抄録
ニカワは動物の皮などに含まれるコラーゲンを原料とした天然接着剤である。現代生活で使われることは少なくなったが,未だ合成接着剤で代替できない性質も多い。本研究は,ニカワの特性を利用した製品を提案することを通してニカワの活用可能性を検討することを目的とした。まず,ニカワの接着力に影響を与える「ニカワの種類」「ニカワ溶液の濃度」を変える,澱粉糊と混合するなど,ニカワの接着性を変化させる実験を行った。ついで,ニカワの特性である「水との親和性」「高い浸透性」が接着性に及ぼす影響を検討するために,複数の繊維素材(紙および布素材)を対象に,浸透性,接着後の剛性,柔軟性,質感や立体造形のしやすさなどのついて検討を行なった。最終的に,接着剤としては欠点ともなりうる「水による再融解性」に着目し,その特性を利用した「造花」を提案した。具体的には「造花」のかたちを保っているニカワが水を与えることで色とともに流れ落ちる天に着目することで,「水によるニカワの変化」を時間軸になぞらえ,吸水と蒸発をくり返しながら時間をかけて咲き,散っていく「造花」を制作した。