抄録
このシリーズの前3報において提案されたシュミレーション用モデルは、元来素材系企業の企業活動を記述する目的で構築された統計的モデルであった。しかし適用条件を適当に工夫すれば製造業全般に対し適用可能との前報の発想をさらに発展させ、モデルを構成する記述式群をその目的に沿うべく形式的に一般化した。その一般化モデルを利用して、素材系企業を含みそれよりも川上よりの企業では一般に単品を生産販売し独立採算型事業部制を敷いている事実を、経済的合理性の観点から解釈することができた。さらに進んで、製造業各企業の主要な経営管理指標を出力側と入力側とでそれぞれ3個ずつ設定し、各管理指標について、入力〜出力の対応関係を直接比例関係轤して個別に設定することができた。その際得られる3個の比例定数は、いずれも業種や企業規模には無関係な値に収斂することがわかった。それに関連して、市場規模〜販売単価の両対数グラフ上における素材系製品群と組立て型最終製品群の相対位置について、文献(1)の図2のような現実の姿がどのような仕組みで決まっているのかについても、1つの解釈を得ることができた。最後に、製造業各社の総従業員数〜売上高に関する最近のデータを入力〜出力の対応関係の1つとして解析し、その結果をプラザ合意(1985年)当時の結果と比較した。