近年エレクトロニクス分野を中心に、規格競争(ほぼ同一の機能をもつ製品に関して、基本的規格の異なる複数の製品が存在する場合に行われる企業間競争)が激化しており、どの規格を選択するか、どのような規格に統一されるかが、企業の業績にも大きな影響を与えてきている。競争戦略の研究からは、リーダー企業のとるべき戦略原則が示されている。その一つに下位企業の徹底した模倣による同質化競争があげられているが、製品の規格がからむ競争の場合には、同質化競争が、かえってリーダーに不利になる状況が起きている。本稿では、規格競争が激化している背景と現状を明らかにしたうえで、規格競争を踏まえた戦略原則を提言しようと試みた。規格競争をとらえる視点としては、市場確立前と確率後に分け、後者についてはさらにリーダーとチャレンジャーという競争地位別に提言を行った。市場確立前には、(1)技術の流れに沿った規格の選択、(2)潜在的に強い力をもった企業との連携、(3)早期にソフトウェアを蓄積し、事実上の「標準」を形成、という戦略が必要である。また、市場確立後にリーダーのとるべき戦略としては、(1)同質化競争のポリシーの明確化、(2)「良い競争業者」をもつ、(3)従来製品との互換性の保持などが重要である。一方チャレンジャーのとるべき戦略としては、(1)互換性を軸に下位連合を形成、(2)技術革新の節目を利用した反撃などがあげられる。