研究 技術 計画
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特集 科学技術イノベーション政策の中の人文・社会科学
  • 標葉 隆馬
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 228-230
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    In this special issue, we will consider the future of the humanities and social sciences and their ecosystem, while keeping in mind the changes in "science, technology, and innovation policy." We will look at good practices and try to articulate and visualize the issues involved. We will then look at the future relationship between "science, technology, and innovation policy" and the humanities and social sciences. This issue provides insights based on specific discussions and practical examples. We hope that the insights will help us to consider the future of the humanities and social sciences and their ecosystem in the context of changes in "science, technology, and innovation policy."

  • 佐々木 結, 藤川 二葉, 押海 圭一, 新澤 裕子, 平澤 加奈子
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 231-245
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    欧米を中心に進行してきた一連の研究評価の改革の動きは,「責任ある研究評価」という包括的な概念のもとに集結する展開を見せ,「研究評価改革に関する合意」とその連合へと結実した。国内では,ここ数年で「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)」の署名機関の増加など,研究評価改善への意識の高まりが確認できるものの,欧米の動きに比べるとまだ限定的である。

    近年,研究評価に論文指標を中心とした定量的アプローチが多用されるなか,人文・社会科学系URAネットワークは,人社系研究の適切な評価を巡り継続的に議論を重ねてきた。分野や立場が異なる関係者と課題を共有し,同じ議論の「堂々巡り」に陥らないための仕組みの必要性を痛感していた同ネットワークでは,DORA Community Engagement Grantの助成を受け,既存の論点を整理した「論点地図」を作成した。

    本稿ではこの「地図」の位置付けと意義,活用方法を論じたうえで,国立大学の第4期中期目標期間に新たに導入される社会的インパクト評価について,「地図」を利用した論点整理を試みる。そのうえで,「地図」の更新作業を含め,研究評価の改善に向けた今後の議論のあり方について展望する。

  • 小出 直史
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 246-262
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,人文学・社会科学領域における共創やイノベーション創出における「場」のあり方について,これまでの人文学・社会科学の振興の経緯を概観し,共創型プロジェクトの重要性が指摘され,設計・実施された「文部科学省委託事業 人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト(以下,学術知共創プロジェクト)」を事例に検討する。本稿が対象とするのは,学術的な個別議論の内容ではなく,共創やイノベーションにおける「場」に焦点を当てた機能的および構造的な課題を整理することである。はじめに,学術知共創プロジェクトを振り返り,「場づくり」と「チーム構築」の関係について検討し,「場」そのものと「場」の前後機能にフェーズを分けて考察を試みた。質の高い「場」を準備することで「チーム構築」が達成されるという言説が成立困難であることに言及し,「場」という機会提供にばかり焦点が当たっている現状に対して,暗黙知となりがちな設計思想や機能についてプロジェクトマネジメントの要素とともに実践的に整理する。そして,研究者へ集まる過度な要請に対して,研究者の外側に研究企画や支援機能を用意することが,研究者に対して優しい共創やイノベーションの環境整備に繋がり,一層の振興を育むための土壌になると考える。

  • 鹿野 祐介, 肥後 楽, 森下 翔, 長門 裕介, カテライ アメリア, 鈴木 径一郎, 工藤 郁子, 井上 眞梨, 多湖 真琴, 標葉 隆 ...
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 263-280
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    2000年代以降,日本では,責任ある研究および新たなイノベーションの創出に向けた,科学技術の倫理的・法的・社会的課題ないし含意(ELSI)に関する産学連携の取り組みおよびその機会が充実しつつある。大阪大学社会技術共創研究センターと株式会社メルカリの研究開発組織であるmercari R4Dは,2020年から新規科学技術のELSIを見据えた責任ある研究開発の推進とイノベーションの創出を目的とした産学共同研究を行っている。本稿では,この共同研究のプロセスとその成果について概観し,産学連携の文脈において人文社会系研究者がどのような貢献を果たしたかを明らかにする。また,人文社会系研究者がそれら役割を果たすことがいかにして可能かを検討する。

  • 柴藤 亮介
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 281-294
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,学術系クラウドファンディングの現状と可能性について,人文・社会科学分野に焦点を当てて考察する。学術系クラウドファンディングの成功には,研究者や研究テーマへの「共感」が鍵となり,そのためには研究者が「研究のVision」を明確に発信することが重要である。特に人文・社会科学分野は,身近で共感を得やすい研究テーマが多く,また研究に必要な資金規模が比較的小さいことから,学術系クラウドファンディングとの親和性が高い。研究のVisionの発信は,多様なステークホルダーとの協働や新たな研究パラダイムの創出,AI時代の課題への対応にもつながる。また,学術系クラウドファンディングは寄付文化の民主化や市民参加型の意思決定メカニズムとも相互に作用し,中央集権型から分散型へと研究推進体制を変革する可能性を持つ。研究者一人ひとりが社会との対話に踏み出すことで,学術研究の新たな地平が拓かれていくのである。

  • 七丈 直弘
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 295-307
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    ソーシャル・データサイエンスは,社会科学とデータサイエンスの融合により生まれた新興の学際的研究領域である。本論文は,ソーシャル・データサイエンスの学術的・社会的意義と発展可能性を,科学技術政策の視点から多角的に考察する。まず,計量書誌学と未来洞察を,ソーシャル・データサイエンスの源流として位置づけ,科学技術と社会の関係性の理解における役割を明らかにする。次に,責任ある研究・イノベーション(RRI)の概念を導入し,ソーシャル・データサイエンスがRRIの実現に果たすべき役割を論じる。さらに,ソーシャル・データサイエンスの発展可能性と社会課題解決への貢献の道筋を示しつつ,直面する倫理的・法的・技術的課題に言及する。これらの議論を通じ,ソーシャル・データサイエンスが学術と社会の協働を促進し,エビデンスに基づく社会課題解決に寄与する重要な学問領域であることを明らかにする。ソーシャル・データサイエンスの更なる発展が,持続可能な社会の実現に資することを展望する。

  • 後藤 真
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 308-321
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,デジタルヒューマニティーズ(DH)の日本の状況について,その歴史を踏まえつつ述べるものである。DH分野は,第6期科学技術・イノベーション計画において「総合知」を実現させる一つの可能性として注目されている。本稿では,DHが日本に根付いた過程を振り返り,DHの現在と未来の可能性について考察する。1990年代前半には,人文学に情報学が応用される動きが見られ,いくつかの研究機関でデータベース構築が進められていた。また,いくつかのDHに関係する学会が立ちあがろうとしていた。当時の関係者のコメントから,共有方法や学際性,国際性の利点が指摘され,現在とも共通する課題が見える。その後,2000年代には総務省の旗振りのもと,デジタルアーカイブブームがあったが,人文学の資料や成果のデジタル化については,個別のプロジェクト提案があったのみで,当時,政府の支援は多くなかった。この状況が変わったのは,「総合知」の概念が登場してからである。文部科学省でも情報技術の活用が議論され,人文学振興施策にも取り込まれた。1990年代の萌芽と関連する文脈も見られる。また,総合知の提案後にはDH講座が大学に増えている。人文学の振興施策の中には,これらを総体的に把握しようとする流れも存在している。そのような状況を踏まえつつ,DHの発展を3つの類型に整理し,今後の展望を述べた。

  • 白川 展之
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 3 号 p. 322-336
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
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    本稿では,人文社会科学と地域イノベーションの関係を,地域の工業,農業,医療など科学技術分野別の技術行政の構造と特徴を示すとともに,明治期に遡る公的試験研究機関や大学の過去の政策遺産の形成過程から論じる。戦後高度成長期の産業立地政策の展開をもとに,地域の科学技術イノベーション施策が地域における科学技術振興から地域イノベーション・エコシステムへ政策が展開される中で,選択と集中などの政策の基本思想がどう生まれたのかを示す。

    また,地域のエコシステムと政策の関係では,国立大学法人化後に起きた臨床医学の研究力低下と医師不足の問題を紹介し,今後の政策企画立案にはシステム思考が求められることを述べる。さらに,かかる問題を防ぐため人文社会科学側から,地域総合大学がELSIを結節概念に総合知のプラットフォームとなる責任ある研究・イノベーションとして自己変革を進める動きが出てきたことを,新潟大学のELSIセンターの事例を通じて示す。

研究論文
  • 李 方堃
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 39 巻 3 号 p. 337-351
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/01/14
    ジャーナル フリー

    経済地理学によると,組織間における地理的な距離が離れるほど,知識移動の効率が悪くなる。しかしながら,グローバルな範囲で海外の技術や知識を吸収することは,オープン・イノベーションの実践においてよく見られる現象である。近年では,研究開発のグローバル化が続々と注目を集めているが,その有効性についての研究は未だに不足している。本研究は,海外オープン・イノベーションに注目し,それが研究開発活動においてどのような役割を果たしているかについて,定量的な手法を用いて検討した。分析結果より,企業規模は研究成果と海外オープン・イノベーションに正の影響を与えることが確認された。また,海外オープン・イノベーションが研究開発強度と研究成果の関係を媒介していることが判明した。本研究は,企業が海外に知識を探索する必要性を提示した。特に研究開発を努力しても,研究成果が得られない企業にとっては,海外オープン・イノベーションを通じて新しい研究成果を創出する可能性を示した。

編集後記
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