超音波検査技術
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症例報告
僧帽弁輪石灰化の経過観察中に,左室流出路側に可動性腫瘤が認められた1例
髙橋 秀一菊田 多恵子橋和田 須美代桑野 和代松谷 勇人泉 知里
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2016 年 41 巻 4 号 p. 400-406

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抄録

心エコー検査において,心腔内の異常構造物の存在に遭遇した際には,心臓の正常および異常解剖の理解,アーチファクトの理解,腫瘤性病変の特徴に関する理解が鑑別の決め手となる.今回我々は,心膜液貯留および僧帽弁輪石灰化にて経過観察中に,左室流出路側に可動性腫瘤を認めた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

症例は78歳女性,10年前に心拡大を指摘されたため心エコー検査が実施され左室壁肥厚と心膜液貯留を認めた.以来,1年に1~2回外来にて保存的に経過観察中であった.初回検査から通算15回目の検査時に,石灰化した僧帽弁前尖後交連側の左室内に可動性を有する腫瘤を認めた.腫瘤の性状は音響陰影を伴わず,茎は明確に判断できなかったが,疣腫様で感染性心内膜炎を疑う所見であった.CRP陰性,血液培養は4回とも陰性で感染性心内膜炎は否定的であったこと,CTおよびMRI所見,経食道心エコー検査による精査の結果から,石灰化した僧帽弁輪の一部が剥離し浮遊している可能性が考えられた.短期間に性状が変化していたため,心原性塞栓症のリスクを回避するために腫瘤の摘出手術となり,病理結果は,フィブリンの石灰化成分を含んだものであった.

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© 2016 一般社団法人日本超音波検査学会
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