超音波検査技術
Online ISSN : 1881-4514
Print ISSN : 1881-4506
ISSN-L : 1881-4506

この記事には本公開記事があります。本公開記事を参照してください。
引用する場合も本公開記事を引用してください。

心エコー法による右房圧推定精度の検証:ガイドラインに基づく副次的指標の再考
村山 迪史加賀 早苗小野田 愛梨岡田 一範中鉢 雅大横山 しのぶ西野 久雄青柳 裕之玉置 陽生本居 昂石坂 傑岩野 弘幸永井 利幸辻野 一三安斉 俊久
著者情報
ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: 407

この記事には本公開記事があります。
詳細
抄録

目的:アメリカ心エコー図学会のガイドラインには,下大静脈計測に基づく右房圧推定の精度を補完するものとして,拘束型の右室流入血流速波形,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比,肝静脈血流速波形のsystolic filling fractionが示されている.本研究では,これらの副次的指標が右房圧上昇の予測能を改善させるかを明らかにするとともに,右房面積計測の付加的価値を検討する.

対象と方法:心疾患患者128例において右心カテーテル検査で平均右房圧を計測し,≧8 mmHgを上昇とした.下大静脈の径とsniffによる虚脱率から,推定右房圧を3, 8,15 mmHgに分類した(モデル1).右室流入血流速波形の拘束型パターン,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比,systolic filling fractionを評価に加えて,推定右房圧の再分類を行った(モデル2).右房の最小と最大面積および容積を計測し,それぞれのexpansion indexを算出した.

結果:右房圧の上昇を29例に認めた.ロジスティック回帰分析で,モデル1における推定右房圧とsystolic filling fractionは,平均右房圧上昇と有意に関連した(ともにp<0.05).拘束型パターンを呈した例はなく,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比は右房圧上昇と関連しなかった.右房の形態・機能指標は,いずれも右房圧上昇と関連し(すべてp<0.05),最小右房面積が最も強く関連した(右室面積変化率で補正後のオッズ比:10.64, p<0.01).尤度比検定では,モデル2の右房圧上昇の予測能はモデル1と同等であったが,systolic filling fractionと最小右房面積を用いた新しいモデルは,モデル1より良好に右房圧上昇を予測できた.

結論:従来の副次的指標を用いた再分類により右房圧上昇の予測能は改善しなかった.肝静脈血流速波形のsystolic filling fractionと最小右房面積を右房圧の評価に加えると,右房圧上昇の予測能は改善した.

著者関連情報
© 2023 一般社団法人日本超音波検査学会
feedback
Top