2026 年 41 巻 1 号 p. 23-31
本論考は知の承継としての名家旧家の家訓とその行動特性について考察するものである。家訓を取り上げる理由は,歴史の中で生き残った多く名家旧家の哲学を効率的に解析し,その成功哲学を経営学的な視点で修得しようとするものである。いわゆるベンチマーク,ベストプラクティス,ロールモデルの至宝が名家旧家の家訓の中にちりばめられているはずである。無論,時代背景も個別の経営環境も異なるので,現代の事業の成功者や資産家の行動も参照しつつ,知の承継を理解する便とする。論考の内容は,第一に名家旧家の出自と形式的な区分による定義と家訓の機能の整理,第二に日本の経済経営,特に地域経済・文化の繁栄に尽力した多くの名家旧家の家訓行動と事業創成のプロセスの理解,第三にいわゆる世界のビリオネア(億万長者)といわれる著名な資産家の事業創成行動,第四に華僑の資産移動にみられる時代が生んだ共生行動について解説する。家訓がもたらす統制と規範化行動のプロセス,家訓にまつわる陥穽とその克服の検証が,次世代人材への新たな知の承継として結実し,次代の泰山北斗のイノベーティブな指標となり,新たな示唆となることを期待するものである。