抄録
本研究は20世紀以降に登場した環境グラフィックの諸事例を通じて、都市空間における効果を考察したものである。研究の結果、次ぎのような効果が環境グラフィックから見受けられた。一つ目は経済的効果である。主な素材としてペイントが用いられる環境グラフィックは、建物構造の補修よりは、簡単で安価である点で、経済的と言える。また、環境グラフィックの設置によって、街に新たな魅力が加わり、多くの観光客が誘致され、町の収入の増加にもつながる。二つ目は社会的効果である。特にコミュニティの文化や歴史から素材を得た壁画からは、自らのコミュニティのアイデンティティの確率と伝統の継承、そして社会へのメッセージの発信などの役割が見られた。三つ目は文化的効果である。薄暗くて古い建物が立ち並ぶ街並が環境グラフィックの設置によって、明るくて活気に溢れる姿に生まれ変わると同時に、町には新たな文化的価値も加えられる。その一連の努力が世間から高い評価を得たことは、住民たちの誇りにもなる。このように、環境グラフィックは、その豊かな色彩と大胆なグラフィックから来る存在感を持って、20世紀の都市空間において様々な影響を与えてきたことが、諸事例から確認される。