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『金瓶梅』は、中国の古典文学で四大奇書のひとつとして知られ、明時代の万暦年中頃に書かれると言われる。 本稿は、『金瓶梅』にみえる家具の中で、案と坐具についての考察を行い、家具・室内意匠の特性について明らかにすることを試みる。考察の結果、次の4つについて明らかになった。(1)交椅は、時代により、名称と形態は異なる。(2)西門慶邸の書斎には、東坡椅や酔翁椅が陳設され、形状も他に類が見られない。(3)主に女性の住まいや妓院に陳設される坐具は、坐具としての用途だけではなく、室内意匠の要素のひとつになっていると考えられる。(4)家具・室内意匠と人物描写には、関連性がある。家具・室内意匠の描写を通して、登場人物の社会的身分や生活様式が表現されている。