抄録
ユーザ観察は製品開発プロセスの上流段階において,アンケート等の調査手法では抽出できない言語化困難な要求や,ユーザによって意識化されない潜在的な要求を探り出すための有力な手段の1つである.ユーザ観察は,ユーザの無意識的な行動や,ユーザと人工物や環境との関わり合いを手掛かりとしてデザイン課題を抽出することを目的とする.ユーザ観察の有効性は観察者の経験やスキルに依存しており,観察者の能力によって抽出できるデザイン課題は大きく異なる.またユーザ観察は多くの時間と手間を要するにもかかわらず,技術的な支援があまり行われていないのが現状である.本研究ではユーザ観察の現場調査に基づいて,ユーザ観察時の事象の記録,および観察事象の共有を支援し,デザイン課題の抽出効率を向上させるシステム(Digital Tag Pad)の開発を目的とする.オフィス居室内における複写機の使用状況の動画像の観察実験を通じて,開発したシステムの有効性検証を行った.評価実験の結果から,Digital Tag Padが認知的負荷の高い観察事象の記録,事実に基づいた共有を行う回数の向上,および他者の観察記録への理解度向上について有効性を示した.