論文ID: 392
症例は70代男性,他院で高脂血症,高尿酸血症に対し経過観察中であったが,労作時の息切れを主訴に当院受診となった.来院時経胸壁心エコー図検査において,右心系の拡大やMcConnell’s signなど肺塞栓症を疑う所見は明らかではなかったが,右房内のキアリ網に付着した可動性を有する血栓を認めた.同日施行した造影CT検査で,両側の肺血栓塞栓症および下肢深部静脈血栓症の診断に至り,即日入院加療となった.入院5日目の経胸壁心エコー図検査で,右房内血栓の消失を確認し,入院7日目には経過良好で退院となった.
今回,下肢深部静脈血栓症を契機に肺血栓塞栓症を発症し,右房内のキアリ網に血栓が捕捉されたことで重症化を防いだと考えられる症例を経験した.文献学的考察を含め,報告する.