抄録
サービスのグローバル展開に向けて,展開先の文化を熟知し,その社会に根を下ろす努力が必要である。これまでの既存研究では,サービスにおける文化的影響の重要性が強調されたものの,その多くは,サービス標準化を進めていく際の注意点として,文化的影響を捉えていたものであり,文化を競争資源として捉えたものではなかった。本稿は,サービス産業のグローバル展開に向けた予備的調査・考察である。ここでは,中国のホテル接遇サービスに関する現地調査を基に,中国の特徴として,(1)多様な接客の方法の共存と認識の共有,(2)ホテル接遇サービスの淡泊さ,(3)文化を基軸とした非日常性感覚の追求を抽出し,その結果を踏まえた上で,文化的影響によるサービス差別化の創出に向けた実践的示唆を提示した。