本論文では研究者数第2位,研究開発費第3位となった中国で論文数が急増している状況とその要因を明らかにするとともに,日中共著関係を米国と比較しつつ明らかにした。論文生産は1990年代後半以降の活発な研究開発を背景に世界第6位の伸び率を示し,世界シェアを約3倍伸ばした。そうした論文の中国研究機関の貢献度と共著相手の外国研究機関の貢献度はほぼ一定の比率で推移したが,被引用度上位10%論文では外国研究機関の貢献度は低下した。分野別では「材料」,「化学」といった中国が相対的に世界シェアの高い分野で,外国研究機関の貢献度が低下したことを明らかにした。また,このような中国の論文生産の増大に対する海外から帰国した研究者の貢献について,インパクトファクターの高い国際ジャーナル2誌を対象に事例分析によって定量的に示した。日中共著関係では中国の国際共著相手国として,アメリカの相対的地位は低下し,日本の相対的地位が上昇しているため,日米格差は縮小傾向にある。分野別では,中国の世界シェアの高い分野で日本の地位は上昇し,アメリカを上回る分野もあることを明らかにした。また,日本の国際共著相手国としての中国の地位は,日本の世界シェアの高い分野で上昇する傾向にある。つまり,両国の世界シェアが高い「材料」,「化学」,「物理」,「工学」の分野で互いに共著関係が深まっていることを明らかにした。しかし,中国の世界シェアが日本より高い「数学」の分野では,日中共著関係は深いとはいえず,一層の協力が望まれる。
抄録全体を表示