論文ID: 342
目的:本研究の目的は,特発性孤立性上腸間膜動脈解離(Spontaneous Isolated Superior Mesenteric Artery Dissection: SISMAD)における超音波画像の経時的な変化を解析することである.
対象と方法:対象は2013年3月~2020年1月に当院で超音波検査にて最初にSISMADと診断された21例のうち10例(平均年齢48.2±3.9歳,男10例)である.計測項目はSMAにおける最大外径,最小内径,最大狭窄率,平均狭窄率で,これらを発症日,発症から約3日後,約1週間後,約1か月後,約3か月後と分類した各フェーズで計測した.さらに各フェーズにおける,発症日を基点とした増減率を算出した.
結果:最大外径:発症から徐々に血管径は拡大し,約1か月後に+9.8%と最大の拡大率となった.最小内径:約1か月後に−31.4%と最大の内腔狭小化が生じた.最大狭窄率:発症日から徐々に狭窄が進行し,約1ヶ月後に+26.3%とピークとなった.平均狭窄率:発症から約3日後に−3.3%とわずかな軽快傾向があったが,約1か月後には+22.5%とピークとなった.全てのパラメータは約3か月後にはピークアウトした.
結語:SISMADの経時的超音波画像所見として,狭窄は約1週間後から一度増悪し,約1か月後にピークになる傾向を認めた.画像所見は増悪傾向となっても,腹痛の増強などの臨床所見に注意しながら,保存的加療が期待できる可能性がある.