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わが国の農業は深刻な後継者不足にある。現在、各種の就農支援策が講じられているが、依然として新規就農は困難である。前稿1では、就農時に複数の問題が集中して起こることを指摘し、段階的に就農するためのプロセスを考察した。その成果をもとに、本研究は新規就農を促すシステムとツールの一例として、 農業専門図書館「IGUNE」を提案した。「IGUNE」は、宮城県加美郡加美町の田園の一角に建てることを前提としている。この地域の家はイグネと呼ばれる防風林に囲まれており、そこから外観と名前を発想した。「IGUNE」は、農業書専用図書館・直販所(野菜など)・農業相談窓口の3つの機能を持っている。これらの機能が組み合わさることで次のような効果が得られる。 ・農業への関心の拡大(農業書と直販所の組み合わせによる相乗効果) ・農業・農村の窓口(関心のレベルに合わせた農業相談)このように「IGUNE」は、一般の人々の農業への関心を高め、段階的に農業と関わりつつ、最終的に新規就農するためのシステムを有している。このことによって、「新規就農者の増加」と「農業人口の底上げ」が期待できる。