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本論は、アーデルベルト・ニーマイヤー(Adelbert Niemeyer, 1967-1932)がニュンフェンブルク磁器マニュファクチュア(Die Porzellan-Manufaktur Nymphenburg)に提供した820番という食器セットをめぐる問題について検討するものである。820番の装飾模様の中でも、金彩による装飾模様752番は820番のセットに最もマッチしており、ベストセラーになると同時に意匠保護期間が終了した1909年以降、次々に作品のコピーが出回ることになった。ニーマイヤーのセットが成功した要因は、そのモダンなデザインと共にニュンフェンブルク磁器マニュファクチュアがこの頃展覧会を通して新たな販売ルートを開拓したことが挙げられる。有限会社ドイツ手工芸美術工房が販売に関わった他、デューラーブントもニーマイヤーのコーヒーセットを掲載した商品カタログを売り出した。ウィーン工房も関心を示したニーマイヤーの清新なデザイン感覚はウィーン・ゼツェッションにも共鳴するものであり、シンプルなフォルムは容易にコピーできるため多くのコピーが出回るなどの問題が絶えなかったが、ニュンフェンブルク磁器マニュファクチュアにモダン・デザインを持ち込み、普及させた所にニーマイヤーの功績があったと考えられる。