研究 技術 計画
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特集 科学技術・イノベーション政策におけるEBPM
STI政策における重点分野分析
七丈 直弘
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2024 年 38 巻 4 号 p. 393-405

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抄録

科学技術・イノベーション政策(STI政策)では,近年重点分野分析への関心が高まってきている。その背景には,グローバルな科学研究の競争激化による,萌芽領域や融合領域への関心,社会課題解決への関心,経済安全保障など国際的な秩序の変化による関心などがある。重点分野政策は新しい課題ではなく,科学技術政策の萌芽期から始まり,現在まで継続している活動である。しかし,科学研究の把握に必要なデータの入手可能性の増大,データ処理能力の増大を背景として,以前よりもより詳細な分析が可能となり,また科学分野の細分化と研究速度の増大により,より幅広い範囲をより深く分析する必要が生じたことから,重点分野が示す領域の単位は時代を経てより細かくなってきている。このような分析ニーズに対応するため,計量書誌学を用いた分野把握の手法が開発され,STI政策立案の現場で使用されるようになってきた。分野把握には,論文間の近接性の評価と,その総体としての近接性が高い論文のクラスタリングが必要である。このようにして得られた分野に対して,分野の成長性,経済安全保障上の重要性(物質,サプライチェーン等)による評価が行われる。重点分野分析そのものが萌芽的分野であり,その発展はSTI政策立案の高度化に多いに寄与すると期待される。

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2023 研究イノベーション学会
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