抄録
人々は日常生活の中でさまざまな表現とその成果を鑑賞する活動をおこ なっている。それら活動を「市民芸術表現」と呼ぶ。個人や家庭で行わ れる写真撮影やビデオ記録は、非専門家である人々の日常の中にある表 現活動であり、さまざまな道具やシステムがそれら活動を支えている。 しかし、人々の日常的な表現やその成果の交換や鑑賞が、容易に行われ ている状況とは言えない。本研究では、それら問題を越えてゆくために 重要な要因として、表現する人々の「表現したい気持ち」に着目した。 その気持ちを基盤とする、立ち現れるように生まれる表現活動の構造と メカニズムについて考察する。表現活動の仕組みとして見い出された概 念は「作品の入れ子構造」「活動における表現とモチーフのカップリン グ構造」「しつらえとしての場」である。また、表現活動の形成におけ る、デザインできる対象とできない対象という着眼点から、デザイン可 能空間、半デザイン空間、立ち現れる空間、の表現のための問題空間構成を導出した。