改善し,ミニマルリソースでの呼吸リハは標準的な呼吸リハに劣っていなかったことを報告している.この研究では,在宅呼吸リハ群が指導された運動内容として,ウォーキング,椅子からの立ち上がり,水筒を用いた上下肢筋力トレーニングなど自宅にあるものを活用して十分な効果を得ている.近年では遠隔リハビリテーションの効果も散見され,在宅での遠隔リハビリテーションは病院で実施する外来呼吸リハと同様に効果的であることが報告されている12).最小限のリソースによる在宅での呼吸リハでも,病院で実施する呼吸リハと同様に運動耐容能,健康関連QOLを改善することは可能であるため,患者が在宅でもできる運動をしっかりと指導することが肝要である.また,効果をさらに高めるためには,教材の充実も必要である.呼吸リハの中核となるのは,運動療法とセルフマネジメント教育である.在宅での運動指導をすることで運動療法を継続させ,教材を用いてセルフマネジメント教育も実施できればさらに効果が期待される.近年,呼吸リハに関するセルフマネジメント教育用の教材が環境再生保全機構などから発刊されており13),このような標準化された教材を用いることも有用と思われる.また, COPD患者は自分の症状に関する医療情報を得るためにデジタルメディアを活用する傾向があることが報告されている14).Liuら15)は,COPD患者に対するビデオベースのオンライン呼吸リハプログラムが肺機能,運動耐容能を改善することを報告しており,またMooreらの検討では16),家庭用のエクササイズビデオプログラムが呼吸困難を改善することを報告している.さらに,動画共有プラットフォームであるYouTubeにあるCOPDの呼吸リハに関する動画の信頼性と質を評価した研究では,“pulmonary rehabilitation”のキーワードで検索された人気の動画は信頼できる品質であったことが報告されている17).ただし,誰でも見ることができる動画共有プラットフォームでは内容の偏りや低品質なものも多く散見されるため,間違った知識を与えかねない.患者が在宅で見られるように動画を利用するときは,医療者が信頼できる内容であることを確認した上で紹介することが求められる.さらに,呼吸リハの効果を維持するために地域の病院やクリニックなどプライマリ・ケアとの連携が重要である.今回のアンケートでは,回答施設の多くは急性期病院であり,有床・無床診療所での呼吸リハの詳細な実施状況は不明である.しかしながら,筆者が所属する施設の地域を鑑みても地域の病院やクリニックなどで呼吸リハを実施している施設はほとんどないため,急性期病院である当院で呼吸リハを継続しているのが現状である.このため,地域の中核病院など呼吸リハを実施している施設が中心となって地域の病院と勉強会や情報交換などの連携を図っていく必要がある.近年,各地域で他職種による勉強会や在宅呼吸ケアのネットワーク構築に向けた活動が報告されている18,19).このように,呼吸ケアの地域連携を進めていくことは呼吸器疾患患者の長期的なフォローアップに寄与していくことが期待される.
呼吸リハの実施状況を明らかにするために,2014年と2022年にアンケート調査を実施した.わが国の呼吸リハは2001年の「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」発刊以降,呼吸器関連学会の努力によりその構造は大きく変化し,欧米型の包括的な内容の呼吸リハが急速に普及した.その後,2018年の「新ステートメント」の発刊により更なる呼吸リハの普及に努めたが,その実施率には変化がなく,マニュアルやステートメントの活用状況十分ではないことが明らかになった.呼吸リハをより普及していくためには,ミニマルリソースでのリハや地域連携を充実していくこと,呼吸リハが有効な治療であることを患者,医療者に啓蒙していく必要がある.
本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.