研究 技術 計画
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日本の宇宙開発活動における意思決定メカニズム : 日本の宇宙開発システムにおける根源的な問題の解明とマネジメントの枠組みの再構築(20周年記念 優秀投稿論文)
熊田 憲
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2007 年 21 巻 1 号 p. 53-69

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抄録

今日,日本の宇宙開発には,宇宙技術の利活用による経済社会への貢献また科学技術への貢献という役割が期待されている。しかし宇宙科学の進展と宇宙技術の獲得を目指し実施されてきた宇宙開発が,どのように拡張された役割を担うのか,そのためにはどのようなマネジメントが必要なのかという議論は十分にされてこなかった。さらに近年の宇宙開発は度重なるトラブルの悪循環に陥っており,その要因の究明と解決も急務である。本稿では宇宙開発システムにおける根源的な問題を解明し,現在の利用・産業化という活動環境に適応し得るマネジメントの枠組みを提示することを目的とし,宇宙開発活動全体を複数の大規模プログラムで構成されるシステムととらえた研究を行なった。はじめに歴史的考察により宇宙開発活動における技術的特殊性の問題とマネジメントの問題を指摘した。その分析から,根源的な問題として,宇宙開発システムが宇宙技術の進歩を目的とした活動を優先するパラダイムに閉じ込められていることを導き出し,多様な政策目的をプログラム策定段階から宇宙開発分野に取り込む必要があることを示した。その上で宇宙戦略,政策プログラム,R&Dプロジェクトを階層構造ととらえ考察を行ない,政策プログラムを多様な政策目的とR&D実行のインターフェースと位置付け,このインターフェースにおいて結合と分解という2つの調整行為を行う,新たなマネジメントの枠組みを提示した。

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2007 研究イノベーション学会
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