研究 技術 計画
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イノベーションプロセスとガバナンス
馬場 準一小池 將貴福田 豊生
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1988 年 3 巻 2 号 p. 162-171

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抄録

今日、科学、技術、経済、文化のあらゆる分野に起こる変化にはめまぐるしいものがあり、企業はこれらに対処するために、個人的にも組織的にも多大の努力を払っている。このような努力を実りあるものにするためには、(i)新しい知識、手段を創り出す過程、すなわちイノベーションプロセスと(ii)企業等の組織におけるマネジメントプロセスのそれぞれについての理解を深め、それを踏まえてイノベーションプロセスのマネジメントについての工夫を重ねていく必要がある。本稿では、(i)イノベーションプロセスのモデル化について考察し、それが異化と同化の循環過程として表せること、(ii)ガバナンス(Governance)概念を紹介し、それは狭義の意味での従来のマネジメントを越えたメタコンセプトであること、(iii)ガバナンスがイノベーションプロセスと深く関連していることなどを明らかにし、イノベーションプロセスに対するマネジメントの新しいモデルを提案する。そして、このモデルによって企業における基礎研究のマネジメントについて考察し、問題点と新しい課題を指摘する。ガバナンスの定着化によって、はじめて、リサーチ(ゆらぎの創出)、マネジメント(ゆらぎの増幅)、ガバナンス(新秩序の形成)の3者の共鳴がえられ、イノベーションの成功はこの3者の共鳴に大きく依存していることを結論づける。

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1988 研究イノベーション学会
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