抄録
各産業の研究開発活動及び事業活動における多角化度を定量的に分析した。多角化度については、エントロピー値という指標により測定した。1980年代においては、多くの産業で研究開発活動の多角化が進展しており、事業活動の多角化についても、研究開発活動に追随するように進展している。次に、研究開発活動及び事業活動の多角化データと産業連関表の産出投入表のデータを用いて、多角化の方向性を川上多角化度及び川下多角化度といった指標により定量化した。そして、研究開発の多角化の方向性を各産業の技術機会と捉え、産業カテゴリー毎に技術機会の方向性を整理した。分析の結果、ハイテク産業及び規模依存型産業は、川下方向への技術機会があり、科学技術と関連のある繊維・医薬・紙パ産業では川上方向への技術機会があると考えられる。さらに、本研究では、収益性向上に資する多角化戦略を検討するため、事例分析を行い、付加価値の高い川下方向への技術の展開を図る多角化戦略が収益性向上に寄与するという仮説を導き出した。最後に、この仮説を示唆する実証結果を多変量解析により得た。