2024 年 39 巻 3 号 p. 337-351
経済地理学によると,組織間における地理的な距離が離れるほど,知識移動の効率が悪くなる。しかしながら,グローバルな範囲で海外の技術や知識を吸収することは,オープン・イノベーションの実践においてよく見られる現象である。近年では,研究開発のグローバル化が続々と注目を集めているが,その有効性についての研究は未だに不足している。本研究は,海外オープン・イノベーションに注目し,それが研究開発活動においてどのような役割を果たしているかについて,定量的な手法を用いて検討した。分析結果より,企業規模は研究成果と海外オープン・イノベーションに正の影響を与えることが確認された。また,海外オープン・イノベーションが研究開発強度と研究成果の関係を媒介していることが判明した。本研究は,企業が海外に知識を探索する必要性を提示した。特に研究開発を努力しても,研究成果が得られない企業にとっては,海外オープン・イノベーションを通じて新しい研究成果を創出する可能性を示した。