2026 年 35 巻 2 号 p. 142-147
慢性呼吸不全患者は,在宅酸素や在宅人工呼吸などの機器を使用していることも多く,また軽労作での息切れを訴えることも多い,そのような患者が在宅での日常生活を送ることを見据えたさまざまな援助を行うため,作業療法士は非常に重要な役割を担う.
具体的には,日常の基本動作・応用動作の確認と訓練,入浴時のSpO2測定,認知機能の確認,家の間取りの聞き取りと様々な生活場面における行動の確認と相談など,作業療法士が中心となって,状況に応じて多職種と協力しながら進めていく必要がある.場面に応じた酸素流量や,在宅酸素療法の酸素濃縮器を家の中のどこに配置するかといった問題も,作業療法士の観察や聞き取りによって得た情報が非常に重要となる.
南京都病院におけるチーム医療と実際の症例を提示し,慢性呼吸不全患者の包括的呼吸リハビリテーション・生活の安定と作業療法の役割につき紹介する.
第32回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 ワークショップ1
作業療法とは,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である,とされる.ここで言う「作業」とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.
作業療法士は包括的呼吸リハビリテーションチームの一員として,ADL/IADL(Instrumental ADL:手段的日常生活活動)の拡大に向けた効率的な動作指導や住環境整備など,より生活に密着した視点で患者の生活機能向上を担う役割が期待されている1,2).
しかし,このことについての国内外のガイドラインでのまとまった報告は乏しく3),また,カナダの調査では,包括的呼吸リハビリテーションチーム内に作業療法士がいるのはPRプログラムの40%未満であるとも報告されているのが現状である4).
本稿では,作業療法士が包括的呼吸リハビリテーションプログラムの中で果たしている重要な役割について整理し,解説を加えたい.
慢性呼吸不全患者に対する包括的呼吸リハビリテーションは多職種が様々な切り口から患者に介入し,病状の改善・安定,在宅への円滑な移行を目指すものである.その中で作業療法が担う役割としては,(もちろん単独ではなく,他職種と共同して介入するものも含まれる)施設によって若干の差異はあるが,概ね次のようなものが挙げられるだろう.
・酸素流量の評価(安静時・労作時・睡眠時)
・各種酸素吸入デバイス(カヌラ・マスク・オキシマイザーなど)の評価
・酸素供給装置は同調がよいか,連続が良いかの評価
・入浴時の酸素流量評価
・日常の基本動作・応用動作の確認と訓練
・家の間取りの聞き取り
・様々な生活場面における行動の確認と相談
・酸素濃縮器・NPPVの機器を家の中のどこに配置するか
・身体活動を高める
・社会参加や趣味に着目して関わる,生活習慣につながる介入
・認知機能のチェック
・綿密な聞き取りからの各職種への情報提供
・コミュニケーションツールの補助
箇条書きにすると雑然としているので,図1のように整理してみる.

慢性呼吸不全患者の包括的呼吸リハビリテーションにおける作業療法の介入についてのシェーマ,各種問題点を3つのカテゴリーに分け,生活場面とつなげてそれぞれに応じて対処・評価・訓練をしていく.
まず,慢性呼吸不全患者の包括的呼吸リハビリテーションの現場で患者の病状改善,ADLアップ,在宅への移行を妨げる要因を考えてみる.
そしてこれらを,3つのカテゴリーに分ける.
<1.病態>
・低酸素・高二酸化炭素
・呼吸苦
・活動性の低下
<2.個別の問題>
・個々の性格
・病識の欠如
・認知機能の低下
・社会的背景
・不安・抑うつ
<3.他職種に関連>
・栄養障害
・薬剤の内容・手技不徹底
それぞれのカテゴリーと生活場面での問題をつなげて,その場面に応じた対処を考え,評価・訓練していくと考えると最もわかりやすい.
1. 病態まず慢性呼吸不全患者さんの病態と言って真っ先に浮かぶのは低酸素であろう.
故に酸素投与が必要になることが多いが,その詳細については主治医・看護スタッフと連携しながら介入する作業療法の役割が重要となってくる.酸素流量・酸素供給は連続か同調かどちらが良いか,酸素吸入デバイス(カヌラ・マスク・オキシマイザーなど)の選択に加えて,近年手押し型・リュック型など様々な種類がある携帯型酸素供給装置についても,個々の患者の生活パターンや歩き方,行動様式によっても最適なものは変わってくる.そして中でも重要なのは入浴時の評価である.入浴動作は,移動・更衣・洗体・洗髪など複合的な動作の連続を伴い,METs(Metabolic equivalents)数も高いとされている.
また,慢性呼吸器疾患患者のうち約35%の患者においては,入浴時のSpO2最低値は6MWTの最低値を下回ったとの報告もあり,労作時の酸素流量設定は6MWTに加え入浴評価も実施した上で決定することが望ましい5).
具体的な入浴時の評価としては,安静→脱衣→洗髪→流し→洗体→流し→体拭き→着衣と,各場面ごとにSpO2を測定する.この際,体拭きや着衣など,入浴終盤の動作でSpO2が最低値を示すことが多いとされている5,6,7).
これは,体拭きが体幹を折り曲げたり,捻ったりなど大きな動きが多いことに加え,入浴も終盤になり,早く終わらせたいという気持ちからどうしてもオーバーペースになってしまうことなどが原因として考えられている.
故に必要な酸素流量の見極めに加えて,どの動作でどれぐらい酸素が下がるのか,どのぐらいのペースで動けばよいのかを患者さん自身に把握していただくことも作業療法の視点から評価することの大きな意義である.
次に,呼吸苦があると運動を避けて活動性が下がり,筋力低下を招いてさらに軽労作でも呼吸苦が出現するため,ますます運動を下げて活動性が下がる,という負のスパイラルに陥る慢性呼吸不全患者は散見される.
これに対しては筋力増強と身体活動を高めることはもちろんのこと,作業療法の視点からの関わりとして,個々の患者の日常の基本動作・応用動作,そして様々な生活場面における行動を確認・訓練し,患者とともに相談していくことが考えられる.
2. 個々の問題次に患者個別の問題からのアプローチを考えてみる.
患者によって,性格はもちろんのこと,認知機能,社会的背景,不安や抑うつの有無,病識がどれぐらいあるかなどはかなり違っており,画一的な対応が難しいことは言うまでもない.
具体的には,MMSE(ミニメンタルステート検査)やHDS-R(長谷川式認知症スケール),MoCA-J(日本語版モントリオール認知機能評価)を用いた認知機能のチェックや,家の間取りや居住環境に合わせて,酸素濃縮器・NPPVをどこに配置するかなど,生活の動線を相談することは作業療法士の介入が非常に大きなウエイトを占める.さらに趣味や生活習慣に応じてさまざまな工夫をすることも患者にとっては重要である.
慢性呼吸不全患者への入院中の介入が退院後維持できないことは我々も日常良く経験する.これは行動変容の難しさに加えて,退院後に十分なサービスを受けられないこと,トレーニング内容が居住環境に適合できないことなどが原因として挙げられている8).
環境改善が困難であるCOPD患者への作業療法士の関わりの根幹として,時間をかけて習慣化するまで促していく配慮が必要である.あるいは生活動作が習慣化するまで患者に寄り添い,話し合い,オーダーメイドの治療を提供することが作業療法士の役割である.とする報告も見られる2,8).
作業療法士の綿密かつ粘り強い介入が患者の退院を支援し,退院後のQOLをも向上させるのである.
3. 他職種に関連多職種が介入する包括的呼吸リハビリテーションの長所として,介入中に得た患者情報を,専門性の高い他職種に提供することができる点が挙げられる.作業療法においてよく見られるのは,自宅での生活環境をシュミレーションしていく過程で,個々の生活習慣から,医師の処方通りに薬剤の内服や吸入の時間を継続するのが厳しい患者において,薬剤師・医師に情報提供して長期に継続できる処方や吸入の種類などを相談したり,栄養障害のある患者において,自宅での調理環境や介護者による食事提供の詳細などの情報を得て,栄養士に情報提供し個別の事情に対応した食事メニューを提案したりするなどといった場面である.
以上のことを踏まえ,最近南京都病院に包括的呼吸リハビリテーションのために入院した慢性呼吸不全患者で,作業療法の関わりが奏功し,円滑な退院と在宅医療への移行が出来た症例を提示する.
症例:68歳男性 COPD
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
喫煙歴:30本/日×50年,Former smoker
職業歴:工事現場の監督
2005年頃に人間ドックでCOPDと言われたことはあったが放置していた.
2015年6月,咳と痰を主訴に当院初診(このときはCurrent smoker),外来で禁煙を指導しながらLAMA(長時間作用型抗コリン薬)吸入薬にて経過観察としていた.
年1-2回程度,症状増悪にて入院で治療した.2017年7月の入院時にLTOT(安静時 1 L/min,労作時 3 L/min,睡眠時 1 L/min)を導入した.
その後徐々に労作時呼吸苦が悪化し,2022年10月に包括的呼吸リハビリテーションのため入院した(症状増悪以外の入院はこれが初めて).入院時の血液検査では,AST 54 IU/l,ALT 59 IU/l,TG 221 mg/dl,HbA1c 6.3%と軽度の肝酵素異常,中性脂肪の増加,軽度の耐糖能異常を認めた.また動脈血液ガス分析ではpH 7.387,PaCO2 50.2 mmHg,PaO2 72.7 mmHg,HCO3- 29.5 mmol/l(酸素カヌラ 1 L/min,仰臥位)と軽度の高二酸化炭素血症を認めた.
胸部レントゲン・CTでは肺野全体にLAA(低吸収域)が見られ,典型的なCOPDの所見であった(図2).

呼吸機能検査は,肺活量 2.78 L,比肺活量 85.8%,一秒量 0.99 L↓,一秒率(G)45.62%↓,%一秒率42.5%↓,フローボリューム曲線も下に凸の閉塞性障害パターンであった.
入院時の体組成分析(部位別直接インピーダンス測定法)は,身長161.8 cm,体重68.0 kg,BMI 25.97 kg/m2↑,体脂肪率35.0%↑(標準10.0-20.0),部位別筋肉量:右腕 2.48 kg(標準2.33-3.15),左腕 2.32 kg↓(標準2.33-3.15),体幹 20.6 kg(標準19.7-24.1),右脚 7.13 kg(標準6.86-8.38),左脚 6.74 kg↓(標準6.86-8.38),右腕 2.48 kg(標準2.33-3.15)と全体に体脂肪が多く筋肉量が少ない傾向にあった.
<作業療法の介入>
聞き取りと観察から得られた情報
ADL自立,食事・嚥下は問題なし.歩行も問題ないが,ペースが非常に速い.
居住環境・家族との関わりは良好で特に問題なし.
性格的には明るく多弁,せっかち,楽観的であり,病識が薄い傾向があった.
ゴルフ・お酒・カラオケ・卓球・テレビ視聴など,多趣味であったが,呼吸苦を自覚してからは体を動かすものからは離れていた.またよく聞くと本当は付き合いでやっていたものばかりで,自分から進んでやっていたわけではなかった.また見た目や少し話をした周囲に与える印象とは違って,実は本来はかなり人見知りで,知らない人と交流したり,外に出たりするのは昔から本当はあまり好きではなかったことが判明した.
認知機能はMMSE: 30/30,HDS-R: 30/30,MOCA-J: 26/30とほぼ問題なかった.
1. 酸素流量について当初安静時 1 L/min・労作時 3 L/min・睡眠時 1 L/minの処方であった.酸素供給は同調式にうまく呼吸が合わないため一貫して連続式であった.
外出頻度が減っているのは,労作時の息切れもあるが,酸素ボンベが早くなくなるのが心配という理由もあるとのことであった.
歩行時のSpO2評価の結果を表1Aに示す.当初 3 L/minでもSpO2は90を切る状態であったが,筋力・体力の増強とともにSpO2最低値は上がっていった.併せて歩行ペースが非常に速いので,繰り返しゆっくり歩くよう指導し,作業療法士が一定のペースで隣について歩く訓練を行った.その結果 2 L/minでもSpO2最低値は93となり,労作時の酸素流量は医師と相談し 2 L/minに下げることができた.単純計算だが,これで外出時のボンベは1.5倍長持ちすることになった.
| 歩行距離 | 酸素 | SpO2最低値 | 脈拍最高値 | Borg Scale | |
|---|---|---|---|---|---|
| Day 1 | 100 m | 3 L/min | 89% | 106回/min | 2/2 |
| Day 8 | 150 m | 3 L/min | 94% | 99回/min | 1/1 |
| Day 28 | 150 m×2 | 3 L/min | 95% | 101回/min | 1/1 |
| Day 29 | 150 m×2 | 2 L/min | 93% | 101回/min | 1/1 |
また入浴評価も行った(表1B).こちらも同じく当初 3 L/minを要したが,リハビリ継続し,また労作のペースをつかんでから再検したところ,2 L/minでもSpO2は93までしか下がらなくなった.
| <酸素 3 L>(DAY 14) | <酸素 2 L>(DAY 27) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SpO2 | 脈拍 | SpO2 | 脈拍 | |||||
| 安静時 | 95 | 100 | 安静時 | 96 | 98 | |||
| 脱衣 | 97 | 110 | 脱衣 | 96 | 110 | |||
| 洗髪 | 97 | 121 | 片手で洗髪 | 洗髪 | 97 | 112 | 片手で洗髪 | |
| 流し | 96 | 110 | 流し | 97 | 110 | |||
| 洗体 | 96 | 120 | 軽度喘鳴 | 洗体 | 97 | 108 | ||
| 流し | 96 | 126 | 流し | 97 | 114 | |||
| 体拭き | 94 | 128 | やや切迫 | 体拭き | 95 | 108 | ||
| 着衣 | 97 | 107 | 着衣 | 93 | 108 | |||
前述のように,深く介入し話してみると,人見知りで内向的な性格であり,それも外出頻度が減っている要因と考えられたため,歩行などの関わりは,なるべく院外の中庭や敷地内の自然の多いスペースを利用して,外に出る楽しみを再確認し,また身体的にそれが可能であるという自信を持っていただく努力をした.また労作のペース配分や途中で休息をとるタイミングなど,退院後の自宅での生活をシミュレーションした具体的な指導を行った.
これらの結果,筋力・体力は増強し,栄養管理と運動によるカロリー消費もあり体重は68.0 kg→66.0 kg(BMI 25.97→25.21)と減量,労作時酸素も3→2 L/minで固定できるようになった.また内服・吸入している薬剤(7種類)についても,入院時名前と薬効は1つも言えなかったが,退院前には全て言えるようになった.
これらは南京都病院で週一回行われる多職種参加の包括的呼吸ケアリハビリテーションカンファレンス(図3)において情報共有され,栄養士・薬剤師が積極的な介入を早期から行えたことも大きな要因であった.

作業療法を含めた多職種のかかわりで,ADL向上のみならず,病気と正面から向き合い,自分の体との付き合い方・今後の生活について前向きに考えることができるようになった症例であった.
慢性呼吸不全患者への作業療法の関わり,包括的呼吸リハビリテーションにおける大切な役割につき,症例を提示しながら概説した.
病院によって,体制によって,作業療法が担う範囲は若干違ってくるが,重要かつ不変のキーワードは,「生活習慣につながる介入」である.
慢性呼吸不全を理解し,その病態としての問題点,個々の症例に応じた関わりとそれぞれの生活場面に応じた計画を立案し,他職種とも共同しながら丁寧に介入していくことが重要である.
作業療法という職種,包括的呼吸リハビリテーションにおける非常に重要な役割につき,残念ながらその重要度の割に世間の認知度が少ないのが現状である.これを機に,慢性呼吸不全患者に対する作業療法士の関わりが再認識され,読者の皆様が勤務される施設において更なる有機的な診療に結び付けていただければ,筆者として望外の喜びである.
本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.