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ユニバーサルデザイン(共用品)の考え方から、車椅子利用者を中心にして、我々に馴染みのある家具:箪笥を見直した。障害者の家庭でのモニター調査の結果、現在の箪笥は以下の問題を車椅子利用者に与えていることがわかった。1.引出しを引きながら後に下がる必要があり、車椅子には困難である。2.車椅子の足が箪笥に当たり近づけない、このことで、引出しの奥のものが取り出しにくい。そこで、引出しを直線的に引出すのではなく、半円形にして回転させる方法を採用した。従来の箪笥は、車椅子の足が当たり近づけなかったが、最下段をクリアランススペースにしてアクセスを容易にした。試作を行い再び車椅子利用者にモニター調査を行った。意図した回転式の引出しは概ね期待通りに機能を果たすことがわかった。いくつか未解決の問題は残されているが、箪笥という古典的な道具に、新しいイメージとユニバーサルデザインの機能を盛り込むことに成功した事例と考えている。