超音波検査技術
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症例報告
冠状動脈塞栓と心室中隔穿孔をもたらした感染性心内膜炎の1例
枝光 泰聖石神 弘子丹羽 薫子玉腰 いづみ海老名 祐佳廣瀬 未来加藤 亙吉田 幸彦
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電子付録

2022 年 47 巻 4 号 p. 388-397

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抄録

症例は40代男性.既往はアトピー性皮膚炎.当院救急外来に発熱,意識障害にて搬送された.来院時の意識レベルはGCS: E3V4M5. 体温40.2°C,感染性心内膜炎(IE)を疑ったが,頻脈であったため心雑音の聴取は困難であり,経胸壁心エコー検査(TTE)の評価も困難であった.採血,髄液検査の結果,菌血症および髄膜炎疑いで入院となり,翌日の血液培養にてMSSAが検出された.入院後もIEを疑い,第2病日にTTEを施行.壁運動異常および大動脈弁逆流(AR)を認めた.左室の壁運動はびまん性に低下し,特に心室中隔から心尖部の壁運動は著明に低下していた.第8病日に経食道心エコーを施行し大動脈弁右冠尖,左冠尖間の弁輪に疣腫を確認した.同部位からもARを確認し,経時的に増加していた.ARの増加に伴い心不全を来したため,準緊急的に外科的治療を行う方針となったが,術前に心室細動となり緊急手術を実施.術後経過は良好でリハビリを進めていた.術後18日目にTTEを施行したところ,術前に高度壁運動低下していた心室中隔の中部は菲薄化し瘤状となり,同部位で左室から右室へ向かう短絡血流を認め,肺体血流比は1.40であった.TTEにより心室中隔穿孔と判断され,翌日緊急に閉鎖術を施行することとなった.今回,我々は非常にまれなIEによる冠動脈塞栓に心室中隔穿孔を合併した1例を経験し,経胸壁心エコー検査が有用であったので報告する.

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© 2022 一般社団法人日本超音波検査学会
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