超音波検査技術
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超音波検査が診断に有用であった総大腿静脈外膜囊腫の1症例
山崎 正之溝口 和博田村 仁香原口 律香堀家 由貴兼田 幸希髙塚 慶子田外 大輝馬渡 未来藤田 淳子髙岡 理恵安田 栄泰竹内 陽史郎
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: 409

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抄録

症例は60代の女性.左下腿腫脹が3か月前から出現し,徐々に増悪したため近医を受診した.近医で施行された下肢静脈超音波検査では深部静脈血栓症は否定され,精査目的で当院に紹介された.血液生化学検査では凝固能異常は認めなかったが,CT検査で左総大腿静脈に接する腫瘤あるいは限局性病変を疑う像が観察され,静脈還流障害の原因となる可能性が指摘された.当院での下肢静脈超音波検査においても明らかな血栓像は認めなかったが,左総大腿静脈に23×13×6 mm大の腫瘤性病変像が確認された.腫瘤内部は大部分が無エコーで隔壁様構造物を認め,探触子の圧迫により腫瘤の変形はなく,積極的に血栓は疑わなかった.MRI検査では,左総大腿静脈にT2強調像で高信号,T1強調像で低信号の多房性囊胞構造が認められ,リンパ管奇形や外膜囊腫などの良性病変が疑われた.以上より,左総大腿静脈外膜囊腫による静脈狭窄と診断され,心臓血管外科で摘出術を施行.摘出標本では,静脈の外膜に多房性囊胞の形成を認め,外膜囊腫と診断された.外膜囊腫は比較的まれな疾患であり膝窩動脈外膜囊腫などが知られるが,静脈での外膜囊腫はさらに稀であり,外膜囊腫全体の5%程度であるとされている.今回我々は,左下肢腫脹の原因検索に超音波検査が有用であった症例を経験したので報告する.

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© 2023 一般社団法人日本超音波検査学会
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