超音波検査技術
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症例報告
経胸壁心エコー図検査にて経カテーテル大動脈弁留置術後に生じた血栓弁を指摘しえた6症例
宮﨑 明信山本 理絵岡村 優樹宮﨑 いずみ原田 美里時吉 恵美大迫 亮子是枝 和子城戸 隆宏中釜 美乃里梅橋 功征野﨑 加代子古野 浩
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2021 年 46 巻 3 号 p. 208-216

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抄録

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)施行患者の約1割で血栓弁を生じるという報告があり,塞栓症のリスクとなる.心エコーによる評価では大動脈弁最大血流速度(AV PFV)や大動脈弁平均圧較差(AV MPG)についての報告はあるがその他所見についての報告はない.今回,経胸壁心エコー図にて指摘しえたTAVI後血栓弁の6症例について心エコー所見を中心に報告する.

Bモード断層像では5例でTAVI生体弁開放制限を認めた.カラードプラ法では5例で収縮期におけるカラーシグナルの収束,全例でカラーシグナルの欠損所見を認めた.血栓弁指摘時のAV PFVは,3.1±0.4 m/s, AV MPGは22.3±6.3 mmHg, 術後翌日との変化値は,AV PFV 0.9±0.1 m/s, AV MPG 11.3±2.9 mmHgと上昇していた.AT, DVI, EOAはほとんどの症例で延長もしくは低下していた.

TAVI後生体弁ではAV PFVやAV MPGは必ずしも極異常値を示さないため,DVIやEOAは過去値との比較が有用であった.しかし血栓弁前後の変化値が小さい症例もあるため,Bモードでの開放制限やカラードプラ法を用いたカラーシグナルの収束・欠損も血栓弁を疑う重要な所見であった.経胸壁心エコー図では血栓自体の描出は困難であるが,注意深い弁の観察はTAVI後血栓弁検出に有用であると考えられた.

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© 2021 一般社団法人日本超音波検査学会
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