研究 技術 計画
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日韓繊維産業の成長過程と技術の源泉
杉浦 恵志
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1995 年 9 巻 1_2 号 p. 63-76

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抄録
本論文は、日韓繊維産業の成長過程を技術変化の源泉に着目して定量的に分析し、析出された差異を定性的に説明せんとするものである。まず、労働生産性を固定資本の量的拡大によって説明できる部分と説明できない部分(技術変化による部分)に分け、繊維産業の各工程において、企業の規模が2つの部分の比率に及ぼす影響を測定した。その結果、日本では、資本指向的な川上部門の大企業と技術指向的な川中部門の中小企業が、相互補完的な系列関係を形成しているのに対し、韓国では、両部門が資本の豊かな大企業の方が技術指向的となり、垂直分業が効率的に機能していないことが判明した。このような差異は、実は両国繊維産業における系列形成過程の差異に起因するように思われる。合繊維物の場合、日本では、外国から導入された技術で国産化した合繊を商業化するため、原糸メーカーが川中技術を研究して糸とともに情報を提供した。現在は指導育成された川中業者が中堅企業に成長し、多品種少量生産の展開に中心的な役割を果たしている。他方韓国では、輸入原糸の調達力を武器に輸出商系の製織業者が巨大化して、原糸メーカーより先に系列を形成した。大企業自体長い間商品企画を海外に依存した結果、川中中小企業は少品種大量生産の一端を担う単純下請に留まり、大企業の生産性向上によって逆に稼働率の低下に追い込まれているように見える。
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1995 研究イノベーション学会
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