2024 年 38 巻 4 号 p. 378-392
科学技術・イノベーション政策は,広範な政策領域をカバーし,階層構造を有する複雑な行政組織やステイクホルダーが関与している。そのEBPM(Evidence based policy making)には,政策の効果が現れるまでに長い時間がかかること,また,その過程が複雑で様々な要因が関わること等から,困難な面がある。行政実務的には,科学技術・イノベーション基本計画のフォローアップに見られるように,ロジックチャートと記述的な調査分析を組み合わせて,施策の執行状況を可視化や検証していくことが現状である。
EBPMには,産学官の多様な形態の政策調査研究機関・プログラムが支えている。本論文では,基礎資料,枠組みと意思決定プロセス,研究力の測定指標,研究環境,研究費とファンディング,科学技術・イノベーション人材と国際頭脳循環,オープンサイエンス(研究成果の公開・共有),民間研究開発とイノベーション,産学官連携,ベンチャー及び地域の科学技術・イノベーション,重点分野・エマージングな研究領域の分析,並びに,ELSI,STS及び科学コミュニケーションの各政策課題に応じて,EBPMの現況をまとめる。
最後に,今後の課題として,政策担当者と政策研究者の関係性,人材育成及び理論・モデルの観点から論じる。