抄録
これまで前提とされてきた、社会の規範や伝統といった基盤が大きく揺らぎ、リスク社会が進展する現代において、精神環境の荒廃、地球環境問題といった、現代社会が抱える問題群は高度に複雑である。近代以降行われてきた、社会に問題を発見し、物やシステム開発を通じてそれらを解決しようとするデザイン方法論は限界を迎えている。私たちは、原因と結果に基づいた近代的デザイン方法を乗り越えるための新たなデザイン方法を「物語を可視化し共有するデザイン」と名付け、その可能性を追求してきた。今研究では関連する多様な分野(人類学・神話学、社会運動論、メディア論、死生学、都市論・建築論、哲学・民藝)を専門とする研究者らへのインタヴューリサーチを行い、そこで重要となる理論的要素を抽出した。そこで注視したのは①アクター・ネットワーク理論:人間中心主義からの脱却、②アクティビズム:意味を転用し、異なる価値から現状を批判する活動、③緩和ケア:どうしようもないことに折り合いをつける方法、等である。それらの検討から、さまざまな「もの」と人との関係性の再検討が、現代必要とされるデザイン方法創出のために重要であることが明らかとなった。