2021 年 46 巻 4 号 p. 347-353
症例は80代男性.2年前にStanford A型大動脈解離を発症し,ステントグラフト挿入,大動脈弁置換術,三尖弁形成術を施行.今回,呼吸苦にて他院より心不全疑いで当院受診した.来院時血圧は69/49 mmHgで明らかな心雑音は聴取できなかった.経胸壁心エコー検査では,壁運動低下なく,左室中部から心尖部まではやや過収縮であった.パルスドプラ法による左室流出路速度波形により算出した心係数は5.9 L/min/m2と高拍出状態であった.推定肺動脈収縮期圧は54 mmHgと上昇し,肺高血圧を示唆する所見を認めた.上行大動脈人工血管と周囲の自己血管間に無エコー領域を認め,自己血管径は66 mmと著明に拡大,カラードプラ法にて吻合部近位にleak flowおよび人工血管周囲に拍動性の血流を認め,仮性動脈瘤の形成が疑われた.大動脈弁短軸レベルで右肺動脈近位部の主肺動脈から肺動脈弁に向かう異常血流シグナルが観察され上行大動脈置換術後仮性動脈瘤から肺動脈への穿破を疑った.造影CTにおいても同様に仮性動脈瘤の形成および肺動脈への穿破が否定できない所見であり,仮性動脈瘤–肺動脈穿破と診断された.今回,我々は非常に稀な上行大動脈置換術後仮性動脈瘤–肺動脈穿破の症例を経験し,経胸壁心エコー検査が有用であったので報告する.